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異能者団体③

 

「なんの勝負をすればいいんですか?まさか、じゃんけんとかじゃないですよね?」


「まぁ、そんなに焦らないでよ。この服装は動きづらいから着替えてくるよ。その間に()()()からなんか好きな武器取ってきなよ」


 だが、限はその場から動こうとはしなかった。


「俺は人を傷つけるのは嫌だ……だから武器は使わねぇよ」


「じゃあ、君に一つ質問させてもらうけどさ……アリアちゃんを狙ってくる敵が人だった場合はどうするの?それでも君は傷つけないのかい?」


「あぁ……俺は傷つけるのも傷つけられるのも嫌いだ」


「へぇー、そんな甘い考えで私を倒せるといいね。私は君を殺す気で戦うからね?」


 今までの優しそうな態度から一転して、冷たく命が凍えてしまいそうな笑みを浮かべていた。


「ダメです!限さんを殺そうとするのなら私が……相手になります」


 アリアは会長と限の間に割って入り、限を庇うように背を向けた。

 限より遥かに小さな体で必死に守ろうとしていた。


「あ、アリアちゃん……私達はあっちでお茶でも飲みましょう?ここにいたら危ないよ?」


「嫌です!私は限さんにこれ以上傷ついて欲しくないのです!なので、あなたが限さんに危害を加えようものなら私が守ります」


 雅がアリアを説得して、この場から遠ざけようとするがアリアの意思は全く変わらなかった。


「あ~……これは説得は無理だね~。女の子がこうなったら梃でも動かないからね~」


 こうなってしまっては何をしようが動かないとまるで経験したことがあるのか海はもう既に諦めていた。


「はぁ……あのなアリア、俺はお前を守りたいんだ。なのにお前が自ら危険なことに首突っ込んだら意味ねぇだろ?」


「私は本当ならば限さんに任せずに自分でなんとかしたいんです!なので……危険なことをしないと私と約束してください!」


「分かったから雅達と遊んで来い!さっきこの人は俺と将棋で勝負するって言ってたから安心してくれ」


「え、そんなこと一言も……!いきなり何をするんだ雅!喋ってる途中だっただろ!」


「会長は余計なことを言わないでください……これ以上事態をややこしくしないでください」


 余計なことは言わせない!とばかりに雅が慌てて会長の口を塞ぎにかかっていた。


「さぁ、雅ちゃん!僕たちと観光に行こうよ!美味しいお茶屋さん案内するよ」


「え、で、でも……」


「いいから行こうよアリアちゃん!たまには女の子同士で遊ぼうよ」


 限が不安なのか立ち止まって見ているアリアの手を雅は少し強引に引っぱって、この場から離そうとしていた。


「ほら、雅がアリアに構ってもらえなくてかわいそうだから行ってあげてやれ。行ってやらないと泣き出すかもしれないぜ?」


「わ、私はそんなことで泣かないし!おっさん少し調子に乗り過ぎだ!」


「じゃあ、雅さん……案内してもらっていいです?限さんは私がいなくても大丈夫そうですし!」


 邪魔者扱いされて怒っているのか語気を強めて、舌をベーと小さく限の方へ出していた。


「え、いいの!?どこがいいかな~!アリアちゃんはどこか行きたいところある~?」


「え、ちょっと!僕を自然と置いて行かないでよ雅ちゃん!」


 雅とアリアが手を繋いでルンルンとスキップをしながら出て行こうとする背中を慌てて海が追いかけて行った。

 だが、二人は全く気づいていないのかそのままどこかに行ってしまった……


「なんか、色々大変そうだね()()……」


「まぁ、大変だけど助けてもらってるのは事実だしな……もう少し俺に甘えてくれればいいんだけどな」


「とりあえず……私は着替えてくるよ。この格好じゃ動けないしね」


「あぁ、さっさと着替えてくれ。有給休暇は3日しか取れてないから早めで頼むぜ」


「じゃあ、着替えてくるけど……覗かないでね?」


「へ?あんた何を言ってるんだ?」


「あぁ~!君も私のこと男だと思ってたでしょ!これでも一応女ですからね?」


「マジかよ……まさにピエロだな」


「上手いこと言った風にしてるけど別に上手くないからね?」


「傷ついた……」




 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




「う、う……俺は何してたんだっけ……」


「やっと起きたか……このまま目を覚まさなかったらどうしようかと思っていたところだよ」


「あ、雅たちの会長さん……うん?本当に会長さんか?」


 限は聞き覚えのある声がしたので振り向いたが、昼間に見た会長とは全く似てない姿にすぐに疑問形になった。


「失礼なことを言うね君は。私は正真正銘の会長だよ」


 着替えたのかピエロの付け鼻や白い道化師のメイクをしたなんちゃって会長はそこにはいなかった。


「ほ、本当に女性だったんですね……」


「君はまだ疑うのかい……まぁ、いいよ」


「そう言えば……俺はなんでこんな何にもない和室で寝てるんだ?」


 限の今更感のする疑問に会長は少し苦笑いをしながら答えた。


「まぁ、簡単に言うと君は私と勝負をして負けたと言うことだよ」


「はぁー……やっぱり負けたのか……」


 ため息をつきながら会長に聞くと……


「君は予想以上に強かった……だが、君の強さではアリアちゃんを守ることは出来ない。私と互角くらいの力を持ってもらわないとな」


「じゃあ……アリアはそちらで預かるんですね……」


「あぁ、と言いたいところだが……私は彼女の意思を尊重したいと思っている。だから、彼女が君に付いて行きたいと言えばそれを止めることはしないよ」


「はい?」


「寝起きだから聞き取れなかったのかい?」


「聞き取れないと言うよりはあなたの言ってることが理解できなかった」


「分かりやすく言うと……君はアリアちゃんといつも通りの生活を送ってくれて構わないと言うことだ」


「いやいや待てよ!勝負の意味は何だったんだよ!俺完全に損したじゃんか!」


「まぁ、旅費の半分くらいは私が出すから許してくれ……」


「そう言うことじゃねぇよ!しかも旅費半分とかケチだな!」


「我々日本異能協会は元々裏で活動することが前提だからそこまで予算が国から下りないのだよ……こればっかりは勘弁してくれ」


「なんか妙に現実的だな!?」


「金が無ければ異能者を管理することはできない……何事もお金なんだよ」


「金の件はもういい……何で会長さんはわざわざ俺と勝負なんてしたんだ?元々本人の意思を尊重するなら戦わなくていいはずだろ?」


「あ~!それはね……君が信頼に足る人物かどうか確かめてたんだよ」


「殴り合って分かり合うとかいつの時代の熱血漫画だよ……」


「殴り合ってないよ?私が君を一方的にボコボコにしたんだよ?」


「酷ぇ!俺の記憶が無くなるまでボコボコにしたのかあんた!」


「まぁ、嘘だけどね。私が君の攻撃を避けてたら君がいつの間にか気絶しちゃったんだよね」


「マジですか……やっぱり俺はダメですね」


「いや、君には私達みたいな力は無いけど別の強さがあるから大丈夫だよ」


「別の力?何ですかそれ?」


「それは……自分で見つけなよ。自分で見つけることが出来れば君は強くなれるよ……」


「そうですか……」


「さぁ、早くアリアちゃんに顔見せてやりな……私からの試練は合格だ」


「ありがとうございました会長さん……この恩は一生忘れません」


「あ、そうだ……」


 よろよろと立ち上がって部屋から出ようとする限を会長は呼び止めた。


「後からアリアちゃんと君に話があるからこの部屋に来てくれ」


「?よく分からないですけど分かりました」





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