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第五十七章 そこが戦場である限り

「遊んで来たのかい、ダイダロス?」


美咲を柱に魔力で縛り付け、テラスより燃え盛る街を眺めている人物に、ダイダロスも戸惑うしか表現方法がなかった。


「…………蕾斗………ですか?」


「そうだよ。僕は正真正銘、アダムになったんだ。」


見た目は蕾斗ではないが、オーラは蕾斗のオーラだ。プラス今まで感じた事もないオーラも感じる。

脅威。その二文字が相応しい。

だが肝心のインフィニティ・ドライブを完全に引き出しているかは定かではない。

欲しいのは完全な状態でのインフィニティ・ドライブ。その為に緻密な計算をして来ただけに、予想外の事態に修正が利かなくなっている。


「なるほど。これは益々心強い。」


利かないのなら止めるか進むか。止めてしまえば自分がして来た事が無駄になる。必然………進むしかない。


「早く羽竜君に会いたいよ。もう昔の弱虫じゃないところを見てもらうんだ。」


容姿に似合わぬ言葉遣いに違和感が残るも、刺激しないよう対応を選ぶ。


「サマエルが終焉に勝ってしまえばそれも無くなりますが。」


「サマエルか………彼も実力を隠してるからね。本気の戦いになれば誰も読めないだろうね。」


「アダム、貴方が望むならサマエルを始末する事も出来ます。」


「いや。サマエルが羽竜君を倒してしまうのなら、ヴァルゼ・アークを待つだけさ。僕にとってはどっちでもいい。」


「どっちでもいい……とは?」


「僕は強さを誇示したいわけじゃないし。ただ羽竜君には見返してやりたい気持ちもある。結果がどうあれ、最終的には二人共倒さなきゃならないだけだろ。」


力は脅威にまで変貌した。容姿も雄々しさが溢れてる。しかし、心までは変われなかったようだ。今の蕾斗は自分の力に酔いしれてるだけ。インフィニティ・ドライブが完全な形で現れても、蕾斗から奪える可能性がまだ計算内に存在する。


「ならば今は楽しむといいでしょう。運命に操られた悲しき者達の物語を。」







「くそっ!また分かれ道かよ!」


「どうする、羽竜?」


羽竜とジョルジュは何十回と繰り返された選択にまた差し掛かっていた。


「どうもこうも勘で進むしかないだろ。」


二手に分かれる道はどちらも少し行くと階段を昇るようになっている。


「なら羽竜、お前に任せよう。」


「またかよ。」


ぶつぶつ言いながらも選ぶしかない。もちろんそこを行けば蕾斗の元へ辿り着ける保証はないのだが。


「文句を言うな。」


「へいへい。」


考え込んでも仕方ない。


「じゃ〜………右だ!」


右を選びまた走り出す。

階段を駆け上がると扉が見える。こういう場合大概当たりだ。

無法者のようなやり方で扉を開ける。

正確には『蹴り』開けた、だ。


「………………なんだよ、誰もいねーじゃねーか。」


未だ何の『イベント』にも出会わずにいた羽竜は、そろそろ飽き飽きしていた。


「誰もいないに越した事はない。無傷で蕾斗のところまで行けるのが理想だろう?」


「わーってるよ。」


「わかってるようには見えないがな。」


ジョルジュのお説教はどこか蕾斗に似ていて苦手だ。


「なんでもいいから次行くぞ!もたもたするな!」


せいぜいこのくらいしか言い返せない。


「そんなに急ぐ事もないだろう?」


その時、タイミングを見計らったようにサマエルが現れた。


「サマエル!!なんでお前がここにいるんだ!?」


「ククク。驚く事もあるまい。俺はどこにでも現れるさ、そこに戦場がある限りな。」


羽竜の驚く顔がサマエルを上機嫌にする。


「お前までダイダロスの仲間になったのかよ!?」


「仲間?フン、俺はいつだって孤高でいる。そんなものは興味がない。」


「じゃあなんで………?」


「お前と戦う為だ……羽竜。」


いまいち理解はし難い。羽竜にとってみれば、自分と戦う事にメリットなんて無いと思っているし、強さを求めるのならヴァルゼ・アークの方が打ってつけだと想うのだが。


「奇特なヤローだぜ。」


羽竜の表情が生き生きしてきてるのがわかる。危ない兆候だ。


「羽竜、サマエルに構うな。奴がお前に纏わり付く理由がわからないのなら戦う必要はない。」


確かに、サマエルの目的に関しては明確な意志表示がなされていない。下手に関わるのはよくない。と頭でわかっていても、羽竜はどちらかと言うと本能で動くタイプ。よくないとわかっているからこそ冒険したくなる。


「ジョルジュ、先に行っててくれないか?」


「羽竜!!」


「サマエルとも決着をつけたい。どーせ素通りなんか出来ないんだし、やるしかないだろ。」


「……………悪い癖だぞ、羽竜。」


「すまない。でも………な、頼むよ?」


「私一人で蕾斗を説得させる自信はないからな。」


「ああ。」


一度言い出したら聞かないのは承知の上。良くも悪くもそれが羽竜なのだ。

ジョルジュは羽竜とサマエルを通り過ぎ一人蕾斗のところへ急いだ。


「いいツラになって来たじゃないか。男の顔だ。ククク。」


「余計なお世話だよ。」


トランスミグレーションを羽竜独特の頭の脇で切っ先を相手に向ける構えで構える。


「行くぜ、サマエル。」


「ククク……せっかちな奴だ。まあいいだろう。これがお前と俺の最後の戦いだ。来い、羽竜!!」


サマエルの目的がなんであれ、戦わずにはいられない。なぜか避けては通れない道のような気がしていた。

トランスミグレーションとカオスブレイド。甲高い音を響かせバトルの開始を告げた。


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