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第五十三章 神の頂点

感情など無い方が楽だろう。感情があるが為に人は苦しむ。

人は百年と生きられない。短すぎる人生の中、喜びや幸せを感じる割合は苦しみの半分にも満たない。

それでも、生きたいと願うのは愚かだろうか?愚かであったとしても、願わずにはいられないのだから願えばいい。

いつか誰かが安息をもたらす日まで。


「他の神々がお前を恐れさえしなければ、こんな苦労はせずに済むのだがな。」


「何を言ってる。俺との戦いを望んだのはお前だろう?老人。」


「それにしてはお前さんも余に出会うのを期待していたように見えたが?」


「フフ………椅子に踏ん反り返って事を見守るだけの器ではなかろう?意外と行動力に溢れてると知ってたからな。期待してたわけじゃないが、どこかで出会うのは必須のような気がしてただけだ。」


会話のさなか、神にも勝るオーラを二人は感じ取った。


「……………このオーラは……………蕾斗か!」


ヴァルゼ・アークにさえ一発ではわからないくらい強大なオーラになっている。


「アダムの力………まだまだこんなものではない。」


遠い昔に神々と不死鳥族が協力し合っても勝てなかった存在。

当時はそれがインフィニティ・ドライブだとはわからなかった。だがそれが特別な力だとわかった今は、ゼウスにとって恐れるに足らず。


「知ってるのか………インフィニティ・ドライブを蕾斗から奪う方法を。」


「無論。承知している。」


「だとすれば長居は無用だな。」


絶対支配を振り上げてオーラを集中させて、


「くたばれ、老人。」


ゼウスに向けて放つ。


「余の魔力に敵うと思ってか。」


トールハンマーから魔法が放たれる。

火、水、風、土のみならず、光、闇までもが同時に。


「頂点に立つ者は一人でいい。ヴァルゼ・アーク、終わりだ。スペースオペラ!!」


ヴァルゼ・アークのオーラなどものともせずスペースオペラが襲う。


「くっ………!」


避ける場所もなく直撃する。

魔力では絶対的にゼウスが上だった。


「体力を温存しようなどとするからだ。魔帝ヴァルゼ・アーク………最後はこんなものか。」


物足りなさを感じながらヴァルゼ・アークの屍を確認しようと見てると、目を疑う光景があった。


「大丈夫ですか?ヴァルゼ・アーク様!」


そこには…………


「結衣…………!」


手をクロスさせてゼウスの魔法を凌いでいた結衣の姿があった。


「……………バカな。小娘如き一介の悪魔が余の魔法を防いだというのか…………?」


ヴァルゼ・アークも、ゼウスも信じられない気持ちでいっぱいだった。

ヴァルゼ・アークとて耐え切れるかわからなかった魔法を、結衣は難無く防ぎ切ったのだ。


「結衣、お前なんともないのか?」


「え?ええ。別に……」


ヴァルゼ・アークの質問の意図が結衣にはわからない。彼女にしてみれば普通にしてやった事なのだから、当然と言えば当然だろう。


(信じられん…………潜在能力は秘めたるものを感じていたが、もう開花したとでもいうのか?)


なんだかよくわからないが、ヴァルゼ・アークに見つめられ顔を赤らめる。


「そ、そんなに見つめられたら…………恥ずかしいです。」


全く普段の結衣に、思わず笑ってしまう。


「ハハハハ!そうか、よくわかった。」


不思議そうに見つめる結衣に軽く微笑み、


「結衣、ここはお前に任せた。俺は先を行く。」


「わ、私ですか?」


ゼウスをちらっと見て、


「でも…………あの人って………」


結衣にも彼がゼウスだとわかっている。よもや自分が相手になるとは思ってないのだが、


「心配いらん。お前なら勝てるさ。」


根拠がどこにあるのだろうと思考を巡らせるが思い当たらない。


「待て、ヴァルゼ・アーク!まさかそんな小娘に余の相手をさせる気か!?」


「ゼウス、さっきお前こう言ったな?『自分に代わる者がいない』と。」


「だったらなんだ?」


「フッ……かわいそうな奴だ。


「何?ならお前さんにはいるのか?代わりとなる者が。」


「いる。俺に代わる者が。ここにいる結衣ともう一人………運命の鎖という武器を持つまだ幼い少女が。」


「少女だと?血迷ったか、ヴァルゼ・アーク。そんな小娘達にお前さんの代わりが務まるわけがなかろう。」


「試してみるんだな。時間が許すのなら神をも超える二人だ。まあ、わかる頃には死んでいるかもしれんがな。」


結衣の顎を持ち上げ唇を重ねた。


「頼んだぞ………結衣。」


ヴァルゼ・アークの意思に応えるべく頷く。


「ヴァルゼ・アークッ!!」


去ろうとするヴァルゼ・アークをゼウスが止めるが、結衣が遮った。


「どけっ!小娘!!」


「どくわけないでしょ!ヴァルゼ・アーク様からおおせ付かった大事な任務、完遂させてやるわ。」


「たわけが!余を誰だと思っておる!神々の頂点に………」


「うるせー、ジジイ。」


愛子を真似る。


「神々の頂点に立つのはヴァルゼ・アーク様ただ一人だけ。ジジイはさっさと引退しなさい。」


「ぬぬ…………身の程を知らぬ愚か者め!消し去ってくれるわ!!」


怒り浸透のゼウスを前に、なぜか不安とは違うドキドキ感があった。


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