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第四十五章 心の闇 〜ロスタイム〜

「おーーーほっほっほっほ。庶民の男の方とはお付き合い致しませんの。ごめんあそばせ。」


今時こんな言葉遣いをするお嬢様などいない。実におかしな言葉遣いも、純が遣うと珍味のように味わいがある。

絵に描いたようなスマイルとリアクション。少女漫画に出て来るキャラとぶれる事なく、良くも悪くも期待通りの行動をしてくれる。

戸川純は27歳。超一流企業の令嬢だ。いい年頃でも貰い手が無いのにはやっぱり理由はあるようだ。

さすがに親も焦ったのか、取引先の中小企業に事務で嫌がる純を無理矢理入れた。表向きは社会勉強となってはいるが、名だたる企業の令嬢。独身が長いのは家門に傷がつく。だからこの際一般庶民でもいいから貰ってもらおうという魂胆があった…………のだけれど。


「毎日懲りもせずに告白に興じるなんて、庶民の感覚は理解出来ませんわ。」


もう少し詳しく説明すると、昼休み時間に毎日一応の同僚から愛の告白を受けている。本人は昔からの事なので気にしてないのだが、『庶民』の女性が人生においてそんなに告白をされない事実を知り、わざとらしい言い回しと声量で自分がモテる事をアピールしてるのだ。

中小企業とはいえ、超一流の企業と取引をしているだけあって、会社は急成長している。

社員数も増える一方で男もより取り見取り、ルックスのいい純ならその気になれば結婚に苦労するわけない………………のが普通なのだろうが、こういう性格だからしかたない。

昼ご飯ですら一時は、


「うちのシェフを呼びなさい!庶民と同じものは食べられませんわ!」


などと言う始末だった。結局、お抱えシェフが弁当を作って届けさせる事で落着した。

そんな純にも、やがて闇は訪れる。







「聞こえませんでしたわ。もう一度言っていただけますかしら?」


「はい。ですから……旦那様が警察に連行されましてですね………」


執事の言葉に絶句した。

執事は私が生まれるくらいからずっといてくれてる信頼のおける人間だ。品がいい老紳士。でも今の言葉は信じられない。

お父様が警察に連れて行かれた?どうして?


「大変申し上げ難いのですが………」


「早く言いなさい!」


「は、はい………なんでも脱税の件とかで…………」


「脱税?バカバカしいですわ。お父様が脱税なんてなさるわけがありません。すぐ連れ戻しなさい。」


お父様は経営者とは言え、実際にはそれほど経営にタッチしてないし、数百という会社をまとめるお父様は何かを決定するだけの象徴的存在。脱税をしてるとすれば取締役の連中に違いない。


「それは無茶ですお嬢様。」


「お母様はどうなさいましたの!?」


「奥様も連行されました……」


「なんですって?脱税の容疑ならお母様は関係ないでしょう?」


「は、はあ………わたくしに言われましても……なんとも……」


「まさか連行されるのを黙って見てたんじゃないでしょうね!?」


「とんでもございません!しかし旦那様がすぐに釈放されるだろうからいいと………」


「弁護士は?弁護士は呼んだんですの?」


「もちろんでございます!何人かいる顧問全員に。」


ん〜…………脱税の容疑なのにお母様まで?お母様は経営には一切携わってないのに……なぜ?


「わかりました。一晩待ちましょう。それまでに弁護士から連絡がなければ明日の朝一番で警察に行きます。いいですわね?」


「か、かしこまりました。」


執事は一礼するとリビングを出て行った。


「全くもって面白くないですわ。脱税だなんてつまらない犯罪、お父様が犯すわけがありませんわ。」


私は知らなかった。うちの会社の本当の姿。

手広くやってるのだけは知ってたし、他に『顔』があるなんて思いもしなかったけれど、知ってたとしたら私はどうしてただろう?

多分今と変わらなかったとは思うけれど、それでも知っておくべきだったかもしれない。







−翌朝−


「お嬢様、朝でございます。起きて下さい。」


「んん………今日は休み………………もっと寝かせて………むにゃむにゃ………」


「それどころではありません。至急テレビをご覧になって下さいませ。」


「ん〜〜……何よもう………テレビなんて庶民の娯楽……………」


「うちの会社の事がワイドショーで取り上げられてます。新聞も一面………」


「ワイドショー?」


くわ〜っと大きな欠伸をして起きる。

執事が濡れたタオルを差し出してくれた。顔拭き用のタオルだ。これがないと朝が始まらない。


「はい。昨日の件が……」


「超一流企業のお父様が捕まったのなら当然でなくて?ま、すぐに誤解は解けるでしょうけど。庶民のひがみには付き合いきれませんわ。」


「それが……そうはなりそうにございません。」


「あら、どうして?」


執事は百聞は一見にしかずと言いたげに新聞を渡してきた。

朝から活字は受け付けないけど見てやるしかない。

そこに書かれていた見出しを見ただけで眠気が吹っ飛んだ。


『戸川グループの正体!』


そう書かれた見出しの内容文を読む。


〜日本を代表する大企業、戸川グループ。不動産、IT関連、貿易商、ホテルなどを経営する企業で、元を辿れば明治時代より創業者である戸川雄太郎が……………〜


ここじゃない!こんな事はわかってる事!私はもっと先に目をやる。


〜戸川グループの裏の顔は武器製造だった。主に銃機関係を製造しているらしく、シェアは業界の七割を占める。〜

……と、書かれていた。


「………………武器……製造?」


唖然とした。


「な、何かの間違いですわ。武器製造なんて物騒な。だいたい!武器を造ったくらいで咎められる事ではないでしょう?ミサイル造ってる企業だってあるじゃありませんこと?戸川グループだけが責められる筋合いはまったくもってないですわ!」


そうだ。確かに武器製造を表ざたにしてなかったのは社会的に心象が悪いけど、問題はないはず。なら一体何が………。


「お嬢様、問題は武器を製造していた事ではないのです。」


「じゃあ何が問題なわけですの?」


「先月、ヨーロッパの方で戦争があったのはご存知ですか?」


「戦争?」


言われてみれば大きな戦争があったような気がする。

あまり世界情勢なんて気にならないからはっきりとはわからない。


「その戦争に武器を提供していたらしいのです。」


「提供って…………」


執事は黙って頷いた。


「問題なのは、提供した国は大量虐殺などで批判を浴びている国だということです。」


ここは戦争を禁じてる国だ。世界のシェアの大部分を占めてしまうほどの製造は確かに異常だし、戦争に武器を提供したという事は戦争に加担したも同じ。

国内批判で収まる問題ではなさそうだ。


「戸川グループには、戸川の名を使わない会社もございます。」


私が聞きたい事を察知したのか、先に答えを言ってくれた。

でもそれは、私にある疑問を落とした。


五神いかみ、貴方何か隠してますでしょ?はっきり言いなさい。脱税ってのは表面上。私の知らない何かがありますのね?」


 言い忘れたけど五神っていうのは執事の名前だ。

私には五神が何か言いたいのだとわかった。ただ、私に言っていいのかどうか迷っているのだ。

私が生まれた時からうちに従事しているって事は、内部事情にも詳しいはず。お父様やお母様の信頼も厚いのも承知してるし、誰よりも戸川の人間なんだ。


「…………わかりました。お嬢様ももう子供ではございませんし、知っておくべきかもしれません。」


物腰の静かな五神は一度目をつむり、覚悟を決めたように私を見た。

唾を飲み込み、同じく覚悟を決める。嫌な事実を打ち明けられるのは間違いないからだ。


「戸川グループは、武器商人として急成長して参りました。」


「武器………商人?」


「はい。」


事実とはいえ、信じられない事をぬけぬけと言う辺りが五神らしい。白々しいくらい遠回りな言い方とか出来ないものだろうか。


「創立時は世界相手に商売するには武器を製造するのが一番儲かったのだとお聞きしております。しかしながら、日本も間もなく戦争に突入するだろうと言う時代。他国へ製造した武器を売られてはまずいと国から会社事占領されてしまったとか。そんな時、裏取引の話が舞い込み、戸川はそれに乗った。もちろん裏取引というほど軽い取引ではなかったでしょう。」


私の知らない『戸川』が顔を出す。


「国にばれてしまえば死罪は免れない時代でしたから。」


「なんとなくだけど…………言いたい事はわかりましたわ。で、取引は成功したと………。」


「武器を他国へ流す。変わりに、戦争に我が国が勝とうが負けようが、戦争が終われば武器製造の依頼を戸川だけにするという条件を受けたようです。」


「それがお父様の代まで続いているのね。」


「はい。」


後は聞くまでもない。戦争が終わり、約束通り注文が殺到したわけだ。たちどころに成長した武器製造会社は、戦争に負けた国には相応しくなかった。戸川の名のつかない会社に区分けされ、隠れみのとして様々な分野に進出。そこでも成功してしまい、目覚ましい時代の流れの果て、戸川グループは政界に踏み込める企業となり武器商人の事実も見てみぬふりをされてきたのだろう。


「どんな罪になるのかしら?お父様とお母様は。」


「………わかりません。顧問の弁護士からもまだ連絡はございませんし、手は尽くしております。今しばらくお待ち下さい。」


暗い闇の部分の戸川を知り、意気消沈とした私が言う事は何もなかった…………わけがない。


「待てと言われて待つ私ではありませんわ!お父様がいなくても会社は動いてますの!お父様が戻られるまでこのわ・た・く・しが!経営を見ましょう!」


現実が厳しいのか、私が甘すぎたのか。多分、後者。

世の中を知る事になる。







事件(?)より二日目、私は取締役達を集めた。


「き、聞こえませんでしたわ。もう一度言っていただけます?」


「ですから、社長には辞任していただき、今後戸川グループは名前を変えて新しいグループに生まれ変わる事になりました。」


取締役の一人がわけのわからない事を言い出した。


「何の権限があってそんな事を?戸川グループは戸川一門のもの。勝手な真似は許しません!」


何やらひそひそと耳打ちを始めた。

そして、


「お嬢様、お言葉を返すようですが会社というものは個人の所有物ではありません。グループ合わせて何万と社員もおりますし、潰すわけにはいかないのです。ましてお嬢様に一から法律を説明するつもりもございませんので、どうぞお引き取りを。」


「なっ……!わ、私が召集致しましたのよ!帰るのなら貴方達ではございませんこと!?」


「度重なる失礼にはなりますが、ここは会社です。お嬢様は役員でもなければ従業員ですらないのですから、お帰りになるのはお嬢様かと。」


「ぶ、無礼な………」


 赤っ恥をかかされ、『戸川家』の会社をタクシーに乗って後にする。

非情にも、これはまだ序の口だった。私には十分なくらいの仕打ちだったのに………。

自宅の近くまで来ると、見慣れない光景があった。

庶民が集団で私の家に、ハウリングのうるさいスピーカーで何やら叫んでいる光景。


「お客さん、あんた戸川の関係者?」


中年真っ盛りの運転手が馴れ馴れしく話しかけてきた。


「ええ。戸川家の次期頭首ですわ。」


「んなら悪いけど降りてもらえんかね?」


「はあ?何をおっしゃってますの!門までお行きなさい!こんなところで降ろされても困りますわ!」


「でもあの集団の中にはちょっとねえ………」


「人を目的地まで運ぶのが貴方の仕事ではございませんのっ!?」


「悪いけどね、うちは個人タクシーだから、車に傷でもつけられたら困んのさ。」


頭にきて怒鳴りそうになった。

そこをぐっと堪え、一万円札を出し、


「お釣りっ!!」


普段ならお釣りはいらないと言うところだが、一円まで綺麗にもらってやる事にした。

運転手は面倒そうに電卓を叩き、小銭を数え渡してきた。


「まいど。」


人の良さそうな顔とは裏腹に無愛想にされますます腹が立つ。

若干10メートルくらいなのに長く感じる。歩く習慣がないのは考えものね。

疲れてはいたけれど、颯爽と歩く。庶民に無様は見せたくない。などと見栄を張った私の姿は、火に油を注ぐ結果を招いた。

家の門の前まで来ると、庶民がおとなしくなり私を睨んでいた。


「うちに何か御用?用がないのならさっさとお帰りなさいませ。私は疲れてますの。騒音は勘弁願いますわ。」


全く!これだから庶民は困る。


「あんた、戸川家の人か?」


これまた中年男性が声をかけてきた。


「だったらなんですの?」


私の返答を聞いた途端、


「人殺し!!」


「犯罪者!!」


「死ねっ!!」


「テロリストめっ!!日本から出て行けっ!!」


罵声を合唱し出した。


「何を言いますの!!私は人殺しなんか……!!」


言い終わる前に、何か頭をかすめた。

線を描くような感触が伝う。


「血………?」


どうやら石を投げられたらしかった。

 次第に過激さを増し、家の窓ガラスが割られ始めた。

慌てて家に駆け込んだ。


「誰か!警察を呼びなさい!」


いつもなら、私が玄関のドアを開けるだけで出て来る使用人達が今日は誰も出て来ない。


「ちょ………誰か!外の庶民達をなんとかしなさい!」


反応は同じ。嫌な空気が流れる。

誰もいないなんてありえないのに。

やがて、私の不安を掻き消すように五神が現れた。


「五神!これはどういう事ですの?使用人達はどこに行ったのです!」


「みな辞めて行きました。」


「辞めて……って………なんで!!」


「言わなくともおわかりでしょう。戸川は終わったのです。脱税の容疑も所詮建前でございます。旦那様もしばらくはお戻りになりません。顧問も全員辞任しました。」


「そんな………!五神!なんとかなさい!貴方は戸川の……」


五神の姿に今更気付いた。大きなバッグを持ち、至ってラフな格好をしている。


「五神………?」


「申し訳ございません。」


「ま、待ってよ………」


「戸川にお仕えしてもう27年。家族よりも深く長い付き合いでした。私も六十を過ぎましたし、ここらで引退させていただきます。」


外の罵声すら聞こえないくらい衝撃だった。

会社はもう戸川のものではなくなる。お父様もお母様もいつ戻るかわからない。弁護士も辞任したと言う。使用人も辞めた。最後の綱の五神まで………。

私一人残されても何も出来ない。


「そうだわ!給料を今の倍に………いえ三倍にしますわ!だからここに残って……」


五神は淋しそうな顔をして首を振った。


「お給料は存分にいただきました。蓄えもありますし………お嬢様の期待には答えられません。」


そして頭を下げ、裏口から出て行った。

私は座り込み………泣き崩れた。

窓ガラスが割れる音と、罵声が追い込んでくる。


「私は人殺しじゃない!違うっ!!」


望感に打ちのめされ運命を呪った。

胸を掻きむしりたいほど苦しく、もう死んでしまいたかった。

戸川の名に助けられて生きていたのだと思い知る。資産は残るだろう。でも私には生活する知恵もなければ、あまりに世間を知らな過ぎる。


「いいように使い捨てられたな。」


男の声がして振り返ると、見慣れない男がいた。使用人にはいなかった男だ。


「だ、誰ですの!?」


涙を拭き必死でいつもの自分に戻ろうとするが、一度折れた心は中々言うことを聞いてはくれない。


「金では買えないものもある。今、外の連中に金をいくら積もうと気持ちは変わるまい。弱い者を大勢で叩く。悲しいが人間とはそういう生き物だ。」


わかった風な事を言う。


「人の家に勝手に入って何を偉そうに!」


「間もなくここは火の海になる。」


「なんですって?」


まだ破られる窓ガラスがあったのかと思うより先に、火炎瓶を投げ込まれ一気に炎が暴れ出す。


「キャアッ!!!」


殺される。直感が告げた。


「あ、貴方の仕業なんですの!?そうなら早く辞めさせなさい!!」


「残念だが、俺は無関係だ。辞めさせる事は出来ん。」


「では貴方は一体何の目的で………」


「お前を救う為だ。」


「私………を?」


「お前にこの石をくれてやる。」


そう言って黒く光る石を投げてよこした。


「その石がお前に選択を迫るだろう。」


「………選択?何の?」


熱気が凄く息をするのもやっとだ。怪しげな会話をしてる場合じゃないのに、なぜか聴き入る私がいる。


「生きるか………死ぬか。お前が自分で選ぶんだ。」


男の姿が一瞬で消え、一瞬で闇に堕ちる。

炎に包まれた私の家ではなく、ただの闇に。

呆然としてた私に若い男の声が語りかけてきた。さっきの男とは違う声。甘さを匂わす声が。


「絶望の淵にようこそ。お嬢さん。」


「だ、誰?今度は何ですの?」


「我が名はルシファー。恐れる事はない。ここには俺とお前の二人きりだ。」


二人きりって………姿が見えないじゃない。


「生きるか死ぬかの選択とか言われたんですけど?」


「フッ………回りくどい言い方はやめて単刀直入に言おう。人間を捨て、悪魔にならんか?」


は?悪魔?


「人間なんてくだらん生き物だ。実感しただろう。自分には無関係の事なのに、あたかも正しい行いをしてるかのように振る舞い、あげくには徒党を組んで一人を責め立てる。ついでに付け加えれば、それを正義だと思い込んでいる。」


「貴方、随分物分かりがよろしいのね。まさにその通りですわ。私が何をしたと言うのですか?だから庶民は好きになれないのですわ。」


「なら話は早い。お前に俺の記憶と力をやる。お前は人間ではなく悪魔として生きろ。」


「突拍子もない話ですわね。悪魔だなんて観念的な。でもどうしてもと言うのならなってあげてもかまいませんわ。貴方、ルシファーでしたっけ?どことなく育ちの良さを感じますし、人間なんてものにも未練はありませんから。感謝なさい。特別ですわよ!と・く・べ・つ!」


強がり。夢を見てるのだと思ってたから。


「フフ。よかろう。感謝してやるよ。」


光が射し込み、闇から解放されると、そこは私の自宅ではなくまたしても見慣れない場所だった。

長く続く廊下を歩いて行く。

行き止まりまで来ると、でかい扉があった。その扉を開け、中に入る。怖いとかは思わなかった。闇の中でルシファーと名乗る男と話してるうちに、現実を忘れてたのかも。


「来ると思ってた。戸川純。」


石をくれた男がいた。不思議と誰なのかわかってしまった。


「ヴァルゼ・アーク様……」


周りにも何人か黒い鎧を纏った女達がこちらを見てる。


「もっとも、お前が死を選ぶとは思っていなかったがな。」


皮肉って微笑んだ。

なんだろう…………胸が熱い。

男の人と手さえ繋いだ事がない私。高鳴る鼓動に頭がクラクラする。


「ああ………ヴァルゼ・アーク様。お慕い申し上げます。」


「お前は人を超え悪魔に生まれ変わったのだ。心に負った傷に怯える必要はない。」


見透かすように言うとまた微笑んだ。


「私の心も身体も全て捧げます。」


もはや全身が焼けるように熱かった。


「忘れるな、闇を拒絶する者に光は訪れん。」


 魔王ルシファー。

 それが新しい私。


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