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第二十一章 魔王の竜退治

魔王サタン・宮野葵が誘われた場所は、湖にも匹敵する広さの沼地だった。


「何が出てくるやら。」


ダイダロスに言われるがまま、この沼地まで来た。

化け物退治とは言われたが、実際何が出て来るかはわからない。マスカレイドを手に、準備は万端なのだが、一向に出て来る気配はない。


「……………………………………………………イライラするわね。」


そもそも、『待つ』という行為が好きじゃない。一分足りとも待てない性格だ。こればかりは直せない。


「………………………………………………………なんなのよ、一体!」


静まり返る空間に腹を立て、普通の女性なら持てないくらいの石を投げ入れる。


「きゃっ!汚〜い!最悪!」


自分で投げ入れた石のお釣りが、顔に掛かり憤慨して見せる。


「化け物なんていないじゃないの!ほんと、頭に来る奴だわ!」


ぶつくさ文句を言ったのが効いたのか、沼が大きく盛り上がる。


「ふふん、来たわね!」


マスカレイドを構えるわけでもなく、沼の主が現れきるのを眺める。

だが、その余裕もすぐ消え失せる。あまりに巨大な容貌を見せたからだ。さらには、主の正体を知り、呆然とする。


「…………ヒ………ヒュドラ…………!」


九つの頭が薄気味悪くうごめいている。


「ギャオォォォォッ!!!!」


イメージ通りの鳴き声が轟く。

図体の割には甲高さもある声だ。


「ダイダロスの奴………やってくれるじゃない。」


相手が人型でなくても、常識のデカさならまだいい。

それが、ビルほどもあるのだから、戸惑ってしまう。というか、面倒臭いのが本音だろう。


「さあて、それじゃ手っ取り早く行きますか!」


助走もつけずに九つの頭の前まで跳ね上がり、マスカレイドを構え、必殺技を繰り出す。


「相手が悪かったわね!私が魔王じゃなきゃよかったのに。恨むならダイダロスを恨んでよ!百花繚乱!!」


長い九つの首を切り刻む。

赤い血を噴いて沼にぼたぼた音を立てて落ちる。


「ま、こんなもんでしょ。出来れば無駄な力は使いたくなかったけど。」


元々、葵は体力が無い。病弱とまではいかないが、少し荒い動きをすると息が上がってしまう。


「はて?倒したのはいいけど、これでいいのかな?」


試練と呼ぶには、葵には簡単過ぎた。物事というのは、簡単に事が進み過ぎると不安になるものだ。

体外、その不安は的中する。

ヒュドラの落とされた首の切り口から、頭が再生を始める。

悪魔にも再生能力はあるけれども、落とされた部位が元の形に戻るなんて事は出来ない。まして、頭が再生するなんて事は絶対にない。


「……………嘘でしょ。」


ヒュドラは、ゆっくりと地響きを立てながら沼から出て来る。

まるで、何事もなかったかのように。

予想するに、また首を切り落としたところで、再生するだろう。心臓を狙いたくとも、巨大な図体を切り裂くのは容易ではないし、ここで全ての力を使ってしまえば後につかえる。

 葵の正面に立ち、九つの頭が一斉に炎を吐く。


「チッ……」


力を温存したいとは言っても、さすがに避けないわけにはいかない。

翼を広げ優雅に舞いながらかわしていく。


「うざったいっ!」


無駄とは知りつつも、また首を落としてやる。

今度はすぐに再生を始める。


(どうなってんのよ……っていうか、どうすればいいのよ!)


かなり上空まで避難して、策を練る。下ではヒュドラが、ところ狭しと暴れ回っている。


「………………そうだ!」


いい策を練れたのか、もう一度ヒュドラの前まで降りる。


「いっくわよ〜!百花…………繚乱!!」


少しでも再生の時間を稼ぐ為、首を根元から切り落とす。


「まだまだぁ〜〜〜〜〜〜〜!」


すかさず、切り口を炎の魔法で焼く。すると、再生を始めようとしていた細胞が死滅したのか、再生が見事に止まった。


「やりぃっ!」


魔力も体力も、予定より犠牲にはしたが、負けてしまっては元も子もない。まずまずだろう。

動かなくなった胴体が崩れる。溶けた蝋のように。


「な〜にが試練よ!魔王サタン様の前では所詮こんなもんよ!」


 二つ目のオーブが割れた。


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