表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/93

第十九章 ジャッジ

突如、上空に出現した円盤を見て、人々は宇宙人の侵略だと思い込んでいる。

兵器を持って挑んでも、ことごとく返り討ちに合う。世界は絶望に満ちていた。

しかし、羽竜、ジョルジュ、あかねの三人には、宇宙人なんかではなく蕾斗とダイダロスの仕業だとわかっている。


「あれは…………」


羽竜が円盤を見上げる。下から見る限りは、未確認飛行物体というものにしか見えない。


「UFO?」


「まさかだろ。」


あかねはお決まりのセリフを言わないと気が済まないらしい。羽竜にあっさり否定されてしまったが。


「おい、誰か来るぞ。」


ジョルジュが見てる空から、降りて来る影が見える。

細長い羽が四枚。見覚えのある形だ。


「新井さん!」


「ほんと、緊張感のない人達ね。うらやましいわ。」


あかねの顔を見たら、なんだか皮肉ってやりたくなった。

結衣からすれば、いくらヴァルゼ・アークの頼みとはいえ、納得がいかない。羽竜にどうしてこだわるのかがわからない。


「事態は深刻みたいだな。」


「ええ。目黒君のお友達のせいでね。」


「………で、何しに来たんだ?」


「上空に見えるあれ、ダイダロスと藤木蕾斗の城なのよ。そこに入るのに………あーもうっ!面倒だから行きながら説明するわ!」


「行くって、どこにだよ?」


「今、私なんて言ったのよ!着いて来なさい!」


羽竜達の先頭を行こうと、飛ぶ用意をする。


「待てよ!」


「何!?」


慌てて羽竜が止める。結衣は、いちいちいらついて仕方がない。


「蕾斗もいないし、ジョルジュも肉体が戻ってから、飛べないんだよ。」


「……………………ったく!」


結衣が魔力で三人を浮かせる。


「飛ばすから、ちゃんと着いて来てよ!」


返事をする間もなく、一気に加速してヴァルゼ・アークの元へ飛んで行った。

















「頼むわよ。」


由利が言うと、全員が鎧を纏い、ロストソウルを具現化する。

十二のオーブのうち、無作為に九つのオーブにそれぞれ手を触れる。

光が彼女達を包み、どこかへ誘う。


「行ってきます。」


消える寸前、愛子がヴァルゼ・アークと由利に笑顔を見せた。


「みんな、無事で戻って来て………」


由利が切に祈る。


「…………そろそろ話したらどうだ?」


「え?」


神殿と城へと続く道は、大きな壁に遮られている。そこに結界が張られているのがわかる。

オーブは六芒星を描いた接点の上に点在している。

これだけの為に造られたのは明白だ。

今、ここにはヴァルゼ・アークと由利の二人だけ。

由利は優しい女だが、それを表現する事はなかった。司令官としての威厳もあるだろうが、自分にも他人にも厳しい女を貫いてきた。

ところが、最近様子がおかしい。意を決して直接問う。


「………変わったよ、お前。なんて言うか、笑顔が多くなったし、人を気遣う言葉を口にしたり、甘えたり。」


「…………………………。」


「そういうお前は嫌いじゃない。いつもみんなの手本でいようと頑張り過ぎるお前よりも、少し安心したりもする。でも、理由があるだろ、そうする理由が。」


由利にはヴァルゼ・アークの言葉が幸せの鐘にも聞こえる。

自分をちゃんと見ててくれてる、なによりの証だ。


「…………ありがとうございます。でも、言えません。」


「何故だ?」


「言ってしまえば、私はレリウーリア(ここ)にいれなくなります。」


「…………………言いたくないのならそれもいい。だがな由利、レリウーリアにいれなくなるなんて、今後口にする事は許さん。お前がいなければ、あいつらはまとまらん。フッ……みんなお前が好きなんだ。何があっても受け入れてくれるさ。」


「ヴァルゼ・アーク様………」


込み上げる涙をぐっと堪える。

それを見透かされたのか、優しく頭を撫でられ、額に軽くキスされる。


「ま、気が向いたら話すんだな。」


扱いが子供みたいで、いささか不満はあるが、気持ちは一気に落ち着く。


年齢とし相応に扱っていただかないと、すねちゃいますよ?」


お返しに、腕を後ろに回し、前屈みになり、悪戯な笑顔で、ヴァルゼ・アークの顔を下から覗いてやる。

ヴァルゼ・アークは照れ笑いを見せた。

悪くない雰囲気だったが、結衣と羽竜達の気配がして、二人は神殿の入口に目を向ける。


「来たな。」


ニヤリとヴァルゼ・アークが笑う。


「総帥、司令、目黒君達を連れて来ました!」


「ご苦労様。」


いつもの由利に戻る。

冷ややかな目で羽竜達を見つめる。


「ジャッジメンテス………ヴァルゼ・アーク………」


羽竜は少し息が乱れてたが、二人の姿を見ると睨み返す。


「今回は由利が世話になったみたいだな。」


いつも通り本題から入って来ないヴァルゼ・アークにムッとする。結衣を出向かせてまで呼ばれたのだ、状況が芳しくない事くらいは飲み込める。

主導権がどちらにあるか、はっきりさせられている気がしてならないからだ。


「フン、そんな事はどうでもいい。話は新井から聞いた。結界を破る試練だって?」


「だそうだ。」


「なんで俺達が行かなきゃなんねーんだよ。」


「お前の友達だろう?蕾斗は。結界を解くのには、後三人。一つは結衣に行ってもらう。残り二つはお前達で手分けして行くんだな。」


「あんたはどうすんだよ。」


「俺と由利は待ってるよ、ここで。」


「高見の見物かよ。」


「お前が行かないのなら、蕾斗は遠慮なく殺させてもらう。感じるだろう?もはや蕾斗は、ダイダロスの言う通り、アダムそのものになろうとしている。時間がない。行くのか行かないのかはっきりしろ。」


強く言うところを見ると、羽竜が思ってるより、状況はずっと最悪…………猶予がないのかもしれない。


「…………わかった、行く。」


「それでいい。」


羽竜の答えに満足する。


「なら、残る一つは私が行こう。」


ジョルジュが羽竜に言った。


「ジョルジュ…………」


「そうするしかあるまい。あかねを頼む。」


黙ってジョルジュの意思に答える。


「約束は守ってもらうぞ、ヴァルゼ・アーク。」


「ちゃんと戻って来たらな。」


ジョルジュ、結衣は早速オーブに触れる。

羽竜とあかねは同じオーブに触れる。

手の平がじんと温かくなり、光がオーブから触れてる手を通じて、全身に行き渡る。

そして、光の中へと消えて行く。


「相変わらず単純な坊やですね。」


「だからこそ扱いやすい。後は、終焉の源として蕾斗を倒してくれればいい。」


「藤木蕾斗を?でも、彼は藤木蕾斗を倒すつもりは………」


「無理だよ。」


由利から離れ、六芒星の中まで歩く。


「羽竜は蕾斗を倒す羽目になる。これは決まっている事だ。」


「どういう事でしょう?」


「そのうちわかる事さ。今は知らなくていい。」


「総帥がそうおっしゃるのなら。」


 絶望の淵に堕ちた者は、二度と闇の中から帰って来れない。

そう言いたいのだろうか?

蕾斗だけでなく、自分達も絶望の淵に堕ちた者。闇の中で生きるしかない。

ヴァルゼ・アークの背中を見つめるたびに、心が契れそうになる。

何度思ってみても、こんな形の出会いしかなかったのかと苦しくなるばかり。

 自分達の勝利は、この世が終わる事で叶えられる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ