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スキル【ズル】は貴族に相応しくないと家を追い出されました~もう貴族じゃないので自重しません。使い放題だ!~  作者: まんじ(榊与一)


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第6話 気になる

馬車に揺られ、俺とグレイはペイレス邸へと案内された。


「……」


てっきり別宅あたりだと思っていたのだが、まさか本宅に連れて来られるとはな……


建物は、生家であるジョビジョバ家と比べて見劣りしないレベルだ。

ペイレス家の本宅に訪れた事はないが、規模的に考えて間違いないだろう。


馬車は本宅の大門を抜け、ゆっくりと屋敷へと近づいていく。


「ついた?」


庭園には花が咲き誇り、甘い香りが漂っていた。

それに誘われる様に、寝ていたグレイが目を覚まし鼻をひくひくさせる。


「ああ、もうすぐだ」


邸宅前にはもう一つ門があり、そこを抜けた所で馬車は止まる。

立派な屋敷の前にはずらりと使用人達が並び、その中央に華やかなドレスを着た美しい女性が立っていた。


一見普通の夫人の様に見えるが、その頭部にはネコ科の獣の様な物が生えている。

恐らく、彼女がグレイの姉だろう。


本当にペイレス家は、獣人を娶っているんだな……


グレイがメダリオンを持たされ、迎えが来た時点で間違いない事だと分かってはいた。

だが貴族として育った常識が、獣人との婚姻など本当にあり得るのかと、俺に最後の最後まで懐疑心を抱かせていたのだ。


だがこうやって目の前に付きつけられては、もはや信じざるを得ないだろう。


「グレイ!」


「姉ちゃん!」


馬車から降りたグレイが真っすぐ夫人に突っ込んだ。

凄い勢いだったが、彼女はそれを当たり前の様に正面から受け止めてみせた。


普通の夫人なら吹っ飛んでしまう所だが、獣人だけあって足腰は頑丈な様だ。


「なんで家出なんてしたの!」


「だって……だって姉ちゃんに会いたくて……」


「まったく……この子は……」


姉弟はきつく抱きしめ合う。

周りの使用人達は、その様子を暖かな目で見守っている様に見えた。

彼女は獣人だが、屋敷の使用人達には好意的に受け入れられている様だ。


――ん?


屋敷の扉が開き、中から男性が出て来た。

スーツを着たその体はやせ細り、顔色もひどく悪い様に見える。


何らかの病気だろうか?


そんな男に、気づいた使用人達が慌てて駆け寄った。


「あなた。出て来て大丈夫なんですか?」


グレイの姉が、心配そうに男性に声をかける。

どうやら彼が旦那さんの様だ。

ペイレス家の人間なのだろうが、面識がないので名前は分からない。


「私は大丈夫だ。それより、グレイ君が無事でよかった」


「……」


声をかけられたグレイが、男性を恨めし気に睨みつける。

彼からしたら、大好きな姉を奪った憎い相手なのだろう。

男性は少し困った様な笑みを浮かべてから、俺の方を向く。


「私はケイン・ペイレスと申します。グレイ君を誘拐犯から保護してくださったそうで。本当にありがとうございました」


ケインは確か三男の名前だったはず。


「偶々遭遇しただけですので、そんな畏まって頂かなくとも。どうか頭をお上げください」


少しふらつきながらも深く頭を下げたケインに、俺は顔を上げる様に言う。

どこの誰とも分からない冒険者に頭を下げるあたり、貴族にしてはかなり腰の低い人物の様だ。


――きっとグンラン兄さんあたりなら顏も出さず、使用人から報奨金を渡させるだけだったろうな。


もっとも、兄が特別傲慢なのではない。

貴族としては、そちらの方が遥かに自然なのだ。

そういう意味では、目の前の男は貴族としてはかなりの変わり者と言える。


まあなにせよ、獣人の奥方と結婚している程だしな。


「私からもお礼を。弟の事、本当にありがとうございました」


夫人が頭を下げる。

その腰元には、がっちりとグレイが引っ付いていたままだ。

絶対に離れるまいとするその行動をみて、シスコンという言葉が頭に浮かぶ。


ま、そりゃそうだよな。

出なきゃ、姉に会うために家出なんてしないだろうし。


「パーガン。お客様を屋敷にご案内してくれ」


「畏まりました」


ケインはスーツをかっちり着込んだ壮年の男性――パーガンに指示を出した。

恐らく彼がケイン付きの執事なのだろう。


「軽めの食事を用意していますので、是非召し上がって行ってください」


「いえ、そんな厚かましい真似は――」


「厚かましいなんてとんでもない。貴方はグレイ君の恩人なのですから。どうかご遠慮なさらずに」


「……分かりました。そこまで言われるんでしたら」


少し迷ったが、俺はオーケーを返した。

本邸での食事ではあるが、流石に良く分からん冒険者の混じった席なんかに、当主や他の人間は出て来ないだろうし。


「ではご案内いたします。グレイ様も御一緒にどうぞ」


「やだ。姉ちゃんといる」


執事が声をかけるが、グレイは姉にくっついたまま離れようとしない。


「もう、グレイったら」


「ははは、久しぶりに会って離れたくない気持ちは分かるよ。ミランダはグレイ君についていてあげてくれ」


「すいません」


俺達は執事の案内で客室に通された。

上級貴族が屋敷に来た客を迎え入れる場所だけあって、そこは豪奢な造りをしている。


実家――いや、元実家とは大違いだ。


ジョビジョバ家は武に重きを置く家柄であるため、ありとあらゆるものが質実剛健――要は地味であった。

爵位が上にも拘らず、屋敷の敷地がペイレス家と同程度なのもその辺りが関係している。


「お口に会えばよろしいのですが」


用意されている椅子に腰かけると、目の前のテーブルに紅茶が並べられた。

カップを手に取って一口頂くと、花のいい香りが口の中に広がる。


「凄く美味しいです」


高級な紅茶の味は、貴族として一通り叩き込まれている。

そのため、一口含めばどこの物か俺には直ぐにわかるのだが、今飲んだものは初めての味と香りだった。

おそらく、ペイレス家で作られている流通していないオリジナルの物なのだろう。


「ふふ、良かった。うちで栽培している花で作った物なんです」


俺の向かいには、グレイとその姉であるミランダが座っていた。

俺が美味しいと言ったのを聞いて、グレイがカップを手にとってその中身を一気に飲み干した。


……おいおい。

熱い紅茶を一気飲みとか、豪快過ぎだ。


「不味いよ。これ」


グレイが顔を歪める。

どうやら口に合わなかった様だ。


ま、大人向けの飲み物だからな。

紅茶は。

その良さを理解するのは子供には難しいだろう。


「そのまま飲むからよ。貴方は子供なんだから、蜂蜜かジャムを入れるといいわ」


給餌の女性がすぐさま新しい紅茶を用意し、今度はそれにミランダさんがジャムと蜂蜜をたっぷりと入れる。

こうやって甲斐甲斐しい姿を見ていると、お姉さんというよりはまるでお母さんの様だ。


「美味しい!」


再びグレイは用意されたそれを一気飲みした。

ただし、今度は満面の笑顔である。


「仲がいいんですね」


「幼い頃に母親が亡くなって、それ以来この子の母親代わりをしていたんです。そしたら私にべったりに育っちゃって……もう12歳だというのに、本当に困った子です」


困った子と言う割に、その顔は嬉しそうだ。

本当に仲がいいのだろう。


だからこそ気になる。

大事な弟を保護区に置いて来てまで、このペイレス家に嫁いできた理由が。


それだけ大恋愛だったという事なのだろうか?

だが獣人と貴族とでは、早々顔を合わせる機会などない筈だ。


一体どうやって知り合い、深い仲になったのか……


ちょっと失礼な気もするが、この際聞いてみるとする。

弟さんを助けてお礼に呼ばれてる訳だし、それぐらいの詮索は許される筈だ。

勿論、言葉を濁される様なら、無理に食らいつくつもりはないが。


「えーっと……失礼ですが、ミランダさんはケインさんとどうやって知り合われたんでしょうか?」


「ふふ、やっぱり気になりますよね。獣人である私が貴族であるペイレス家に嫁ぐなんて、余程の事が無いとありえませんもの」


特に嫌がる素振りは見られない。

話題を変える必要は無さそうだ。


「あの人と出会ったのは、今から5年前になります――」



拙作をお読みいただきありがとうございます。


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