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平等じゃないとダメですよ

 キーン、コーン、カーン——


 今日は特に何事も無く1日を終える事ができた。下校時間になると皆一斉に下校を始めた。今日は金曜日という事もあり、疲れ切ってフラフラしている者もいれば、明日の予定を友達と楽しく話し合っている者もいる。

 俺も、俺達もみんなと足並みを揃えて帰る事にしたのだが……。


 この下校の時間でさえ気を休める事は出来ないようだ。


「もう! お兄ちゃん、私の話聞いてるの?」


「空くんっ! 私の話を聞いて」


「そ、そう言われても、聖徳太子じゃ無いんだし、無理だって」


 この2人は気が合うのか合わないのか、仲が良いのか悪いのか正直微妙なところだ。もう少し俺に気を使って1人づつ交代で話してくれても良いのでは? と思うが3人で帰ると言われた時点でこの状況は想定できたわけなので3人で帰る事を了承してしまった建前、2人を邪険にすることはできない。


「空くんなら聖徳太子にくらいなれるでしょ?」


「なれねえし、なりたくもねえよ、それに聖徳太子との共通点、男って事しかないだろ」


「うーん、空くんなら宇宙の帝王フ○ーザまでは目指せると思ってたんだけどなぁ」


 相変わらずいのりはチョット天然というか、かなり頭が可哀想な子らしい。


「流石にもうツッコミもできないレベルだよ」


 どうにかしてくれと合図を唯に送ると


「あ、お兄ちゃん、そのままいのりさんとお喋りしてていいよ」


「え?」


 唯の言葉はさっきまでの唯の態度と相反するものだった。


「唯ちゃんいいの?」


 いのりも腑に落ちない様子で唯に尋ねた。


「いいですよぉ〜」


 意味深長に返事をする唯に、また何かとんでも無い事を思いついたんじゃないのかと俺は不安になった。


「まあ、唯ちゃんがいいって言うなら遠慮無く」


 俺がキョトンとしているといのりが10分前の話の続きをしてきた。


「それでね、さっきの続きだけど——」


「なるほど」


「それで、街で新しいお店が——」


「すごいな」


「人が多くて——」


「悪いのは君じゃない」


 唯の思惑を考えることに集中していたため、いのりの話が全く頭に入ってこなかったので、俺はたった3単語で会話が成り立つと言う知る人ぞ知る技を使い上手く話を合わせることに成功した……


 気になっていただけだった。




「空くん! 話ちゃんと聞いてた?」


「うん、聞いてるよ」


「嘘ついたってすぐ分かっちゃうんだから、何年一緒にいると思ってるの?」


 こういうところで勘が鋭いのは非常に困る。

 だが一方で、それだけ深く俺のことを理解してくれていることに嬉しさも感じた。


「やっぱり……いのりには分かっちゃうか」


「当たり前だよ、空くんの事なら何でも分かるよ」


「変なことまで知られてないよな?!」


「うーん、それはどうかなぁ? でも一つ言えるのは、私は空くんの家族よりも空くんのことを知ってると思うよ」


 その発言に今まで黙って俺の腕を掴んで歩いていた唯が反論した。


「むっ! それは聞き捨てならないですよ、いのりさん!」


「じゃあ唯ちゃんは空くんのどこまで知ってるっていうのかなぁ〜?」


「何でも知ってますよっ! だって私、お兄ちゃんとお風呂に入ったり一緒に寝たりしてるんですから」


「ふーん、でもそれ昔の話でしょ?それなら私もよくしたわ、空くんのお家にお泊りしたときにーー」


「ふっふーん、甘いですねいのりさん」


「どこがよ」


「昔だけだと思ったら大間違いですよっ、実はつい最近一緒にお風呂に入りましたし、昨日だってお兄ちゃんと一緒に寝たんですから……あぁ、あの夜はすごかったねお兄ちゃん♡」


「ちょ、なに、そんな話聞いてないよ……本当なの空くん?」


「本当ですよいのりさん」


「唯ちゃんは答えなくていいの、私は空くんにい聞いてるの!」


「本当だけど、お風呂もすぐに追い出したし、夜も一緒に寝るだけでなにもしてない!」


「一緒に寝てるのは否定しないんだ……」


 いのりがガックリした表情をしている。


 俺は唯の耳元で囁いた。


「おい、あのことは誰にも言うなって言っただろ?!」


「でも、いのりさんが煽ってきたんじゃん」


「だからって、あんなこと言わなくてもーー」


 いのりの呼びかけによって俺と唯のコソコソ話は突如終わらされた。


「ねえ、空くん」


 いのりは静かな落ち着いた声でそう呼ぶ。


「な、なんだ?」


「唯ちゃんだけにして私にしないって不公平だと思わない?」


「でも、唯は妹だし……」


「妹って言っても私達の1つ下ってだけよ?!」


「そうかもしれないけど……」


「それに私と唯ちゃんは勝負してるのよ、そういうことは平等にするべきじゃない?」


「そうは言ってもな、どうやって一緒に寝るんだよ」


「私が泊りに行くわ」


「おいおい、流石にいのりももう子供じゃないんだし親が心配するだろ」


「大丈夫よ、私の親優しいし、空くんの親とも仲いいから、『勉強会するから泊まる』なんて言えばすぐに許してくれるはずよ」


 どんどん話が進んでいく中ようやく唯が口を挟んだ。


「ちょっとちょっと、なに勝手に話進めてるんですか、いのりさんの親が許しても私が許しませんから」


「唯ちゃんに許してもらわなくても勝手に一緒に寝ちゃうから! それに、今までだって私に内緒で寝てたんだからいいでしょ?」


「そんなの私の勝手じゃないですか」


「私、唯ちゃんがそんなに卑怯な子だとは思わなかった……唯ちゃんはもっと『優しくて良い子』だと思ってたのに……きっとそんな唯ちゃんじゃ空くんも毎日大変だろうなぁ」


 いのりは唯の感情に訴える作戦に出た。


「うっ」


 唯にもなかなか効いているようだ。

 感情に左右されやすいのは唯の良いところでもあるし悪いところでもある。


「あーあ、そんなんじゃ、どんなに頑張っても空くんには振り向いてもらえないだろうなぁ〜」


 いのりの明らさまな煽りに対して、煽り耐性0の唯は投げやりに答えた。


「あー、もう、分かりましたよ、そこまで言うなら来てもいいですよ、でもその代わりお兄ちゃんに変なことしたら……どうなるかわかってますよね……」


 なんだか俺の方が鳥肌が立ってきた。


「もちろん、そこも平等に行くつもりよ」


 どうやら話がまとまったらしい。

 ここで俺が口を出すのは無意味に思えたので諦めて受け入れた。




 そうこうしてる間に家に着いた。


「じゃあ、またな」


 おれはいのりに別れの挨拶をした。


「あ、うん、じゃあまたね」


 そう言い家に入ってくいのりだが何だかいつもと様子が違う気がした。

 いのりの家の扉が閉まるのを見届けると俺達も家に入った。


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