攻略対象とヒロインと悪役(婚約者)の話し合い
初めまして投稿しました。
誤字脱字などあれば教えてください。
乙女ゲームに転生した少女が悪役であるはずの婚約者に絡むところから始まります。
唐突に始まり、唐突に終わりますがそれでもよろしければお読みください。
「もう龍也くんと帝くんを解放してあげてよ!!」
「……え?」
麗華と二人で呼び出された無人の教室に行くと最近私の婚約者の天王寺様と麗華の婚約者の赤嶺様、それから他にも婚約者がいる方々とその方々と噂になっている転入生の姫川光さんが教室の中にいていきなり話し出した。
彼女の話を聞くと私たちが無理やり親に頼んで婚約をしたのだから解消しろと言いたいらしい。
思わず麗華と顔を見合わせてしまい、それから交互に話し始めた。
「あの姫川さん?何を勘違いしているかは分かりかねますが要するに私は赤嶺様と、も、…月原さんは天王寺様と婚約を解消しろということですわよね?」
「そうよ!!龍也くんも帝くんもあなたたちに付きまとわれて迷惑しているの!!」
「…まぁ、嫌われているのは知っていましたけど、私たちは別に付きまとってはいないんですけどね…」
「はぁ、…でしたら赤嶺様の方から私に、天王寺様から月原にそれぞれ婚約解消を告げてください。私たちからではそれは出来ないので」
何度も婚約解消を申し出ても家の体裁が悪いからと認められなかった。でも天王寺様と赤嶺様の方から婚約解消を申し出てもらえば婚約は解消されるはず。
「出来ない?はっ、しないの間違いなんじゃないか?」
「いい加減婚約者というのは邪魔だったんだ」
「私たちはもう何度も婚約を解消してほしいと伝えていますわ。ですが私たち女性から断ることは体裁が悪いですし、赤嶺様の方が私の家よりも上なのですから下の者から婚約は解消できないのです」
「私は天王寺様から嫌われていることは知っていましたので解消を申し出ましたが有賀咲さんと同じ理由で解消できませんでした。…天王寺様から婚約を解消したい旨を伝えていただければ解消できると思いますのでお手数ですがお願いします」
「赤嶺様が私たちを嫌っていらしたように私もお慕いしたことはございませんの。政略結婚と言うことを理解せず、私が強引に婚約者になったとばかりのその態度。心底嫌いでしたわ。私だって恋愛というモノに憧れていたんですのよ?それなのに幼い頃に婚約を結んだことで恋なんかできないし、うんざりでしたわ。今からでも遅くはありませんし、婚約を解消してくださいませ。なんでしたら今ここで電話でもなんでも使って解消の旨を伝えてください」
スッキリとした表情で麗華が話すと呆然としている赤嶺様のポケットから携帯電話を取り出した。
そして、まだこちらに意識が戻ってきていないうちに赤嶺様のご実家に電話をかけた。
『…どうしたの、いきなりあなたが電話をしてくるだなんて』
「あ、龍也様のお母様ですか?私、有賀咲麗華と申します」
『あら、麗華さん?どうしたの、龍也の電話からかけてくるだなんて』
「いきなりで申し訳ありませんが龍也様からお話がありますので聞いてもらってもよろしいですか?」
『…えぇ、いいわ。龍也に変わって頂戴』
一度携帯電話を離すと訝しんでいる赤嶺様に携帯電話を渡し、にっこりと笑顔で告げた。
「さぁ、赤嶺様、早くお話しください。私たちの婚約を解消すると」
「チッ。…母さん、龍也です」
『…今、麗華さんがあなたから話があると伺ったのですけど、一体何の話ですか?』
「俺と有賀咲麗華の婚約を解消したいのですが…」
赤嶺様がお話しされている中、私も婚約者である天王寺様に向き合いました。
今まで一度だってきちんとしたお話が出来ていませんでしたが、こうして麗華が行動を起こしたのだから私だって行動を起こしていかなければいけない。
「天王寺様、少しだけお話しさせてもらってもよろしいですか?」
「…あぁ」
「先ほど有賀咲さんと一緒に申しあげました通り、私は天王寺様に嫌われていると分かっていたため、婚約を解消したいという話をまずは私の両親に伝えました。しかし、家柄が低い私の家からはお断りできまませんし、女性からお断りをするという事実は天王寺様に傷をつける行為になるため、許してはもらえませんでした」
「…」
「それでしたので私は天王寺様に相応しくあろうと思い、日々努力をしてきました。…まぁ、それは有賀咲さんも同じではありましたけどね。…私はずっと天王寺様のことをお慕いしておりました。それこそ初めて婚約者だと紹介された九歳の頃からずっとです」
「…どうせ俺の家や顔が好みだったのだろう」
侮蔑の表情を浮かべてこちらを見る天王寺様と嘲りの表情を浮かべる姫川さんに虚しさを感じつつ、話を続けた。
「そのように思われても仕方はありません。確かにあった当初はお互いのことを何も知らないのですからまずは外見で好きになってもおかしくはないはずです。そこから少しずつ会ってお話をしたり、普段の天王寺様を見ているうちにあなたのさり気ない優しさであったり、勉学でも運動でもなんでも人に努力を見せずに陰で努力をされている所であったり、気を許した方だけに見せる笑顔であったり…とにかくたくさんのところが好きになっていきました。」
気を抜いたら涙が溢れそうになり、慌てて目に力を入れ、お二人を見つめた。天王寺様は私がこのように思っていたことを知らなかったのですからとても驚いているようです。
「…ですが、天王寺様が気になさる女性が出てきてしまったために私はもう天王寺様が私を好いてくださることが無いと悟りました。ですので、再び婚約解消を申し出ましたが昔と同じように断られてしまいました。…天王寺様、申し訳ありませんが天王寺様から婚約解消をお話し下さい。…姫川さん、こうしてお話しする機会を設けていただき、ありがとうございます。私からお話をしたいと申し上げても聞いては下さらなかったため、なかなかこのことをお伝えすることが出来ませんでした。本当にありがとうございます」
「え?…ぁ、…え?」
流石に私からお礼を言われるとは思っていなかったみたいで挙動不審になっていますが、仕方ないとは思います。きっと姫川さんは私や麗華から文句を言われるだろうときっと思っていたと思いますから。
「もも、話は終わりましたか?」
「えぇ、終わりました。麗華はどうですか?」
「残念ながら電話で断ることは出来なかったみたいで、赤嶺様の家で私や私の家族も交えて話しをするそうよ」
「そうですか。では、帰りますか?」
「そうね。…では、皆様失礼しますわ」
「失礼したします」
教室を出た後、麗華と二人で家路につく。人気のない廊下は夕闇に照らされていて、そこに私達二人の影が伸びていく。
「はぁ、漸く赤嶺龍也との婚約が解消されるはずだったのに…」
「頑張ってくださいね。話し合いならば麗華の主張も出来るはずですから」
「……そうね。…それよりももはどうなのよ。婚約解消できそうなの?」
「んー、一応伝えることは伝えたので後はどうなるかは天王寺様次第ですね」
苦笑いで答えると麗華も肩の力を抜き、笑い始める。いつもの作っている笑顔ではなく、思わず他の人をも笑顔にさせてしまうような温かい笑顔で笑う。
赤嶺様との婚約を嫌っていた麗華であったけど、赤嶺様のお隣に立てるように努力していた。そのため、人と関わる中でだんだんと本来の自分を出さなくなっていた。
もうこうして言葉遣いを崩すのも普通に笑うのも全部私ともう一人の友人の前でしか出さない。麗華の両親や使用人に対してもこの姿は見せない。
でも、婚約が解消されればこうして麗華が無理に振る舞うこともしなくてもよいことになる。
そうすればもっと肩の力を抜いて生活することが出来る。
それは私ともう一人の友人の昔からの願いであり、それがもうすぐ叶うかもしれないとすればきっと友人は持てるすべての力を使って解消させると思う。
誰よりも
麗華を思っているのは友人である彼なのだから。
「麗華、早く帰りましょう。楓が待っていますから」
「そうね。楓にも今日のことを早く話したいもの。どうせ赤嶺様の家に行く際はお母様やお父様も一緒でしょうから行くときに迎えに来てもらえばいいものね」
「えぇ、それなら良いんではないですか」
これから婚約解消が出来れば私たちや天王寺様たち、さらには姫川さんがどうなるかはなんとなく分かっている。だけどそれは私達には決して不利益にはならないことだとも分かっている。
これからのことを考えると少し面倒になってきてしまうけど、とりあえず今は麗華と友人とたくさん話したいと思いながら麗華と二人で早足に家に帰ることにしよう
ヒロイン 姫川 光
前世でこのゲームを行っていたため、転生して逆ハーを目指している
しかし、悪役からのいじめが無かったり、婚約者が邪魔になってきていたため、行動を起こす
結局別れさせるのはすんなり行くも徐々に二人は離れていき、他の攻略対象も離れていく
有賀咲麗華
乙女ゲームの中では悪役で赤嶺龍也の婚約者という立場から主人公を苛めていた
しかし、実際は婚約者が嫌いで何度も婚約解消を申し出ているが両親に反対され続けていた
いくら嫌でも婚約者という立場のため、自分の身を守るためにもゲーム通りの高飛車な性格を演じるようになっていた
本来はおっとりとした性格
婚約者 赤嶺龍也
攻略対象の俺様生徒会長
婚約者が嫌いで避け続けていた
婚約解消を持ち出すと両親に反対されたが麗華の説得により婚約は解消された
しかし、その後他の婚約者候補と衝突が激しく、麗華が一番であったと認識し、ヒロインと距離を取る
月原桃里
乙女ゲームの中では悪役で天王寺帝の婚約者という立場から嫌がらせをしていた(ヤンデレ)
しかし、実際は婚約者のことは好きであったが執着はしていなかった
そのため、嫌われていると気づいた時と天王寺が姫川を好きになってからの二回婚約解消を申し出ているが両親に反対され続けている
麗華が本来の性格に戻れるように楓と画策していた
婚約者 天王寺帝
攻略対象の無口な生徒会書記
婚約者が嫌いで無視し続けていた
婚約解消を持ち出すと考えなおせと言われるが最終的に婚約は解消された
しかし、その後桃里の告白を考え、ヒロインと桃里を比較してしまい、ヒロインの嫌な面ばかり見えてしまい、ヒロインと距離を取る
友人 紫ノ宮楓
麗華と桃里の友人(男)
昔から麗華が好きであったが婚約者がいたために諦めていた
しかし、麗華が無理に性格を偽り始めた時から自分が釣り合うように会社を立ち上げ、現在は赤嶺と同等かそれ以上に成り上がった
婚約が解消されてすぐ麗華に告白し、最終的に付き合うこととなる
つたない文章でしたがお読みくださり、ありがとうございました