思い~疑惑~
2時限目が終わった休み時間。
オレの精神はぐったりと疲れていた。
なぜって?話は数十分さかのぼる。
オレが何をかくしてても春に関係ない、みたいなことをいったら、春のヤツ、
((そうかよ。))
って冷たくにらんできたんだぜ。
それいらい、アイツは話しかけてこないし、黒澤君は相変わらず笑いながらオレのほうをみてくるし、で。
オレは変な圧力を感じた。
その状態が30分以上続いたんだぜ。
もうオレの精神はグッタグタ。
オレは ヨッコイショ と立ち上がった。
そして悠斗のことろへゆっくり歩き出す。
悠斗は休み時間になると、黒澤君のもとへ直行していた。
黒澤君に近づくのは心臓から毛が生えるよりも嫌だったががまんする。
「な、なぁ、悠斗。ちょっと話さない?」
オレがいうと彼はいつもの笑顔になる。
「おぅ、水都じゃん。いいぜ!!」
悠斗は黒澤にそのことを告げると歩き出した。
オレは気持ち悪いくらいにニヤニヤする黒澤をにらみつけると悠斗の後をついていく。
オレと悠斗は無言で屋上に向かった。
いや、正式には屋上に向かう悠斗をオレは追いかけた。
二人は無言だ。
屋上のドアの前についたとき、悠斗は立ち止まった。
・・・なんだよ?こんな中途半端なところで立ち止まりやがって!
通行の邪魔だろ。
彼が動く気配が無かったのでオレは口を開いた。
「どうして、黒澤なんかと一緒にいるんだよ?」
悠斗はくるり、とオレのほうを見ると、不思議そうな顔をした。
「どうしてってなんだよ。友達だからだろ?」
「い、いや。だってお前アイツにパシられてたじゃん!」
思った以上に自分の声が鋭くなっていることにオレは驚いた。
オレがあやまろうとしたとき、悠斗は言った。
「いや、まぁ、昨日はそうだったかもな!でも、もうパシリにされてないぜ?」
悠斗はいつもの笑顔をうかべる。
オレは困惑した。
もしも、オレが思っていることが、ただの勘違いだったら、どうしよう。
しかし、すぐにオレはの考えを取り消した。
いや、絶対に悠斗はおかしい!だってあのプライドの高い悠斗が、自分をパシリにした相手と友達なんてやるわけないだろ?
オレはうつむいた。
「アイツを友達・・・。って、らしくないよ!」
「何で?アイツと一緒にいて楽しい。だからオレはアイツと友達やってるんだぜ?」
・・・・・・。どうしたんだよ?悠斗は?
だって、アイツは黒澤は・・・。
オレの中に憎しみが生まれた。
そうだよ!だいたい、あいつさえいなければこんなことにはならなかった!! 全て、あいつが悪いんだ!
オレはフと思った。
どうして、たった一人の友達の行動にこんなにイライラするのだろう? と。
だって、そうだろ?友達がそれでいいならそれで良いじゃないか!
それなのに、どうしてオレは・・・・・・。
「・・・ま、さか・・・」
オレは即座にその考えを打ち消した。
「どうした?お前なんか様子変だぞ?」
悠斗が心配そうにこちらをのぞて来る。
だって、そんなわけ無いだろ?あいつは友達だ!ただの幼馴染だ!!
そうだろ?オレ、バカなこと考えるなよ!
そんなわけ絶対にあるはずないだろ?
オレは黒澤に向けていた憎しみが自分に向くのを感じた。
何変なこと考えてるんだよ!オレは!!
オレは自分の手の甲に、つめをたてた。
どんどんつめに力を入れていく。
あまりの痛みにオレは肉がちぎれるかと思った
でも、それでもオレは力をゆるめない。
「やめろ。そんな事したら、痛いだろ?」
突然、悠斗がつめをたててる手にふれる。
思わずオレは力をゆるめた。
「・・・もう、いいじゃないか。昔のことは、もういいじゃんか」
―――昔のこと―――
この単語にオレのからだはピクリと反応する。
それと同時に、オレは悠斗にときめいている自分に気づく。
あぁ、オレは悠斗のことが好きなんだな・・・。