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現実と妄想ー現妄実想ー  作者: 秋元 あき
2/14

転校生と親友と

「あ゛ぁーーーーー!!」

 突然、叫びながらダッシュで教室を突破する友人を見て、悠斗は立ち上がる。


 「ぉ、おい!水都!?どうしたんだよ!!」


 悠斗だけでなく、クラス全員の視線が 彼 が出て行った後のドアに向く。

  

 ―なんだ、なんだ?今の誰だよ。

 ―さぁ?オレもよく見てねぇ。

 ―ってか、うちのクラスにあんな事するような変なやつっていなくね?

 ―他のクラスかな?

 ―だとすると、 遠藤徹平えんどうてっぺいくらいだろ。



 誰もがひそひそと教室中を見回す。

  悠斗は居心地が悪いのをこらえつつ椅子に座る。


 (どうやら、さっきのヤツが水都だとはみんな気づいてないらしい。)

    内心ホッとため息をつく。



 その時ひそひそと小さい音(ヒソヒソ話)の連鎖が続く教室に、一人の声が響き渡った。

 

 「ねぇ、さっきの誰?」

 声の主は今日転校してきたばかりの黒沢洸だ。


 だから、そのことでみんなヒソヒソ話してるんだろ?

   教室の誰もがその言葉を喉元でこらえる。


   ・・・・・・シーーン・・・・・・


 静まり返った教室。


 しかし、彼はそんな周りの空気を気にすることなく、立ち上がる。

 「ねぇ、さっきのは誰?俺聞いてるんだけど。」


 静かに低い声で 彼 は一歩一歩、ある人物の元へ歩み寄る。


 「いや、僕知らないですよ。」 

   「お前じゃない。そこに座ってるやつに聞いてる。」


 眼鏡をかけた細い体の少年の言葉を冷たくさえぎった後、黒澤洸は指を指す。

  山梨悠斗に向かって、指をさす。





 

 その頃、(今まさに)教室で話題の中心になっている張本人、 青樹水都は屋上のベンチの上で横になっていた。


 あぁ、ありえねぇ・・・。ありえねぇよ。

 

 水都は教室を出て行ったときの光景を何度も何度も繰り返し思い出していた。

 悠斗の驚いたときの丸い目。

 クラスのヤツ等が向けてきた冷たい目。

 ここまで来る途中ですれ違った人たちの軽蔑まじりの目。



 ・・・って、他人が向けてきた目のことしか思い出せないよ。

  つまり今、オレが一番気になってるのは 周りのヤツ等からどう印象付けられてたか、って事か・・・。

 あぁー、ちくしょう。

   何であんなことしちゃったんだよ・・・。超恥かしいじゃないか。

 オレのバカ野郎!


 オレは自分を痛めつける気力もなく、ただベンチの上で力なく横たわっていた。

    ひからびた、ひとでのように。


 ~~♪  ―――~♪♪ ~~~☆~~■●~♪♪♪


 どこからか、聞いたことのある音楽が誰かの鼻歌で流れてくる。

  優しく切ないメロディー。

      少しづつ、近づいてくる。

            そして、オレのすぐ近く(真上)でピタリとやんだ。



   どうしたんだろう?続きが聞きたいのに。 

 

 オレは静かに目を開いた。


 「・・・・・・・・・」


 太陽の光をさえぎるようにして、誰かが顔をのぞきこんでいる。

     いったい誰だろう?人の顔をジロジロと・・・。


 オレが口を開くより先に、その誰かさんが言った。


 

 「なんでここにいるんだよ?もう授業始まってるゼ?」

   オレは ムクリ と起き上がる。そして、誰かさん の顔をまじまじと見つめた。


 「おま・・・じゃなくて、君はどちらさん?」

   見たこと無い顔だな。

 オレは相手が気さくに話しかけてきた事もあり、愛想笑いを浮かべる。

  相手も陽気な笑みを浮かべていた。

 


 「オレは2年B組の、遠藤徹平!よろしく~☆」

 小麦色にやけた顔を満面の笑みでいっぱいにして、彼は手をだした。


 「あ、あぁ、オレは・・・2年A組の青樹水都。よろしく!」

 

 オレは思い切って彼の、遠藤徹平の手を握った。

   握手なんて、ひさしぶりで緊張したのだ。

 

 


 遠藤徹平は笑顔の似合う、元気な少年だった。

 オレは学校の廊下を走りつつ思った。


今、オレは教室目指して全力疾走中だ。

    遠藤徹平に出会ったのは、今から約5分前のことだった。

      

 いや、今はそんなことよりも・・・

   どうやって教室に入ろうか?

 

 

 オレは脳みそをしぼりこむような気持ちで考えた。


  ソッとドアを開けて、自分の机までしのび足で行こうか?

 ん~でも、何かそれって入った瞬間に先生に大声で怒鳴られるのが落ちかもしれない。

   ・・・よくマンガでもそういうシーンあるし・・・・・・。

ん!ならいっそ、殴りこみにでも来ましたよ、って感じだして入ろうかな。  そうすれば先生も怖くて声が出せないかもしれないし!!

      でも、それをやって、もし不良に目を付けられでもしたら・・・・・・・・・。

 

 

 オレは体の全ての細胞をねじ曲げて考えた。

  そうしている間にも教室のドアはぐんぐんと近づいてくる。

                       


  よし!これで行こう!!これならきっと誰もふしんに思うわけが無いし!



 オレは自らの手で運よく良い方法を考えることが出来た、と女神のようにほほえんだ。  

 

  

 

   そしてオレは2年A組と書かれた教室のドアを開けた。





 オレが教室のドアを開けた瞬間、クラスのヤツ等がいっせいにこちらを向いた。


 

 数学担当の先生が怖い目をオレにむけつつ口を開く。

 「青樹、どこにいっていた?」


 こ、こわっ!あの優しい先生があんな怖い目を向けてくるなんて・・・


 オレは内心ショックを受けつつ無理やり口元に笑みを浮かべた。



 「えぇ、とお腹がどうしても痛くて・・・・・・お手洗いに。」


 それを聞くと一瞬で先生は優しい笑みを顔に浮かべた。

 「そうか。なら早く席につけ。・・どうしてもガマンできなくなったら保健室に行くんだぞ。」



 先生が黒板に向き直るのを見届けてからオレはホッとため息をついた。


 どうやら作戦は成功したようだ。とりあえずよかった・・・かな。

  あぁーでも、なんか思い知らされたてゆうか、・・・ショックだな。

 だってあの、優しい先生がオ、オレをにらんできたんだぞ!

  ヤバイな、こりゃ、成績ダウンはまぬがれないぞ・・・・・・。

ってか、そんなことより。あの先生けっこう気にいってたのに!



 オレはやり場のない思いを胸に、自分の席につく。


 ((ミズ~、保健室なら、オレがおぶっていくから安心して。))

 ウザさを100%セントひきだした春はオレが机に座ったとたんに話しかけてきた。



 本当に困っちゃうよ!ただでさえウザいのに!!

 こういう時にさらにウザくなるなんて、絶対オレに対しての嫌がらせだろ!?

  まぁ、オレは優しいからぁ?相手が先に殴ってくるまで殴らずにただ笑っててやるもんね!


  

 オレはそう決心しつつ、春の言葉に小声で返す。


 ((けっこうだよ。自分でいけるから。))


 ((えぇーでも、もし途中でミズが倒れたらどうするんだよー・・・?))


 

 オレは目の前に座る青年を殴り、蹴り倒したいのをグッとこらえる。



 ((ははぁー。相変わらず春君はウザいね。オレは大丈夫だから、って言ってんじゃん。))


 ((そっか~。って、えぇ!?何か今、・・・さりげなく変な事聞こえたんだけど。気のせいかな・・・))


 春は心底驚いたような目でこちらを見る。


 ((ははぁー。気のせいだよ。))


 オレは春に笑顔をむけたあと、教室を見回した。


 そこには(春意外の)全ての生徒が休む暇もなくノートに授業内容を書き込んでいる、(まさに、真面目君たちの集団授業を行っているかのような)光景が広がっていた。

 


  あぁ、いつもながらにここのクラスは真面目君多いな。

 たまには誰か授業ぶち壊すようなことしてほしいんだけど。。

ん、そういえば今日来たばかりの転校生君は・・・・・ダメ、だよ、なぁ。

 だってあれ、見た目でもう静かな性格だって分かるもんな。

  休み時間もたいしてしゃべらなかったみたいだし・・・・・・。


 

 

 今おもったが、春は休み時間中ずっと、同じ部活の友達に会うために、他の教室へ行っていることが多い。

 だから、休み時間、オレが変な行動をしていた、という事実は知らない可能性が高いのだ。

  

 オレは春に気づかれていないことを確信した。

  

 コイツにばれたら、授業中質問攻めにされてしまう。

 とりあえず・・・よかった・・・・・・。




 



 


 キーンコーンカーンコーン・・・・・・


 休み時間を告げるチャイムが鳴り響く。ちなみにここの学校は一つの授業おきに10分の休み時間がある。



 

 あぁ~うるせぇ。キンコンカンコンって音でかいんだよ!

  学校の先生も、たまにはサプライズとかでもやって、違う曲ながして欲しいもんだ!まったく。


 オレはえらそうなことを考えてる自分気づき、思いっきり自分の頭を殴る。


  ガキがえらそうなこと言うなよ!本当にコイツ(自分)はちょっと油断すると最低な事を考えてる!

   こういう事は次から、大人の財布の事情を知った上で言いやがれ!自分!!


 

 

オレはもう一度自分の頭を殴りつけた。




  


 「・・・ねぇ、君がさっき教室で変な行動をとった青樹君?」


 


 突然、後ろからかけられた声にオレは振り向く。

 

 青樹君って呼ばれたの初めてだな。

   いったい誰だろ・・・ぅ?!


 

 オレは後ろをむいた瞬間かたまった。


 

 な、なんで。彼がオレに話しかけて・・・

 いや、待て待て!彼さっき、 教室で変な行動を・・・  って言ってた!! 

 ヤバイぞ。タブンこの人はオレに苦情の一つでも言いにきたのかも!



 

オレは目の前に立つ青年に問いかけた。


 「そ、そうだけど・・・。何かごようでしょうか?」


 バクバクバク―・・・。

  オレは心臓の鼓動が早くなるのを感じる。



 オレの目の前に立つ青年、黒澤洸は問いかけるオレをただ、無表情で見ていた。


 

 気まずい・・・。だいたい、そっちから話しかけてきたんだから、なにか話せよ!! この状態続けばタブンオレの心臓爆発するよ!

        まぁ、そしたら医者料がたっぷりもらうけどね。



 

 目をそらせば負けだ!!

オレの中のオレがオレにそう訴えかけているように感じ、オレはヤツの黒澤洸の瞳を じぃ・・・ と見つめた。



 気まずい沈黙が二人を包み込む。



 いったい何分間休み時間を無駄にしただろうか?

  オレとヤツはまだ、黙ったままだ。



 オレがこの状態でミイラになることを覚悟したとき、ヤツはフッと笑みを浮かべた。



 「お前、面白いな。今までにないタイプだよ。俺 黒澤洸、よろしく。」


 黒澤君は転校生、という自覚があるのだろうか?

  名まえなんて朝聞いたばっかりだぞ!オラァ!!



 オレはとりあえず笑顔を浮かべた。

 「こちらこそ、よ、よろしく。オレは青樹水都。」



 「ねぇ、オレがどうして君の名前を知ってたか聞かないの?」

 彼は得意そうな瞳で聞いてくる。


 

 

 ん、そういえば、黒澤君は最初からオレのこと青樹君って読んでたっけか。

  ん?ってか、別に聞くほどのことでもなくないかな。

 どうせオレと友達になりたくてクラスの誰かにでも聞いたんだろ?



 「ど、どうして聞く必要があるのかなって思うんだけど・・・。」


 オレの返事に黒澤君は一瞬驚いたように目を見開いた。

   そして、いつものクールな表情に戻るといった。


 「予想外な返答。まぁ、青樹君がそう思うならそれでいい。」



 そして彼は笑みを浮かべた。


 「青樹君の友達の悠斗?だっけ。彼、前の授業からいないんだよね。どうしてだと思う?」



 ・・・・・・え・・?


 

 彼はオレの顔をのぞきこむように見たあと、楽しそうに楽しそうに声をたてて笑った。



  ・・・ってか、そういえばいないな。アイツ。。


 ってか、黒澤君がどうしてこんなこと言ってくるのだろうか?

 しかも、オレはその原因知ってるよ、誰よりも!  みたいな顔しやがって!物知りキャラにでもなる気かよ!!


 「アイツのことだから、トイレにお世話でもされてるんじゃるんないの?」

  

 冗談まじりにオレは言った。

  しかしオレの不安はすでに膨らんできていた。


 「もし、違かったら?」


 「・・・た、たとえば?」


 


 「たとえば・・・




        何かの理由で学校をボイコットしてたり」






 

 「何かの理由でボイコット?アイツが??」


 

 なんだ、ただ単純にボイコットしただけかぁ。

 ビックリしたぜ。

 もっと怖いこと言うのかと思ったし。



 オレは内心ホッとしつつ黒澤の瞳をのぞきこんだ。


 「アイツがボイコットするときは、学校にあきたときだけだよ」



 そして笑ってやった。

  アイツのいつもの行動をこんなに恐ろしい言い方で伝えられたのは初めてだ。

 心臓マジでバクバクしたし。

 


 黒澤はムッとしたような顔をした。


 「君って・・・。まぁいいや。一つ、いいこと教えるよ。」


 オレは面白くて震える肩のゆれをおさえつつ、黒澤の顔を見る。

 彼は少しイラついたような、楽しそうなような、複雑な笑顔を浮かべていた。




 「悠斗は僕がボイコットさせた。アイツ、少しおどしただけですぐ言いなりになる、単純なヤツだね。」



   黒澤が言った言葉にオレは声が、返事ができなかった。

  驚きで声が出なかった、というよりは、返事に困って声が出なかったほうが強いが、とにかく声がでなかった。


 

 これは、突っ込むべきか?それとも、怒ったり、反論したりするべきか?

  ん~転回?ってか、相手のノリにあわせるのって難しいな!オイ!!



 黒澤はオレを観察するように眺めている。


 ってゆうか、ムカつくな、黒澤君は!!

  オレは口を開いた。

 「おどしたって、どうやって?」


 オレの反応が気に入ったのか、彼はフフフッと小さく笑った。


 「本当に予想外の返答するね。」

      質問に答えろ!コノヤロー!!


 オレは喉元まででかかった言葉を飲み込む。



 ・・・・・・でも、アイツが脅されて言う事を聞くなんて・・・。

 いったいどんな脅し方したんだよ、黒澤君は。

  できることなら、今度からオレもその方法で脅してみたいな。

  だってアイツいつも、オレの髪の毛ぐしゃぐしゃにしてくるんだもん。

     よし!ここは何が何でも聞き出すぞ!!



 オレは変なところに気合をいれた。


 「いいから、教えてよ!どんな脅し方をしたんだよ?」


 「そんなに教えて欲しい?ってか、直接彼に聞いた方が面白いのに。」


 何を言っている!オレは脅し方にユーモアなんて求めてないんだよ!



 オレが 速く言え! という思いをこめて彼をにらむと、彼はいった。


 「・・・これで脅したんだよ。」


 言葉と同時にポケットから折りたたみナイフをとりだす。


 ・・・ナイフの先のほうに、血のようなものが付いてるのは気のせいだろうか。



 オレは苦笑いした。

 「そ、そんなことしたら、犯罪者になるだろ?」


 黒澤洸は面白がるようにオレをみた後、背を向けた。

 「そろそろ鐘がなる。俺は席にもどるよ。」



 黒澤洸が消えた後、急にオレの不安が増幅し始めた。


 「アイツ、大丈夫かな。」




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