面倒ごとは突然に!⑤
久しぶりの更新です
「限……私ねあなたと一緒にいれてよかった…」
肩で息をしながら辛そうに限の腕の中で幸せそうに一人の少女が微笑んでいた。
「待てよ!今救急車呼んだからもうちょっと頑張ってくれよ!」
対する限は目に大粒の涙を浮かばせて今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた。
「ふふ……限ってば男の子なのに泣いてる。変なの…」
「悲しいよ!悲しいから泣くんだよ!お前にもっと生きて欲しいんだよ!だから頑張ってくれよ……」
「私はもう長い時間生きたの……もう、私はこれ以上の幸せなんて求めて無いの」
「お前がいなくなったら俺は誰を頼ればいいんだ……」
「限も分かってるでしょ?もう限は私なんていなくても生きていけるの…」
「嫌だ!そんなの絶対に嫌だ!俺は……俺は……」
だが、その思いは少女に届くことは無かった……
限の言葉を聞き終える前に少女の意識は途絶えてしまったのだから……
グタっと力なく眠る少女を抱きながら限は救急車が来るまで泣き続けていた。
「寝覚めに嫌な夢を見ちまったな……あんな昔のこと思いだすなんてな」
もちろん、限の腕の中には少女はいないが、目からは大粒の涙がボロボロと零れ落ちたような跡が残っていた。
これは限の言う通り夢だ。
だが、限の布団の中でモソモソと動く物があった。何も布団に入れた覚えがない限は警戒しつつ布団をめくり確認すると……
「スー……スー」
いつもは隣の部屋でペンタと寝ているはずのアリアが小さな寝息をたてながら穏やかな顔つきで寝ていたのだ。
寝顔はまだ幼さを残しているようで、大きくぱっちりとした目は細め、唇をむにゃむにゃと動かしながら幸せそうにしていた。
「なんでアリアが俺の部屋で寝ているんだ?昨日の記憶が全く無い」
「うみゅ……もう朝ですか~?」
「朝だけどさ……何でアリアが俺の部屋で寝てるの?」
「限さん昨日のこと覚えていないのですか?」
うーん……と限は頭を左右に揺すっていたが、記憶に全く無い様子だった。
限の態度に少し怒ったのかアリアは頬を膨らませながら少し強めに話し始めた。
「限さんが私を部屋に連れてきたのではないですか!私をいきなり抱きかかえて振り回した挙句に、そのまま寝てしまったじゃないですか!」
「そんなこと俺してたのか!?すまんアリア……謝って許されることじゃないけど謝らせてくれ」
「大丈夫ですよ限さん!私は限さんと寝れたので嬉しかったので//」
嬉しそうに頬を赤らめながらアリアが微笑んでいたが、限はやってしまった……と顔を青くさせながら後悔していた。
「ヤバイ……これ下手しなくても捕まるレベルだ。これからどうしよう……」
限が今後のことをどうすればいいのだろうかと考えていると、突然部屋のドアがドン!と勢いよく開かれた。
開かれたドアから見えたのは、金髪でアリアと似た顔だちをしているがアリアと違い意志の強そうな瞳をしている女性がフライパンを持ちながらめんどくさそうに眺めていた。
「ようやく起きたか色ボケ夫婦よ。今日は我が飯を作ったから早く来い」
「おい待てペンタ、誰が色ボケ夫婦だ!この話の流れでどうしてそうなるんだよ?」
「同じ布団で眠り、朝からイチャイチャしているお前らを色ボケ夫婦と呼ばなくてなんと呼ぶ」
改めて限は自分達がしていたことを思い出し、反論の余地が無いと早々に諦めて……
「外では絶対に呼ぶなよ?誤解されたら困る」
「分かっておる。外では呼ばない、だから今は呼んでもいいのであろう?」
「家でも呼ぶな!」
限の悲痛な叫びはペンタに届くことは無かった……
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騒がしい家を出て職場に向かった限は真っ先に社長室に向かった。
直接交渉すべく社長室の扉を開けると、株式会社橋口清掃の二代目女社長の橋口 知美が外を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
そんな朝の優雅なコーヒータイムなどお構いなしに限はズンズンと足を踏み込んで……
「社長。明日から二日続けて休みが欲しいです」
「明日から二日休みが欲しいだって?」
「はい社長。明日急に用事が出来てしまったので二日ほど休みを貰いたいのです」
「そうか……どんな用事とは聞かん。だが、いい加減にアリアちゃんに会わせてくれないか?もう、かなり長い間会ってないのだが」
「いや~、アリアはまだ日本に来てから数か月しか経ってないので日本に慣れるまでは連れて来ない方がいいかなと思ってまして」
実際は、橋口社長とアリアを会わせると橋口社長のキャラが崩壊してしまい手が付けられなくなり、面倒なことになってしまうから会わせていない。
アリアは橋口社長に色々とされたので今でも微妙に距離を取っているのだが、当然限はそのこと言うつもりは全く無い。世の中には知らない方がいいこともあるのだから……
「そうか。それならば仕方ないな……いいだろう休みを許可してやる」
「ありがとうございます社長!この御恩決して忘れません!」
「ただし!帰って来たらいつもの数倍は働いてもらうからな?そこだけは覚悟しておけ」
「それを承知でここに来ましたので大丈夫です」
「いい心構えだ……それでこそ私の社員だ!用事があるなら行ってこい限。今日はもう帰っていいぞ!」
「今出社してきたのにそれ言いますか?」
「いいから帰れ。お前の同僚たちにはいつもより多めに仕事してもらえばいいだろう」
「その言葉を聞かされると余計に帰りずらい!」
普段から仕事の量が多いのにこれ以上増やすとなると大変なことになってしまうと、限は身をもって実感したことがあるので余計に帰りずらくなってしまっていた。
そんな限の心の中など分かっていると言わんばかりに橋口社長が……
「あいつらには私から昼飯の差し入れでもすれば大丈夫だろう」
「単純ですね俺ら」
「あぁ……恐ろしく単純だ。缶コーヒーを奢っただけで会社の為に頑張ると言われたからな」
「それはあまりにも単純ですね」
「限、お前のことなんだが?」
「えぇ!?俺いつそんなこと言いましたっけ!?」
「ここに入社した初日に言ってたな」
「マジですか……俺って単純なんですね」
「よく言えば素直、悪く言えば単純だからな。ブラック企業に入ってたらお前は休日出勤に時間外労働しまくりの社畜になってたな」
「うへぇー、ここの会社に就職出来てよかったと心から思います」
「いいからさっさと帰れ限。これ以上ここにいられても仕事の邪魔だ」
「分かりました社長!」
これ以上ここにいても何もすることは無いと思った限は帰るべく社長室を後にしたのであった。
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「ただいま~。今日の仕事終わり~」
「あれ?限さんさっき出て行きませんでしたか?」
ペンタ特製の卵と納豆を混ぜん込んで焼いたよく分からない創作料理を飲み物で強引に押し込んでから会社に向かったはずの限が三十分も経たない内に帰って来ていた。
こんなに早く帰ってくるとは思っていなかったアリアとペンタは何かあったのではないかと不安に駆られていたが……
「社長が帰れって言ってきたから帰って来た」
「相変わらず緩い組織だな。お前が勤めている場所はなんでそんなに緩いのだ?」
二人が想像していたようなことでは無くホッとため息をついていた。
「まぁ、俺は普段は真面目にしてるからな。大事な用事があると言えばほとんど休みくれるな」
「限さんはいつもお仕事頑張ってますもんね!」
「おう!俺は仕事が一番大事だったからな。今はお前らと過ごす何気ない日常が大事になったけどな」
「でも……こんなに早く帰ってきて何かすることあるのか?キョウトとやらに行くのは今日の夕方であろう?」
「それがすることあんまり無いんだよな……準備は昨日一通り終わらせたしな~。寝るか眠いし」
「それがいいであろう。ちょろちょろと部屋の中を歩き回られても目障りだしな」
「なんかお前に言われるとすごいムカつくな。お前もどうせいつもゴロゴロしてるだけだろ
?」
「な、何を根拠のないことを!我はお前と違いいつ敵が来てもいいように力を温存しているだけである!」
嘘をつくのが苦手なのかペンタは若干上ずった声で必死に誤魔化していたが、限はそんな見え透いた嘘は見抜いていたようで……
「はいはい、そう言うことにしておいてやるから俺が寝るのを邪魔するなよ?」
「ほ、本当だからな!我が最大戦力だから仕方なく体力温存しているだけだからな!?」
特に何の反応も見せずに自室のドアを荒っぽく開け、やる気なくのっそりと布団へと向かい、張り詰めていた糸がプツンと切れるかのよう布団に飛び込み深い眠りに就いた。
どうでしたか?
今全体を改稿しているのですが中々上手く行かず、更新が遅くなってしまいました
改稿は終わり次第報告します
もしかしたら、ストーリーが若干変わってるかもしれないです




