表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
67/93

第六十一章 戦慄のクラスメート

覚悟はしていても、その時が来れば誰でも躊躇してしまう。

あかねとて、自分が生き残れば生き残るほど、いつかはレリウーリアとの戦いを迎える事になるだろうと思ってはいた。

レリウーリアのメンバーは嫌いじゃない。むしろ好感を抱いている。だから困るのだ。

もし戦わなければならないのなら、千明や結衣との戦いは避けたかった。

それなのに、避けたかった戦いだけが訪れる。せめて戦いの足音が聞こえたなら、上手く避けれたかもしれないのに。


「千明お姉様はあかねちゃんの事気に入ってたのに!なんで殺したのよ!」


ロストソウル・二本のオリハルコンを見境無く振り回し、あかねを狙う。

右手を負傷している状態では逃げるだけが精一杯。技を放ちたくても、度重なる戦いの疲労で体力も集中力もない。


「待って新井さん!話を聞いて!」


逆手に握られたオリハルコンが鎌鼬かまいたちに見える。また、柔軟な身体能力を生かして体操選手のようなしなやかさで蹴りまで繰り出して来る。


「話なんて聞きたくないっ!!」


怒りが爆発している結衣にあかねの話を聞き入れる余裕はなく、ひたすらに千明の仇を討つ事だけを求めている。


「お願い!新井さん!」


「聞きたくないって言ってるじゃない!」


フッと姿を消したかと思えば、目の前に現れあかねを蹴り入れる。


「きゃあっ!」


遠慮などない鋭い蹴りを喰らう。今の結衣からは恐怖しか感じられない。


「私は裏切り者は絶対許さないっ!」


裏切り者も何も仲間ですらないのだが、裏を返せばそれだけあかねに心を寄せていたようにも思える。

もっと言ってしまえば、結衣の言う裏切りとは千明を殺した事そのものではなく、あかねなら千明との戦いを避けてくれたのではないかとひそかに願っていた気持ちにある。


「好きで千明さんを倒したわけじゃないわ!でも殺らなければ私が殺られてた………悪いとは思ってるけど、しょうがなかったの!」


冷静になれない結衣に苛立ち、つい強く言ってしまう。


「なんて言い草なの。ムカつくわ。」


歯を食いしばり抑え切れない感情をあらわにする。美少女の顔は悪魔の顔へと変わった。


「私ね、悪魔になる前に両親を殺したの。」


「え…………?」


突然結衣が語り始める。出だしから耳を疑う言葉を添えて。


「前の学校で友達とデパートに行って、その時私の鞄に覚えのない化粧品が入っててさ。で、万引き犯にされたの。後でわかったんだけど、一緒に行った友達がモテる私を妬んでやった事だったのよ。両親も、最後まで私を信じてくれなくて遠くの親戚に預けようとまでしたわ。」


「それで両親を……?」


「娘の事より地位や名誉を重んじる人達だったから。その時私をハメた奴らも後から殺ったけどね。」


「そんな…………」


「私を裏切る奴は死で償ってもらう。あかねちゃん、貴女も同じ。私から大切な人を奪ったんだから、死んでも文句は言わせない。」


「勝手ね。勝手すぎる。新井さんだって人の命を奪ったんじゃない!自分だけが被害者なんて思わないでよ!」


「なんとでも言えば。」


「私は新井さんと戦いたくないけど、黙って命を差し出すつもりもない。だから………」


ミクソリデアンソードを構える。


「上等じゃない。エアナイトとは言え所詮は人間。魔人ナヘマーの敵じゃないわ。」


結衣に勝てる確率は極めて低い。無声両唇摩擦音を使うにもかろうじて一撃のみ。利き手も使えない。やれるとこまでやるだけ。むざむざ殺られるよりはマシだ。


「死んで千明お姉様に詫びるのね!ハウリング・ハーモニクス!」


七色のレーザーがあかねを刻む。


「くっ………負けられない………またみんなで……笑いたいもん!」


想うのは幼なじみの羽竜と蕾斗、そしてこの戦いに導いたレジェンダことジョルジュ。またあの楽しかった日々を取り戻す為、その為に戦ってるのだから。


「笑いたいなら変わりに笑ってあげるわ。貴女が死んだ後にね!」


あかねはクラスメートの驚異を受けながらも必死に粘り、空気の流れが変わるを待つ。次の結衣の攻撃がチャンスになる。カウンターで無声両唇摩擦音を浴びせるチャンスに。


(…………集中して。必ず突破口は出来る。新井さんが怒りに身を任せてるうちは、私にも勝率はあるはず。)


疲労を庇いつつエアナイトの能力を使う。

集中………集中………たった一度訪れるチャンスを味方にする為に。

痺れを切らしたのは結衣だ。ハウリング・ハーモニクスを身に受けながら耐え忍ぶあかねに業を煮やした。


「図太い神経ね、かわいい顔して。こんなにムカついたのも久々よ!」


空気の流れが変わった。


(……来る!)


あかねに見えてるのは結衣が突進して来る姿。


「千明お姉様の仇!!」


そしてあかねの前でオリハルコンを二回振るう。


「はあっ!」


その後は、逆立ちをして両足で回し蹴り。


「やあっ!」


チャンスは次。上空に跳ね上がった結衣が再びオリハルコンを携え滑空して来た時だ。


「死ねっ!吉澤あかねっ!!」


何かを得る為には何かを失う。

それが正しいかどうかはあかねに答えは出せない。

きっと、逃げるのではなく、立ち向かう事で見えてくる答えなのだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ