第三十四章 出来レース(前編)
「神様と戦う前に、こいつら何とかしないとね。」
絵里が見る先には、街を破壊したあの白い生き物がうじゃうじゃいる。
美咲を助け出さない限りは無限に出現し続ける。
しかも視界を遮るほどの数で。ダイダロスもあわよくばなどとは思ってはないだろう。
ただ、相手がレリウーリアてあっても、数で押す事で時間を稼ぐ事は充分可能だ。
白い生き物は捨て駒でしかないのだ。
「みんなで対処する余裕はないわよねぇ………」
突破するのはわけない。しかし、新たに出現するだろう白い生き物と挟み打ちになるのは目に見える。
千明が思うのはそこだ。
「私が残るから、みんな先を急いで。」
翔子が名乗りを上げた。
「翔子お姉様だけ残して行くわけにはいきません!私も残ります!」
翔子のロストソウルは、近距離の戦いには向かない事を結衣が気にかける。
「そうですわね。結衣にも残っていただきましょう。」
純の言葉に反論する者はいない。波動砲の弱点を補えるのは結衣しかいない。
「わかった。波動砲で突破口を作るから、みんなはそのうちに!」
翔子が波動砲を構えると、白い生き物達が一斉にかかって来た。
「じゃあ頼んだわよ!みんな!」
翔子が波動砲を発射。遮っていた視界に穴が開き、翔子と結衣を残して先を行く。
抜けて行った悪魔達を追おうとするも、結衣に阻まれる。
「お姉様達の邪魔はさせないわ!」
全身にオーラを纏い、目にも留まらぬ早さで敵を次々と倒していく。
「やるじゃない!結衣に負けてらんないわ!」
スーッと空中に浮き敵の真ん中に行き、
「カオスフレア・アンブレラ!!」
翔子がロストソウルを左右に構え身体を回転させる。そこから発射される波動が、敵に逃げ道を与えないで消し去って行く。
「さっすが翔子お姉様!!」
「へへん!結衣みたいな攻撃は出来ないけどね!」
互いの功績を褒めたたえるも、第二波が来た。
「どんなに数で押しても私達には勝てないのがわからないのかしら。」
翔子がぼやく。仲間達の後ろを守るように、奥への入口に二人で立ちはだかる。
面倒なのはここからだ。倒しても倒しても現れる白い生き物を、最小限の力でなるべく早く倒し続けなければならない。
「お姉様、もう一度私が突っ込みます。お姉様は零れた奴を!」
「結衣、無理はダメよ!みんなが副司令を助けるまでは、何があっても倒れられないんだから。」
「大丈夫ですって。私だってち〜ゃんと考えてますよ!」
最後の戦い。それだけにテンションも上がる。まるで超有名なスーパーアトラクションに初めて乗るくらいに。
何時間も並んでやっと乗れた。テンションを上げるなと言う方が難しいだろう。
「いっくわよ〜〜!オリハルコン・アターック!!」
「結衣!」
敵陣の真っ只中に突っ込み、さっきと同じように薙ぎ倒して見せる。
翔子は結衣に言われた通りに群れからはぐれた敵を仕留めて行く。
だがしかし、第三波がすぐに来る。
「天使の時より質悪いじゃん。」
まだ疲れてはないが、このままではバテるのは時間の問題だ。
翔子には特別な作戦なんて初めからない。
結衣が残ってくれてよかったとホントに思う。
当の結衣は第三波に攻撃を開始した。
「愚痴ってもしょうがないか。ヴァルゼ・アーク様の為にも、死ぬ気でがんばんないとね!」
そうだ。自分の力はヴァルゼ・アーク様の為にある。
ここで踏ん張れなければ、竜神でいる資格ないのだから。
レリウーリアが白い生き物のと対峙している間に、羽竜達は別の入口を探す事にした。
「周り込んだって他に入口がある保証なんてないんじゃないのか?」
提案したのはジョルジュだった。羽竜にはそんなに都合のいい話があるとは思えず、どこか不信感を消せずにいた。
「ダイダロスはここを根城にしている。だとすれば、ここで暮らすに入口が一つでは都合が悪いだろう。」
「でもよ−………」
「悪魔達の後に続いても、余計な戦いに巻き込まれる可能性が高い。私達の目的は蕾斗の目を覚ましてやる事。まずは蕾斗の元へ行くのが先だ。」
「裏口がある確証はあるの?」
あかねも半信半疑だ。
その理由の半分は、わざわざ裏口を作って侵入経路を増やすような事をするかという事。
敵を招き入れるようなずさんな建物には見えない。
「羽竜、あかね、固定観念を捨てろ。」
「どういう意味だよ。」
「思い込みや決めつけは、必ず足元をすくわれる。」
「俺達は常識的に考えてだな……」
「常識的に考えるのであれば、これだけ複雑な建物に入口が一つというのはあまりに不自然。戦いが始まる前に今一度自分と向き合え。私達の常識と奴らの常識。決めつけさえしなければ何も変わらない。思想は違えど、互いに意思のある生き物。思惑は意外と同じだったりする。」
ジョルジュの言ってる事はわからなくもない。
すんなりと受け入れるには抵抗がある。
「ジョルジュの言う通りよ。」
声がした。この落ち着いた声が誰のものかはわかる。
「ジャッジメンテス………」
羽竜がその名を言う。
「もちろん、裏口を見つけて上手く侵入したとしても、順調に藤木蕾斗の元へ辿り着けるとは限らないけど。」
「罠かもしれないと……」
「吉澤あかね、ここまで来て罠を警戒しても意味がないわ。私達は敵の陣中にいるのよ。私達に都合のいい事が起きる方が奇跡じゃないかしら?」
お節介を焼いているのか、はたまた煮え切らない二人を諭してるのか真意は定かではないが、由利は正論を言ってる。
「目黒羽竜、ダイダロスは神を仲間にしたのよ?」
「だからなんだよ。」
「ルバートとは勝手が違うという事は肝に命じておきなさい。でないと、藤木蕾斗に会う前にあの世行きよ。」
至って真剣な眼差しが不安を煽る。
「お先に。」
由利が高くジャンプしてテラスに乗る。有に十メートルはある高さだ。とても真似出来ない。
「なんてジャンプ力だ……」
由利と目が合ったが、彼女は何も言わず中へと入って行った。 羽竜を挑発したのだという事はわかった。
「くそっ、いっつもレリウーリア(あいつら)に遅れをとってたまるか!」
少し離れたところで大きな音がした。
レリウーリアの誰かが戦いを始めたのだろう。
それが尚更羽竜の気持ちを焦らせていた。
「貴様の与えた試練など、何の足止めにもならなかったな。」
サマエルがダイダロスに毒づく。
「一時間も足止め出来たのですから上出来でしょう。」
気分を害する事なく答えた。
「しかし、どうやって神を味方につけたんだ?簡単にはいかなかったはずだ。」
「そんな事はありません。誠意を持って話し合った結果、手を貸していただく事になったのです。含みはありませんよ。」
「フン。どうだかな。だいたい貴様が誠意などという言葉を口にする事自体、胡散臭くて敵わん。」
「褒め言葉ととっておきましょう。」
サマエルもダイダロスの協力者(?)の一人ではあるが、神がダイダロスに手を貸す理由が見当たらない。インフィニティ・ドライブを狙っているとしても、わざわざダイダロスの下につかずとも他に方法はいくらでもある。
何をどうしているのかわからない気味悪さが、サマエルには気に入らない。
「まあ好きにするがいい。何度も言うが、俺は貴様やヴァルゼ・アークの野望とやらに興味はない。羽竜と戦えればそれでいい。邪魔はするなよ。」
念を押すだけ押すと、一人どこかへ消える。
「フフフ。サマエル、貴方も神でさえも知らない。この戦いが既に千年も前から仕組まれたものである事を……………」




