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たまには休息も必要だ②

 

「今日の晩御飯は何にしますか?」


「あー、どうすっかな~…家の冷蔵庫にアジの干物が四匹くらいあったような気がする。それとみそ汁とほうれん草のお浸しでも作ればいいだろ」


「何だそのわけのわからない料理は?我に差し出す料理なのだから旨いものをにしてくれよ?」


「何でお前はそんなに偉そうなんだよ…」


 限はペンタの傲慢な物言いに少々呆れていた。


「王族はなめられたら負けであるからな、我は自分に自信を持っている!」


「日本には王様なんていないから凄さがあんまり分からん。だから、普通の人として接するからな?」


「王族に逆らうとは首チョンパの刑になるぞ!?いいのか?」


 微妙に日本の言葉に影響されてきたペンタを見て限は「スポンジみたいに吸収するな…」と一人心の隅で思っていた。


「あれ…何でペンタは日本語話せるんだ?コソ練なわけ無いよな?」


 限は出会っていた頃から気になっていたが、聞きだせる状況では無かったので今聞いてみることにしたようだ。

 気になるのがだいぶ遅いとは思うのだが…


「我には()()()()()と言う加護があるのだ。我が生きている時は作戦を決めたり、指示を出すときに役に立ったな」


「お前が作戦立てるのか?突撃の後は各自勝手に戦え!って言いそう」


「もちろん、我はほとんど立てていなかったぞ?他の英雄が作戦を立てていたからな!特に大魔導士マリアナの立てた作戦は見事なものだった、敵がわざと引っかかっていると錯覚するほどであったな」


 ここまでの話を聞いて限は思ってしまった。

 ペンタに異言語理解いるのか?と…

 そんな失礼極まりない限の考えを悟ったのか、ペンタは笑顔のまま何もない空間に手を突っ込んで剣を取り出そうとしていた。


「ちょと待て!ここでそれはまずいって!人間話し合いが大事だろ?」


 さすがに慌てたのか本気になって説得しにかかる。

 それを見たペンタは満足したのか取り出しかけていた剣を直した。


「それでよいのだ!我は心が広いからお前のおかずをくれたら許してやろう!」


「王族にしては心が広いな…仕方ない、ペンタにはアジの干物をもう一枚進呈しよう」


「うむ、我び仕える心意気が分かってきたようだな!」


「お褒めに預かり光栄でございますペンタ様」


 ペンタは本気で言っているのだが、限は適当に褒めて首チョンパの刑を逃れようとしていた。

 そんなくだらない冗談を言い合いつつ歩道を歩いていると、ドン!と誰かにぶつかってしまった。


「あ、すいません!」


 慌てて限が謝ると、目の前にセーラ服を着た不機嫌そうに目を細めている少女と、スポーツウェアを着こんだ背の高い優しそうな目をした男がいた。


「誰よあんた?私に喧嘩を売ってるの?」


「いきなり喧嘩売るのは止めてよ雅ちゃん!いつも大変なんだからさ~」


「うるさいわね!私はどこの誰かも分からない奴の後始末をさせられたのよ!ぶつかって来た相手に喧嘩したって罰は当たらないわ!」


 険悪な雰囲気に心配したのかアリアが限の袖を掴み、ペンタが気分を害されたのか例の剣を取り出そうとしていた。

 それに気づいた限が慌てて止めたのは言うまでもないだろう…


「すいませんお兄さん方、僕は吉見(よしみ) (かい)と言います。雅ちゃんはちょっと怒りぽくってすぐに人に八つ当たりしてしまうんですよ~…」


「いえ、こちらこそすいませんでした。前をよく見ていなかったもので…」


 お互いがペコペコと営業周りのサラリーマンのように謝っていた。


「けっ!男のくせに根性ない奴だな」


「どうして雅様はそんなに怒っていらっしゃるのですか?」


 アリアが雅に話しかけると、雅が顔を赤くして反論しようとしたが途中で黙ってしまった。


「え…もしかしてモデルさんか何かやってるの?」


 聞いたことのない単語を聞いたアリアは、ペコペコタイムが終わって世間話をしている限の下へ近づき小さな声で囁くように訊ねた。


「モデルとは何ですか限さん?」


「モデルか?洋服を着て今年の流行りの服を教えたり、企業の洋服を着て宣伝する人だな」


「そうですか。ありがとうございます限さん、私はモデルでは無いようですね」


「まぁ、アリアは可愛いけどモデルでは無いな」


「か、可愛いだなんて!褒めても背中を流してあげることしかしませんからね!」


「止めてくれ、俺が捕まる」


 褒められて気をよくしたアリアが誰かに聞かれたら通報されそうなことを言ってきたので、限が丁寧に冷静にお断りをしていた。

 周りの人が仲睦まじい様子を黙って見ていた、

 そして誰もが思ったはずだ。

 羨ましいとただ一言だけ…


「いいな~…雅ちゃんもアリアちゃんくらい可愛げがあればいいのにな~」


「私はそんなに可愛げが無いの?」


「無いか有るかと言われたら無いね~」


 今度は海の言葉に気を悪くした雅が、顔に白く細い指をめり込ませてミシミシと音を鳴らせていた…

 これは羨ましくないと誰もが思っていたが口に出したら二次被害に遭いそうなので誰も言い出せないでいた。


「そうだ、最後に言っておくわ」


 雅の愛情表現により、泡を吹いて倒れている海を引きずりながら話しかけてきた。


「信じるか信じないかはあなた達次第だけど…ここ長崎県にバケモノが出たって話があるから気を付けてね」


 一同はただならぬ雰囲気に緊張していたが言われた言葉に心当たりがあるので、微妙な表情を浮かべていた。

 雅は限達の反応に特に気にした様子を見せずにそのままどこかに歩いて行ってしまった。

 その背中が遠く離れた頃限はポツリと呟いた…


「なぁ、そのバケモノは俺達が倒したオーガの事じゃないのか?」


「「ですね~」」


 二人が見事に声を揃えて答えた…







 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ただいま~…疲れた~」


「限ちゃんお帰り~、今日は肉じゃが持って来たわよ!」


「何で母さんがいるんだよ…」


 ただでさえ訳の分からない連中に絡まれて疲れた限にさらにストレスが襲い掛かる。

 限は母親は嫌いでは無いのだが、少々面倒に思っているのだ。

 具体的には話をほぼ聞かないで勝手に進めてしまう悪い癖が原因なのだが、限の母親は気づいてはいない様子だ…


「あれ…あなたはあの時の女性ですか?」


「あなたは確か限の彼女さんじゃない?日本語喋れたのね~!」


 二人が話している間にアリアも加わり、賑やかになってきたときに…


「何をしておる限よ!早く我にアジノヒモノとやらを食べさせてくれ!」


 それを見た限の母親は鬼のような顔をして…


「限ちゃん浮気はダメよ?」


「違うんだ母さん…ちょっと俺の話を聞いてくれ」


「何が違うのかしら?私は浮気は絶対にダメだと教えて育てたのだけど?」


「そうです義母様(おかあさま)!私は限さんにまだプロポーズされていないので付き合っている訳では無いのです!」


「アリア、これ以上話をややこしくしないでくれ…頼むよ」


「我はその男に恋心を抱いてはおらぬから安心してくだされご婦人よ…おっ!これは旨そうな食べ物だな」


 さらに話をややこしくしたペンタは、場の空気などお構いなしに冷蔵庫からプリンを取り出して食べようとしていた。

 当然ながら限はペンタからプリンを取り上げて冷蔵庫に直した。


「何をするか!我のおかげで限は生きておるのだぞ?食べ物の一個くらいで怒るな」


「それに関しては感謝してるがこの空気どうしてくれんだよ!俺の母親が処理能力オーバーして変なことを呟き始めただろうが!」


「限ちゃんはいつの間に女の子を弄ぶ悪い男になったのかしら?やっぱり一人暮らしはダメだったのね…」と暗い表情を浮かべながらブツブツと薄気味悪く呟いていたのだ…

 さすがに悪いことをしたと思ったのかペンタは蚊の鳴くような小さな声で「すまなかった…」と言っていた。

 もう謝ってもすでに遅いのだが、限は謝ってくれただけでも良しとしたのか冷蔵庫からプリンを出して手渡していた。

 プリンを手渡されたペンタは先程の様子とは打って変わって嬉しそうにスキップしながらスプーンを取りに行った。

 実に単純な性格をしていると限は心の中で思いかけたが、先程みたいに機嫌を損ねてしまう恐れがあったので考えるのを止めた。


「限さんの義母様大丈夫ですか!?どうなされたのですか!?」


「おい母さん、俺はモテたこと無いから安心してくれ。二股かける前に彼女すらいないからよ」


 到底安心できる内容では無いが、限の母親ははその言葉に我に返ったのか虚ろな目に光が戻っていた。


「そうね…限ちゃんがモテるなんてありえないわね。限ちゃんはいい子だけど恋愛対象には見られていないといつも限ちゃんの高校の同級生から聞かされていたわ…」


「俺同級生からそんな酷い評価を受けていたのか、泣いていいアリア?」


「泣いていいですよ限さん!今日は満足するまで慰めてあげます!」


 アリアの聖人のように優しい言葉に限の目からは壊れた水道の蛇口のように涙が溢れて止まらなかったのだ。

 「涙で前が見えないって言うけど、本当になるんだな」と荒っぽく目を服の袖で擦りながら言っていた。

これではどちらが大人なのか分からなくなってしまいそうだった…


「あら~!アリアちゃんは優しいのね~!若い二人の邪魔したくないから邪魔者は帰ろうかしら?」


「帰ってくれると助かる。これ以上この家にいてもらうと俺の精神が持たない」


「何てこと言うのですか限さん!限さんの義母様にはお礼をしたいし、聞きたいこともたくさんあるのですから!」


「じゃあアリアちゃんのお言葉に甘えてもう少し居ようかしら!」


「絶対にこの流れを狙っていただろ母さん…」


「何のことかしら~?」




更新だいぶ遅れました

楽しみにしてくださっていた方には本当に申し訳ないことをしました

今回もいつも通り平常運転で行きます!

もしよかったら誤字報告などしてくれると助かります!

最後に、ここまで読んでくださった方ありがとうございます!

皆さんも色々あると思いますが頑張っていきましょう!

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