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いのりのデート その1

 

 現在の時刻は24時を過ぎている。

 俺は今自分の部屋ベットで1人横になっている。俺の体は疲労困憊で1秒でも早い休息を求めているのだが、俺の頭、いや思考がそれを許さない。

 目を瞑り、眠りに就こうとすると、どうしても唯のあのシーンが再生されてしまうのだ。


 今回で何度目だろうか……もう数も分からなくなるほど繰り返されている。

 脳内で再生されるたび俺は眠気が覚めてしまいまた1から睡眠体勢に入らなくてはならない。


「俺ってばどうしたんだ……」


 なんとなく俺は唯が最後に言ったあの言葉の後に交わされた やり取りを思い出してみることにした。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 唯の問いかけに俺は返事をしようと口を開いた。だがそれを唯は俺の口を手で押さえるようにして制止した。


「ダメ……」


「え??」


「まだ……言わないで」


「うん」


「まだ聞きたくないの、例えそれが良い返事だとしても」


「そうか……唯がそう望むのなら」


「うん……今日はお兄ちゃんの気持ちが聞きたかったからデートしたんじゃなくて、ただ純粋にお兄ちゃんとのデートを楽しみたかっただけだから……」


 更に唯が続けて言った。


「今の……この、楽しかった、幸せだった、お兄ちゃんとデートして良かったって気持ちのままデートを終えたいの」


「そう……だな」


「それじゃあ、帰るか俺たちの家に」


「うんっ帰ろ」


 帰宅途中は殆ど会話無かったが、お互いの手をぎゅっと握りしめたままでいた。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 ここまで思い出した頃には自然と半分以上瞼が落ちていた。

 どうやら今度は寝ることが出来そうだ。


 *


 俺が次に目覚めたのは午前7:00 日曜日だった。俺のケータイには一件の通知が来ていた。

「9:00に駅前のパン屋の前で待っててください」という いのりからの連絡だ。


 時間としてはまだ十分あるが、せっかく覚醒したので二度寝は諦めリビングへ向かった。


 そこでは既に唯が朝食を作り始めていた。

 唯は俺の存在に気づくといつも通りの明るいテンションで俺に顔洗って席に座ってテレビでも見て待っているように言った。


 唯は昨日のことはそこまで気にしていないのだろうか?と疑問に思ったが、せっかく唯が

 いつも通り振舞ってくれているので聞くのは遠慮した。

 とりあえず俺は唯に言われたことを済ませ朝食を待った。


 今日の朝食はトーストにベーコンエッグを乗せたシンプルなものだった。


「いただきます」


 俺は大きく口を開け一口食べた。


「どう?」


「うん!美味しいよ」


「良かったぁ〜今日は起きるのが遅くなってしっかりしたものは作れなかったから心配してたの」


「全然問題ないよ」


「ところでお兄ちゃん、今日って何か用事あったりする?」


「今日は友達と出かける予定なんだけど……マズかったか?」


「あ、ううん、全然そんなことないよ」


 唯は両手を振って否定した。


「もし暇なんだったら勉強でも教えてもらおうかなって考えてたんだけど……無理っぽいね」


「ごめんな、今度暇が出来たら教えられる範囲で教えてあげるから」


「うん、ありがとっ」


 俺はトーストをさっと食べ切り、「ごちそうさま」と言い席を立った。


「じゃあちょっと、出かける準備してくるな」


「うんっ」


 集合時間までまだ1時間以上ある。

 準備は昨日持ってった物と変わらないのですぐに終わった。


 することもなく暇だが遅刻するよりマシだと思ったので家を出ることにした。


 リビングを通り玄関に向かう途中で唯に呼び止められた。


「ねえ、お兄ちゃん、さっき聞きそびれたんだけど、今日って何時くらいに帰ってくる?」


「うーん、20時とかそんくらいかな?」


「そっか……うん、分かった、気をつけてね」


「おう、じゃあ、行ってくる」


「行ってらっしゃい」


 俺はしっかり靴紐を結び勢いよく玄関の戸を開け外に出た。


 時間には十分ゆとりがあるので歩いて待ち合わせ場所に向かった。

 日曜日という事もあり、昨日に増して街を出歩いている人が多い。俺はいのりからの追加の連絡が来ていないかケータイをチェックした。だが、何も来ていなかった。


 そんなこんなで、予定よりもかなり早く待ち合わせ場所に着いた。

 俺以外にも誰かを待っているような人が数人いる。彼彼女らもデートなのだろうか。


 待ち合わせ時刻まで後40分もある。

 あんまり好きではないがソーシャルゲームでもして時間でも潰そうとしていた時。どこからともなく俺の名前を呼ぶ声がした。


「おーい、空くーん」


「ん?」


 どこだを周りを見渡す。するとすぐに


「空くーん」


 と言いながら手を振りこちらへ歩いてくる いのりを発見した。

 やはり人が大勢いる中でも目立つほど美人だ。服装もいつもの制服とは全く異なるオシャレなものを着ている。


「よっ、いのり」


「ごめん、待った?」


「いや、今来たところだよ」


「本当に?良かったぁ」


「なんだか、やっぱり私服のいのりも新鮮で良いな!その服も似合ってるし」


「え?本当?しっかり選んで来て良かったぁ」


「まあ、いのりくらいになると何着ても似合う気がするけどなっ」


「そんなに褒めないで、いくら空くんでも恥ずかしいよ」


 手で顔を抑え顔を横にプルプル振っている。プライベートだと学校では見られない、いのりの表情が見られるのでとても楽しい。


「そ、空くんも、その服似合ってるよ」


「おう、ありがとな」


 お互いを褒め合い良い感じの空気になってきた。


「じゃあそろそろ行こっか」


「あ、そう言えばどこに行くんだ?」


「遊園地!!」


「おお」


「子供っぽいかな?!」


「いや、そんな事ないよデートと言えば遊園地だよな」


「うんっ!」


「じゃあ、行こか」


 そうして駅から電車に乗り遊園地に向かった。

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