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第十一章 反逆の友

「羽竜君……………」


「蕾斗…………」


暗闇の中に俺達はいる。

蕾斗が言うには、ここは俺の夢の中らしい。


「………怒ってるよね?」


「当たり前だろ。お前、もう一度自分のした事思い出してみろ。一体どうしちまったんだ?」


「……………昼間言えなかったけど、僕は羽竜君達を敵に回しても、自分の意志を貫くよ。」


「ちゃんと話せよ。なんでそういう風になるのか。ダイダロスに騙されてんじゃねーのか?」


焦る気持ちを抑え、冷静に冷静にと自分を落ち着かせる。


「この世界は、千年前と何も変わってない。それどころか、ますます腐敗してる。これから先もそうだ。人間は変わらないよ。弱い者は嘆き苦しむしかないんだ。」


「だからダイダロスに手を貸すのか?」


「逆さ。ダイダロスが手を貸してくれるのさ。」


「なんだって?」


「ダイダロスは、僕の知らない知識を持ってるし、力の制御の仕方も知ってる。インフィニティ・ドライブを使いこなすには彼が必要なんだ。」


「じゃあ何か?お前とダイダロスで世界を支配するのか?」


「世界を支配するのはあくまでも僕だよ。ダイダロスには大臣みたいな役割を担ってもらう。」


「蕾斗、この世に不満があるのはみんな同じじゃないか!世界を支配するようなやり方じゃなくても………」


「それじゃ遅すぎる。羽竜君、これは思い付きじゃないんだ。人間は限界に来てる。このまま放置すれば、また大きな戦争が起こり、地球は滅びに向かう。そうなる前に僕が地球を救うんだ。それが出来るのは、インフィニティ・ドライブだけなんだよ!」


二人だけで、ちゃんと話したいから夢の中にまで来たと言っていたのに、結局はこうなる。

もう……何も変わらない。俺達の関係は。


「そういうわけだから、出来れば邪魔はしてほしくない。」


「そんなわけいくか!」


「………だよね。」


「お前がどんな道を歩こうと、俺は絶対お前を止めて見せる!」


「……………僕は止まらない。羽竜君を倒してでも歩き続ける。次会う時は、容赦しないよ。」


蕾斗が姿を消した。夢の中から出て行ったのだろう。

たった一人の親友なのに…………何も解り合えないのか……。


「蕾斗、やっぱりお前は間違ってる。どんな未来が人間に待ってるとしても、力で捩伏せるようなやり方じゃ何も変わらないと思うぜ………。お前、俺にそう言ったじゃないか………」

















「ふぅ……………」


「戻って来たみたいですね。」


「ダイダロス………」


「どうでした?終焉との話し合いは。」


「話し合いになんてならないよ。羽竜君と僕とでは、まるで考え方が違うんだ。」


神殿のような空間に、玉座が一つだけ置かれている。その玉座に座るのは、蕾斗だ。

真夜中の空気が冷たい。神殿は宙に浮いている。


「解り合えないからこそ、人は人を求め、期待しすぎるばかりに、裏切られたと錯覚して苦しまねばならぬ生き物なのです。それ故、権力を振るい力を誇示するのです。」


「愚かだよ。」


ヴァルゼ・アークは、人が愚かかどうかを考える事自体が愚かだと言っていた。でも、やはり人は愚かだと蕾斗は改めて感じてる。だから怒りが収まらない。


「しかし、それももう少しで終わる事。貴方が終わらせ、そして新しい世界………イヴァリースを創るのです。」


「もう一度聞くよ、僕にそれが出来るのか?」


「貴方でなければ出来ないのです。アダム、貴方は人間には道標が必要だとおっしゃってたはずです。」


「そうだよ。僕が道標になるんだ。でも、僕ら二人だけで勝てるの?」


「フフ………ご心配なく。その点につきましては考えがあります。」


「考え?」


「はい。闇十字軍レリウーリアの邪心リリス、彼女は本来貴方の妻。リリスの生体エネルギーから何百…何千……いや、何万と子を作り、兵士として従えればいいのです。」


「そんな都合のいい事出来るの?何万もの子だなんて。」


「出来ますとも。」


「でも、リリスはヴァルゼ・アークのところにいる。会いに行くのでさえ困難じゃないの?」


「奪って参りましょう、ヴァルゼ・アークの元から。」


「どうやって?」


「………最高のゲストがいます。」


ダイダロスが紹介するまでもなく、銀色の甲冑を着た男が現れた。


「お前は………!!」


「出世したな、蕾斗。」


「サマエル!!!」


「彼が私達を手伝ってくれます。」


驚きは隠せなかったが、今は心強いのは確かだ。


「勘違いするなよ、俺は貴様らが何をしようと知った事ではない。俺はただ羽竜と戦う口実が欲しかっただけだ。」


「ですがサマエル、約束は守ってもらいます。私達は貴方に死に場所を提供する、その変わり私達を助けるという約束ですから。」


「フン…………いいだろう、リリスは奪って来てやる。」


自信ありげに鼻を鳴らすと、部屋を出て行く。


「サマエルが仲間になってたなんて………」


「仲間になったわけではありません。そこのところ、解釈を間違えると、飼い犬に手を噛まれる結果となりますよ。」


「じゃあ死に場所がどうって…………?」


「私にもサマエル(彼)が何を考えているのかはわかりません。ですが、少なくとも、彼もヴァルゼ・アークや終焉を倒したいと思っているのは確か。ですから、戦いの場を与える見返りとして、今回の件を飲んでいただいたのです。」


蕾斗にしてみれば、どっちでもよかった。自分の実力ではヴァルゼ・アークや羽竜とは渡り合えない。変わりに戦ってくれるものがいれば、それでいい。インフィニティ・ドライブを使いこなせるまで。


「よく見ておいて下さい。もうじき火の海と化す前に。」


ダイダロスが地上を見下ろし、ニヤつく。


「新たな創世紀の始まりだね。」


蕾斗はまだ見ぬ世界に、胸を踊らせていた。


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