第47話 結局
―—王都・ギルドマスター執務室。
「ヤングさんから受けた依頼は、お断りさせていただきました。もちろん、断りは依頼主に納得してもらう形で済ませています」
昨日、俺は円満に――ぐずるリディックをねじ伏せる形で――ドラゴンゾンビ討伐の依頼を断っている。
二人でドラゴンゾンビ討伐などという無謀な依頼を受けるなど、金級冒険者——を前提とした判断――が受ける物ではないと判断したからだ。
たぶん、というか間違いなくこれで会ってるはず。
まあ万一間違ってたら、大幅減点だろうが……
「……正しい判断です。金級以上の冒険者には、確実なクエスト達成が求められます。無茶な依頼を受けて失敗する事は元より、依頼で命を落とす事もギルドにとっては望ましくありません。まあもちろん、人の命がかかっている様な緊急性の高い物は除いて……ですがね」
ヤングさんがにっこりと笑う。
「因みに……この冒険者ギルドの基本理念を、シビックさんはご存じですか?」
「いえ……お伺いしても?」
冒険者ギルドに所属している身ではあるが、基本理念とかそういった物は良く知らない。
一応、ギルドについては入る前にある程度下調べをしてはいるが、そういう情報は手に入っていない。
「冒険者は冒険しない……ですよ」
冒険者は冒険しない。
なんというか……冒険者って呼称を、全否定する理念だ。
リスクを承知で、危険な仕事を請け負う。
それが冒険者である。
冒険しないってなると、危険な仕事は一切受けないって事をになるんだが……ああ、そういう意味か。
「危険な仕事を受けるからこそ、万全を喫しろって事ですか」
「ええ、そうです。危険に身を置く仕事だからこそ、万全の準備の下、安全に仕事を行う。それこそが、このギルドが所属する方々に求める理想の形になります。そしてそれを体現するのが……金級以上の上級冒険者という訳ですね。彼らは、ギルドの顔みたいなものですから」
「難しい注文ですね」
言うが易し。
である。
等級に見合ったクエストは、どれも簡単に熟せるような物ではない。
だからと言って、難しい依頼を避け続ければ、ギルドの顔たる金級の名折れとなる。
冒険者ギルドも、そんな臆病者を金級に上げたりはしないだろう。
高難易度のクエストを受け。
その上で安全確実。
二律背反に近い条件を達成できる冒険者を、ギルドは求めているのだ。
そしてそれを実現できる人物を精査するのが、金級昇格の試験という訳である。
「ま、所詮理想論ではありますがね。なので、出来る物とできない物を正確に判断し、はっきりと依頼を断る能力も必要になる訳です。もちろん、可能な限り依頼主と揉めない形で……ではありますが。単にノーを突き付けるだけなら、誰にでも出来ますからね」
「なんでも完ぺきに熟せるようなら、それこそ白金級でしょうからね」
白金級は、国から騎士として爵位を与えられ、召し上げられるレベルだ。
そして平民が爵位を与えられるなど、それこそ英雄級の活躍でもしない限り起りえない。
つまり、白金級は、不可能を可能にするレベルの超人って訳である。
「ははは、そうですね。でも……シビックさんなら、いずれ白金級にまで届くんじゃないかと、ちょっと期待していたりします」
ギルド長は期待してくれているようだが、もちろん俺にそんな力はない。
結構やる方だという自負はあるが、それでも英雄レベルとなると、さすがにちょっとな。
グンランやアグライ兄さんなら、白金に上がる事も可能なんだろうが……
あの二人の強さは、図抜けている。
強さを貴ぶジョビジョバ家の歴史においても、あれだけの力を持つ人間はきっと数えるほどしかいないだろう。
それぐらい強い。
「精進します。あ、それとなんですけど」
「なんでしょう?」
「少しの間王都から離れますんで。試験の続きを受けるのは少し先になりそうです」
試験は一旦休止だ。
まあそれ程長く離れる訳ではないが、ヤングさんは優先して俺に試験を回してくれているみたいなので、一応伝えておく。
「おや、そうですか。王都を離れる理由をお伺いしても」
「……」
理由か……
誤魔化す事は出来る。
だが、誤魔化してもきっとそのうちばれるだろう。
俺がジョビジョバ家の人間だって事さえ、事前に掴むような情報網がある訳だからな。
「フォンハイム侯爵領に行こうかと思ってまして」
「ほう。フォンハイム領にですか?」
「ええ。そこでリディックと二人で……ドラゴンゾンビを個人的に狩ろうと思っています」
「——っ!?」
俺の言葉にヤングが顔を歪める。
まあそりゃ驚くだろう。
無茶な依頼だからと断っているのに、個人的にドラゴンゾンビを狩りにいくなんて言われれば。
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