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第五十九章 問われた真価

羽竜はトランスミグレーションを使いこなせていた。軽すぎて扱い難かったのだが、今は息がぴったりと合っている。

ブレない太刀筋が彼の成長を伺わせる。鋭さが増し、またトランスミグレーションの『動き』に身体もついていけている。


「ククク。会う度に強くなるとは、さすがと言うべきか………それともたまたまか。」


サマエルは羽竜を見込んでいる。理由はわからないが天界での戦い後から態度が変わって来てるのは確か。

一度は死を覚悟したサマエルが、幸か不幸か死ぬ事を許されなかった。それ以来羽竜に付き纏う。


「たまたまじゃねーよ。実力だ。」


お互い、出方を伺うような蛇足はしない。本能の赴くまま……五感が刺激されるままに剣と剣をぶつけ合う。


「だろうな。にわか実力で俺と渡り合ってるとは思いたくないからな。」


「ケッ、言ってろ。それより………」


ここに残ってサマエルの相手をしたのにはもうひとつ理由がある。


「蕾斗に会ったんだろ?あいつ、元気だったか?」


「こんな時に友達の心配か?」


「まあな。あんなバカ野郎でも親友だからな。」


「なるほど。だが蕾斗はお前を親友とは思ってないかもしれんぞ?」


「だとしても、俺達がここに来た最大の理由は蕾斗を止める事。状況知っとかないと怒りに事を任せそうだからよ。」


「蕾斗を止める…………無理だな。」


「なんでそう言い切れるんだ?」


「あいつはもう人の域を出た。そして人類の祖、アダムになった。その力は蕾斗に多大な自信を与え、現在いま蕾斗は蕾斗の信念の元に行動している。お前達が説得して言うことを聞くとは思えんな。」


「インフィニティ・ドライブか…………ダイダロスから聞いたんだな?ちくしょう………そんなものが存在したばっかりに………」


「インフィニティ・ドライブのせいではあるまい。蕾斗はもとよりああいう思想の持ち主なんだ。今まではあがいても何も変わらないと心の奥底に閉じ込めていた。だがインフィニティ・ドライブを知り、それが自分の内に秘めたる力だと知った。」


「やっぱりインフィニティ・ドライブが原因なんじゃねーか。」


「違うな。インフィニティ・ドライブは生まれた時から蕾斗に宿っていたのだろう?ならばそれは必然だ。運命ってやつだ。」


「お前も運命なんて信じてんのか?」


「ククク。さあな。信じても信じてなくても動き出した歯車は破壊する事でしか止められない。」


「…………サマエル、お前俺に蕾斗を倒せって言いたいのか?」


「蕾斗は手ごわい。ダイダロスでさえ刺激を与えないように慎重に慎重を重ねて扱う程だ。それだけインフィニティ・ドライブが凄いって事だろう。完全な形でのインフィニティ・ドライブが発動する前に誰かがやらねば、蕾斗を止める事は不可能だ。」


「なら今のうちに蕾斗を倒さないのはなんでだ?ダイダロスじゃなくてもお前が倒す事も出来るはず。」


「ダイダロスが蕾斗を倒さないのは、インフィニティ・ドライブが完全な形になるぎりぎりのところで奪おうとしているからだ。どんな方法かは知らんが、確実に奪う方法があるようだ。それに、俺はお前にしか興味がないと言っただろう?他の奴らが何をしようと知った事か。」


「まあいいさ。俺が止めればいい話だしな。」


トランスミグレーションを強く握ると、トランスミグレーションの赤い刃が更に赤く輝く。


「ククク。その前に一つ聞こう。」


「なんだよ。」


「お前は自分の運命の法則を見つけたのか?」


「運命の法則?ああ、ヴァルゼ・アークもそんな事言ってたけど、俺には関係ねーよ。俺の運命は俺が決める!」


「ククク。そうだ。それでいい。」


意味ありげに口元を緩めた。

サマエルはカオスブレードにオーラを集め、低く構えを取る。


「だがな羽竜、俺を倒さない限りは先には進めんぞ。」


「今やってやるから焦んなよ。」


対して羽竜もトランスミグレーションを。


「聖なる力、受けてみよ!ダイナミックスラ−−−−−−−−−−−ッシュ!!!」


サマエルが先に仕掛けた。


「くたばれサマエル!!ディープ・エンド・エクスプロージョン!!」


羽竜が新たな技の名を口にすると、トランスミグレーションがより一層輝きを増し、羽竜を包み込んだ。

サマエルの放った技も、そのオーラの強さから触れてもない壁や柱を傷つけながら飛んで行く。

マグマが球状になったような羽竜のディープ・エンド・エクスプロージョンもまた、その発せられる熱で辺りが揺らめき破壊されて行く。

二人の技が激しく衝突する。

凄まじい放射熱と大気を揺るがす衝撃波が生じて、強大な爆発が起こる。

 打ち負かしたのは羽竜の技だった。


「よっしゃあ!」


羽竜は思わずガッツポーズを取る。

当然、時間をかけて編み出した技ではない。思い描く結果が出なくてもそれは仕方のない事なのだが、今回ばかりはそうではない。勝ちを手に入れた瞬間だと疑わなかった。

ところが、砂埃が収まりつつある中やはり見えるのはサマエルの姿。


「ククク。全くもってお前には驚かされっぱなしだよ、羽竜。」


見れば重傷ではないようで、軽く額から血を流している。


「優秀な師でもいればもっと強くなれるだろうに。」


爆発に巻き込んだと確信したのに、


「チッ…………不死身かよ。」


微笑まれては舌打ちも出るというものだ。


「結構な威力ではあるが、まだ未完と言ったところか。これでは蕾斗はおろか、ダイダロスやヴァルゼ・アークでさえ倒せんな。」


「うるせー!いちいちお前に心配されなくても自分でなんとかしてやるよ!法則だかなんだか知らねーけど、んなもんに気付かなくたって運命は変えられ…………ん?法則………?」


自分で言っててある事に気付く。

矛盾。そうヴァルゼ・アークやダイダロスが言ってた運命の法則。それは個人が必ず持っていると言う。どうやってそれに気付くのかはわからないが、ヴァルゼ・アークやダイダロスの法則の明らかな矛盾に気付いてしまった。


「サマエル…………お前もしかして……」


サマエルがしつこく羽竜に付き纏う理由は、その矛盾に気付かせる為だったのかもしれない。


「フッ……どう捉えようと勝手だが、気付いた以上俺を倒す事は出来ん。今度ばかりは素通りさせるつもりはないぞ。さあ、どうする?」


「別に命まで奪わなくても足腰立たない程度に留めれば問題ないだろ。」


「たいした自信だ。それでこそ時代を終わらせるに相応しい者。ますます気に入った。」


全身にオーラを纏う。

サマエルは羽竜を本気で倒す気でいる。自分を乗り越えなければ蕾斗、ダイダロス、ヴァルゼ・アークの三人は倒せない。

 羽竜に、それをわからせる為に。


「向こうは本気、こっちは本気すれすれまでの限界付き。失敗は許されない………か。」


トランスミグレーションは輝きを保ったまま、羽竜を待っている。一か八かなんかじゃなく、必ず思いのままにいくと言いたげに。


「真の実力を見せてみろ!行くぞ!羽竜!!ダイナミックスラ−−−−−−ッシュッ!!」


「どんな逆境でも俺は諦めない!!運命なんてクソくらえだ!!ディープ・エンド・エクスプロージョン!!」


 真価………それは極限の状況で問われるもの。


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