# 第21話 鋼鉄要塞、突入
鋼鉄要塞を目前に、同盟軍は最後の作戦会議を開いた。
「偵察情報によると、要塞内部は多層構造になっている」
蒼真が、鹵獲した設計図の写しを広げながら説明する。
「複数の防衛拠点を突破しない限り、中枢――恐らく煉がいるであろう場所には辿り着けない」
「じゃあ、手分けするしかねえな」
魁が、大剣を担ぎながら言った。
「魁さんは、本隊と共に後方に残ってください」
葵が言うと、魁は少し意外そうな顔をした。
「俺は行かなくていいのか?」
「要塞の外にも、まだ帝国軍の残存部隊がいます。何かあった時、本隊を守れるのは魁さんだけです」
「……なるほどな」
魁は、納得したように頷いた。
「わかった。ここは俺が死守する。……お前らは、心置きなく行ってこい」
「はい」
葵は、仲間たちの顔を見渡した。
「律くんと蒼真くん、結衣さんは西側の防衛拠点を。鳴依さんは東側を。……それぞれの道を切り開いて」
「葵は?」
結衣が心配そうに尋ねる。
「私は、単身で最奥を目指す」
葵の声には、迷いがなかった。
「これは……私と、煉くんの問題だから」
その言葉に、誰も異を唱えなかった。
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「先輩」
律が、葵の前に進み出た。
「僕らのことは心配しないでください。必ず、道を切り開いてみせます」
「うん。……ありがとう、律くん」
「僕は僕にできることを、先輩は先輩にしかできないことを」
律が、まっすぐな瞳で言った。
「それでいいんです」
「葵、無茶はするなよ」
魁が、無骨に肩を叩いた。
「お前が倒れたら、元も子もねえ。……ここは、任せろ」
「わかってる。ありがとう、魁さん」
「葵ちゃん……必ず、戻ってきてくださいね」
結衣が、涙を堪えながら言った。
「約束する」
「葵」
鳴依が、最後に静かに歩み寄った。
「あなたなら、大丈夫。……行ってらっしゃい」
鳴依らしい、短く、しかし確かな信頼の言葉だった。
「行ってきます、みんな」
葵は、雷切・建御雷を強く握りしめ、それぞれの持ち場へと散っていく仲間たちの背中を見送った。
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要塞の壁に、蒼真が事前に見つけていた小さな通用口があった。
葵は、そこから単身、要塞内部へと侵入した。
内部は、無機質な金属の通路が延々と続いていた。時折響く機械音、微かに漂う焦げた匂い。歩を進めるたび、緊張が全身を包んでいく。
やがて、葵はある一室に辿り着いた。
そこは、これまでの実験記録が保管された資料室だった。
「……これは」
壁一面に貼られた資料。無数の「被験体番号」と、それぞれの経過記録。
多くの記録の末尾には、赤い文字で「失敗」「廃棄」と記されていた。
葵は、唇を強く噛んだ。
(こんなにも、多くの人が……)
これが、ヴォルケナーという男の所業だった。無数の命を、ただのデータとして扱ってきた、その痕跡。
葵の中で、静かな怒りが燃え上がった。
(絶対に、許さない)
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資料室を抜け、さらに奥へと進む。
やがて、一際大きな扉の前に、葵は辿り着いた。
扉の向こうから、微かに、しかし確かな魔力の気配が漏れ出している。
それは――どこか懐かしく、それでいて、これまで感じたことのない異質さを孕んだ気配だった。
「……この感じ」
葵の心臓が、大きく跳ねた。
忘れるはずのない、あの温かい気配。だが、その奥に、何か禍々しいものが絡みついている。
「煉、くん……」
葵は、震える手を扉にかけた。
これまでの全ての道のりが、この扉一枚の向こうへと収束していく。
喪失、覚醒、成長、そして再会。
葵は、深く息を吸い込み、静かに、しかし確かな決意とともに、扉を押し開いた。
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