繰り返される過ち
キーン、コーン、カーンーーーー
「それでは、授業を終わる!」
そう言うと先生は教室を後にした。
これで午後の授業は全て終わった。
「はぁーやっと終わった、長かったぜ」
「相変わらず寝てばっかだったけいどね」
「そうでもないぞ、今日はいつもより5分は多く起きてたからな」
「そんなのいつもとほとんど変わらないじゃない」
いのりと他愛ないもない言い合いをしていると、担任の先生が入ってきた。
「おーい、お前ら、帰りのホームルーム始めるぞー!席につけ」
先生のどうでもいい話を聞き流していると15分ほどでホームルームは終わった。
「ーーでは、ホームルームを終わる、お前ら、気をつけて帰れよ」
そう言い残し先生は職員室へ戻って行った。
ホームルームが終わりクラスメイトが帰路につく中、俺たちは教室に残りデートの日程を決めることにした。
「それでさ、いつにするんだ?」
「いつって何を?」
おいおい、休憩中の勘の良さはどこへ行ったんだ。と思いつつも、いつもの、いのりらしくて少し安心した。
「いや、で、デートだよ」
「あ、そうだったね♪」
テヘッっと可愛いく笑ういのりに心奪われ一瞬フリーズしてしまった。
「……」
「空くん?」
「あ、ああ、すまない、ちょっと見惚れてた」
「え、あ、うん……」
俺はついうっかり、正直に告白してしまい、いのりも顔を赤らめ下を向いてしまった。
しまった。空気が重い。
気を取り直し話を戻そうとする。
「あ、それでさ、日程なんだけど……」
「そうだね、えーっと、じゃあ、次の休みとかどうかな?」
「次?」
「そう、次?もしかして都合悪かった?」
いのりが困り顔で聞いてくる。
「いや、そんなことは……」
「おっけー、じゃあ土曜日でいいかな?」
「ど、土曜?!」
つい大声で聞き返してしまった。
「う、うん、ダメかな?」
土曜は唯とデートの約束をしているため、いのりとデートすることはできない。
「さっきは暇って言ったんだけど、実は土曜日は用事があって……日曜日なら行けるんだけど……」
「うーん、まぁ、いっか。うん、じゃあ日曜日ね♡」
いのりは少し迷っているようだったが、快く了承してくれた。
「助かる。ありがとう」
「ううん、いいよ。ところで土曜日の用事ってなんなの?」
いのりは軽い気持ちで聞いているのだろうが、俺としては恐ろしい質問だ。
ここで素直に『実は唯とデートするんだ』なんて言ったら、何を言われるかわかったもんじゃない。
「い、いや、大したことじゃないんだけど……そ、そう家族と買い物に行くんだ」
あながち嘘ではない……はずだ。
「そうなんだ。それはそうとして日曜日楽しみだね♡」
いのりが深読みするタイプじゃなくて助かった。俺はそっと安堵した。
「ああ、そうだな!」
俺たちはそのまま、昨日のテレビの話や今流行りのゲームなどについて30分ほど話し続けていた。
そんなときだった。
教室の外に人影が立っているのが見えた。
しばらく、そのままの状態で教室の外にいるところを見ると、どうやら教室に入るのを躊躇っているようだ。
すると意を決したのか、動き出し教室へ入ってきた。
俺はその人物を見て驚愕した。
「ゆ、唯、どうしてここに?」
「どうしてって、今日の朝お兄ちゃんが『今日から暫くは一緒に登下校しよう』って言ってくれたから、ワクワクしながら校門のとこで待ってたんだけど、いつまで待っても全然お兄ちゃん来ないから、もう帰っちゃったのかなって思ったけど、もしかしてって思ってお兄ちゃんの教室に見に来たんだよ!」
完全にいのりのデートのことで忘れてた。しかも、この状況見られたのは非常にまずい。
「ご、ごめん、すっかり忘れてた」
「もう、お兄ちゃんの嘘つき!ろくでなし!バカ!アホ!」
「唯ちゃん?!そこまで言わなくても……」
ここでやっといのりの存在に気づいたようだ。
「はっ!また、いのりさんと一緒にいたの?!お兄ちゃん!」
「これは、その、深い事情があったんだ」
「いつもいつも、お兄ちゃんってば……」
「本当ごめん」
「なんでいつも唯のだけのこと見てくれないの?あの時の好きって言葉は嘘だったの?」
「嘘じゃない!」
「唯ちゃん、空くんもにも色々と事情があるのよ?唯ちゃんが空くんのーーーー」
「いのりさんは黙ってください!」
「……」
「ねえ、お兄ちゃんは“私”と“いのり”さんどっちのが好きなの?」
悲しそうに唯が聞いてくる。
「それは……」
俺はそれだけ言うと黙ってしまった。
唯もいのりも俺の言葉の続きを待っているかのように、何も言わない。
「唯のことは妹として大切だし好きだ。でも、いのりのことも、友達として同じくらい好きだ。」
「……」
「……」
「だから……どっちかなんて俺には決めることが出来ない」
今の現状で俺が出せる答えはそれしかなかった。
「そう……なんだ」
「それが、空くんの答えなんだね……」
沈黙が解かれ、2人ともさっきよりは表情が優しくなったが依然状況は最悪だ。




