高校生の本分……それはもちろん◯◯です!
唐突だが、高校生の本分とは一体何だとおもう? 恋愛? バイト? はたまた部活動?
確かに、それらを重点に置き高校生活を送っている人も多いだろう。だが、先生としては高校生の俺たちに力を入れてもらいたいのは勉強であろう。そして、勉強するということはテストがあるということだ。その人がどのくらい勉強したか、知識が定着しているか、応用的に考えることができるか。これらのことをチェックする為にテストが存在する。
前置きはこの辺にしてそろそろ本題に入るとしよう。察しのいい人なら既に気づいているかもしれないが、つまるところ近々、定期試験があるのだ。
もちろん、普段ちゃんと勉強しているいのりや唯はテストを苦には思っていないだろうが俺はそうでは無い。決してバカでは無いのだが勉強は嫌いだし、テストはもっと嫌いだ。テスト週間に勉強すれば平均くらいは取ることができる。
だったら問題ないじゃん! って思うかもしれないが世の中そんなに甘くなかったりするのだ。今日の学年集会で先生たちは俺たちの大学受験に向けてテストを難しくしていくと宣言した。おまけに今回のテストで赤点を取ったら今後ずっと土日学校に来て補習を受けるというペナルティー付きだ。
つまり週休0日 |勉強地獄
《ブラックスクール》ってわけだ。
そんな理由から俺は自分の部屋でテストに向けて作戦会議中なのだが……周りがとてもうるさくてそれどころではない。
「ねえねえ、これなんだろう?」
いのりが本棚に置かれた1つの分厚い冊子を指差し言った。
「何でしょうか? アルバムですかね?」
「あ、それはお兄ちゃんの子供の頃のアルバムですよ! 見てみますか?」
とまあこんな風にいつの間にやら呼んでもないのに彼女たちは俺の部屋に集合し、その上俺の部屋を荒らし色々と見られたくないものまで引っ張り出す始末だ。
昨日転校してきたばかりの月寺は唯をすっかり気に入ってしまい迎えに来た親を追い返し無理矢理俺たちの家まで付いてきてしまった。
いのりは俺の作戦会議を手伝うという口実で来たのだが実際は見ての通り非協力的である。
唯も作戦会議を手伝うと言ってくれたのだがいのりたちに引き込まれガールズトークに入ってしまった。
結局、彼女たちは俺に迷惑をかけに俺の部屋に来ただけということになる。
「お、おい、出て行けなんて言わないからもう少し静かにしてくれないか? 俺は高校生活を賭けた作戦会議をしているんだ!」
「あー! そう言えばそうだったね! 私も手伝うって言ったんだ」
思い出したようにいのりが言った。
「うん、そうだな。まあ、別に手伝いたくなかったら無理しなくていいんだけど」
「いや、手伝うよ! 手伝わせて! 1度言ったことは守るのが私だからね」
「頼もしいな」
「わ、私もお兄ちゃんに協力するね」
「え、えっ? じゃあ、私も参加させて頂きます」
さっきの状況から一変今度はみんなで考えることになった。こうなると寧ろ考えがまとまらなくなることが懸念されたが思いの外結論はすぐに出た。
「——じゃあ、これから毎日勉強会ってことでいいのか?」
俺は最終確認の為改めて彼女たちに問いかけた。答えはもちろん満場一致でYESだった。
「にしても、驚いたなぁ〜まさかキノちゃんが勉強苦手だったなんて……意外だねっ」
いのりが作戦会議中に月寺がカミングアウトしたことを掘り返す。月寺はグサっときた様で胸を押さえている。
「は、はい……恥ずかしながら……」
「まあ、俺も頭良くないからさ、一緒に頑張ろうぜ! きっとなんとかなるって!」
俺はできる限り精一杯励ました。
「はい、ありがとうございます! 結崎さん」
「それでなんだけど、勉強会はどこでするんだ? 俺の部屋でも構わないんだけど、この人数だと少し窮屈じゃないか?」
俺の部屋はベットや本棚が部屋の半分近くを占めているため。座る場所が殆どない。普段は自分1人なので気にはならなかったが、こうしてみると手狭である。
「なら、私のお家にいらっしゃいますか? 空き部屋もありますし、そこなら自由に使えると思います。一応お母様に確認してみますね」
月寺は携帯を取り出すと素早い手つきで画面をタッチし親にメールを送っている様だ。
返信はすぐに返ってきた様だ。
「確認したんですが…………使ってもいいとのことです」
「やったぁ! キノちゃんのお家楽しみだなぁ〜」
いのりが思いの外喜んでいる。初めて友達の家に行く小学生みたいだ。
「でも、空き部屋があるなんて月寺の家は広いんだな」
「いえいえ、そんなことないですよ、多分普通ですよ」
「そうなのか?」
「はい、では、明日の放課後両親が車で迎えに来る時に一緒に乗ってください。家まで案内しますので」
俺たちは了解し作戦会議は終わりを迎えた。
「じゃあ、空くんの用事も片付いたことだし、アルバム見よっか!」
「そうですね!」
「うんっ!」
「お、おいお前ら、やめろぉーやめてくれー」
その後俺の制止も虚しく、散々唯といのりによって過去の出来事を暴露され辱めを受けたのだった。月寺は終始頬を緩ませニヤニヤしていたが一体何を考えていたのだろう。もしかすると俺と一緒に写っている幼い頃の唯を見ていたのかもしれない。寧ろそうであってほしいと俺は思った。
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