人壺
勢い任せて壺の中へ手を突っ込む
何なのか何かわからないがねちょりと吸い付き絡まる感触がある壺の底になにが…
二ヶ月前、妻子を事故で亡くし一人哀れな自称芸術家なんていう世間的には反応にこまる肩書きの方とされていた私なのだがしばらくの間音信不通となっていた甥と会うことになった
甥の方はどこだか忘れたが国立の大学を出て私とは比べ物にならないほどの立派な人間であった
と世間的にはされるし妥当だろう
「久しぶりですね仕事で仏蘭西に行ってたもので葬式にも行けず本当に申し訳ありませんでした」
自分より身分が上の人に謝られると困った気分であるが自分は困る感情を覚えていることにほんのり喜ぶ
適当に正しく簡潔に当たり前のことを述べ本題に入る
「ところでどうかしたのかい?」
「落ち込んでないかと思って」
「何か用事があるんだろう」
「ええまあ手が空いてる人が一人欲しかったというのが本音でしょうね」
最初から言えばいいものを
で何かな
「壺をご存知ですか」
「壺ぐらい知っとるとも」
随分と下に見られたものだ
それとも本気で言っているのか
「とある壺の中を確認していただきたいんですよ」
「どういう壺だい」
「手を入れるとその者は死ぬという逸話付きの」
「ふーん面白そうじゃない」
迷信なんか信じない私だから尋ねてきたわけか合点だな
「本当ですかじゃあ協力してくれるんですか」
「壺ぐらい手伝ってあげるよ」
前途有望な青年と言っても25歳は超えてるが年下の頼みしかも壺の一つぐらいなら聞いてやろう
そして直ぐに壺のある研究所まで車で行くことになり詳細を聞いた
借金抱えたおっさんが担保として有名な職人が作った壺と言って封印とかのお札が貼られた壺を出して借金をチャラにしてもらおうとしたところワザと壺の札をとって借金取りの手を壺に入れ殺したとかなんとか
それを聞いた甥の研究所が私を使って試してみようとしたわけさ
壺は封印を解いてから謎の液体?調べによると血が入ってるらしく洗ってからにしてもまた湧き出てくるらしい
血液はab型で200年以上前のものであることは間違い無いが液体単独だとモルモットでもなんら害は無いらしい
しかし壺の中に入ってると手を入れたものを死に至らせるというより消えるとか
実際に研究員の一人が興味本位で手を突っ込んで消えたらしい
壺に飲み込まれたのかなんらかの作用で死んだのか分からないらしいがそのいわくつきの壺にまさしく挑もうとしている
研究員が死んだあとの壺の周りにはいろいろな臓器が飛び出てるらしく他殺現場のようらしい
何だろう自分は死なない気がする
自信ではない未来は見えないが何となくそんな気がする
こういうのを何というんだっけな
研究所についた
他の研究員がビビりながら緊張しながら壺の周りを固めているのを分け入り壺に手を突っ込む
何だろう絡みつくこれはしかし生き物という感じではない
痛くもない絶妙にやわらかい
引っ張り上げる腸が出てきた
君が悪い
他にも硬いものが骨かな
そしてどんどん現れる何かを取り出す
床にはびちゃびちゃと飛び散る音がする
脳みそを取り出したあたりで悲鳴が上がる
それでも出てくるものをひたすら取り出す
そして手が出てきた時計がしてある見たことある安っぽい時計
それは自分の時計であった
どうやって掴んでるのか分からないだって自分の腕を掴んでいるのだから
「消えた」
一人の研究員の声が聞こえる
しかし自分はここにいる
なるほど、この壺から取り出したものは全て自分なのか
自分はとなると幽霊のようなものか
甥にも触れられない
この場にいてこの場にいないものとなった
こんな依頼頼まられなければよかったと思うが自分には何もない
幽霊として一生を過ごすのか
幽霊だから一生はないのか
幽霊として家族に会えるのか
他の幽霊となった人間はどうしているのだろう
甥ばっか見てて気づかなかった
周りにいるでないか骨として
どうやって死ねるのだろう
幽霊はどうやって死ねるのだろう
どうやって骨になるのだろう
先ずは研究員とやらを探してみよう
そして家族を探してみようそして骨になるのだろう