波乱の予感?!
昼休憩が終わりを迎え、午後の授業が始まる予鈴がなったところで、ようやく俺は解放された。
「とほほぉ……」
がっくりと肩を落としながら教室へ戻る。
唯とのあの現場を学校の生徒に見られなかったのは唯一の救いだが、俺のメンタルポイントは枯渇寸前だ。
ガラガラと教室のドアを開け、倒れるように自分の机へと向かった。
「はぁ……」
隣の席のいのりが心配そうにこちらを見ている。
「空くん大丈夫?」
「大丈夫……じゃ、ないかな。」
「そう……なんだ」
「あ!さっき、いきなり教室出て行っちゃったのと何か関係があるの?」
「無くはない……と思う」
「も、もしかして……朝のやつと関係しちゃってたりする?」
うっ、普段はボケてるのにこういう時だけなんて勘のいい女なんだ……
「しちゃってる」
「あちゃぁ……ってことは、私も悪かったりするんだよね……」
「いや、気にするなって、もう済んだことだし」
「でも、あの時、空くんすごい怒ってたし……あの後ずっと考えてたんだけど、私、空くんに酷いこと言っちゃったと思うから……あの……その……ごめんなさいっ!!」
周囲の視線が一斉にこちらを向いた。
皆一同に なんだ?何かあったのか?という顔をしている。
「そんな……俺こそ、ちょっと感情的になって悪かった、ごめん」
「空くんは謝らないで……妹ちゃんのことを思って言ったことなんでしょ?なら、空くんは全然悪くないよ」
「でも……」
「そんなに謝りたいなら、う〜ん?どうしよっかなぁ……」
「お、おーい?」
これに似たような展開をついさっきも体験した気がするのは気のせいだろうか。
「あ、あそうだ!じゃあ、私と…………デートしよ♡」
「お前もかよ……」
「え?なんか言った?」
「いや何も……」
「それよりどうなの?デート……してくれるの?」
「……分ったよ、するよ、それで謝罪になるのなら」
「じゃあ、決まりだね♡」
いのりとのデートは嫌ではない、むしろ楽しみなのだが、唯とのデートも控えている現状では素直に喜べない。そもそも、なんで2人ともデートなんだ?!
「はぁ……」
よく分からない展開についていけず、ため息が出た。
ふと顔を上げると周囲の男子に野獣のような目で睨まれている。
どうやら、聞き耳を立てていたらしく話を聞かれてしまったようだ。
キーン、コーン、カーンーーーー
午後の授業の始まりを告げるチャイムとともに先生が入ってきた。
「それでは、授業を始めます。みなさん、前を向いてくださいね」
先生の号令のおかげで視線から解放された。
いのりがスッと小さな紙を渡してきた。
「日時とかは放課後に決めよ」と書いてあった。
俺はその紙に「分った」とだけ書き、いのりに渡した。
いのりが読んだのを確認すると、俺は顔を伏せ睡眠態勢に入った。