第十六章 創世紀 〜零の書〜
刀匠ダイダロス。イグジストとロストソウルを創造し、天使と悪魔の戦いを加速させた男。
それでいながら、オノリウスに頼まれトランスミグレーションを創った。
トランスミグレーションは終焉の源にしか扱えない。オノリウスが出した条件だ。
オノリウスはあの時代を見捨てていた。天使と悪魔に対抗出来たはずのダイダロスが、終焉としての役目を放棄したからだ。
トランスミグレーションを終焉の源しか使えないのなら、創る意味があったのだろうか?
結果として、羽竜が存在したからいいものの、もしこの時代に終焉の源がいなかったら……。
それとも、終焉の源が生まれる事を知っていたのか?
オノリウスは何を企んであんな手の込んだ事をしたか知らないが、一つ過ちを犯した。
蕾斗に魔導とインフィニティ・ドライブが同じだと伝えてしまった事。
蕾斗は、自分なら戦いを終わらせ、今とは違う全く別の世界を造れると思い込んでいる。
無理な話ではないが、まだ若い彼に神なる器量はない。
探求され続けた力を我が物としているが、力だけ剥ぎ取る事などそう難しい事でもない。
問題は、ヴァルゼ・アークもその事に気付いているという事。
目障りの一言で片付けられる相手でないだけに厄介極まりない。
どんな形で実行してくるかわからないが、戦いが始まった時から全て計算通り。オノリウスもヴァルゼ・アークもこの手の中にあるも同然。仕組まれた戦いだとも知らずに、踊っているに過ぎないのだ。そう、千年前から…………。