第29話 超回復
「なるほど……」
カローナ夫人にペシアスを使わせるという案。
最初言われたとき何言ってんだコイツはって思ったが、詳しく話を聞かされ納得する。
ペシアスの力を使えば、使用者は爆発的な力を得る事が出来る。
青瓢箪の呪術師が、殴り合いで敵を制圧出来てしまう程の力が。
だが、その効果は単に力が強くなるだけではない。
超人的な生命力と回復力に加え、人を越える免疫力を得る。
正に超人化と言っていい。
ペシアス曰く。
頭部と心臓さえ無事なら、それ以外粉々になっても問題ないレベルだそうだ。
「そいつの寿命はかなり減るだろうが、死ぬよりはましだろう?」
重い病気なんかの場合は、克服するのに多少時間が必要になるそうだ。
なので、短時間だけ発動させて効果を切るという方法では駄目らしい。
また、完全に治癒する前に辞めてしまうとぶり返す可能性が高いので、やるなら回復しきる必要があるとの事。
因みに、回復にかかる時間は病気次第だ。
「確かに、死ぬよりはましだな」
俺の寿命は減らないし、カローナ夫人は結果的に寿命が延びるのだから万々歳だ。
悪くない。
唯一問題点があるとすれば、それを男爵に了承して貰えるかどうかって点だな。
この球は悪魔の力を源泉としたアイテムだ。
そんな危ない物、夫人に使う事をあっさり了承してくれるかどうか……
「ま、断られたら断られたでその時はその時か」
こちらはあくまでも善意の提案だ。
相手が断ったなら、それは相手側の問題である。
赤の他人の俺がそこまで考える必要はないだろう。
……俺は自分を犠牲にして他人を救う聖人君子じゃないからな。
「さて、じゃあ……」
部屋を出て、俺はケインさん達を訪ねた。
俺が直接行っても門前払いされる可能性が高いからな。
手柄を立てたとはいえ、こちらは平民だし。
「本当か!?是非頼む!!」
ケインさんに説明し、そして彼からカナン男爵に説明して貰ったらすんなりと話が通った。
悪魔由来の力であることもちゃんと説明してあるので、断られる可能性が高いと考えていただけに拍子抜けである。
「正直……治るという絶対の保証はありません。それでもかまいませんか?」
病気の中には、どれだけ生命力と免疫力を上げても治らないものがある。
そういった類の病気出会った場合、無駄に寿命を減らすだけになってしまう。
なので、俺はその点をダメ押しする様に聞く。
後々「寿命だけ減ったじゃねーか!」的な事を言われても敵わないからな。
「あいつの命はもう長くはない。生きられる望みがあるなら、それにかけたい。妻もきっと拒否はしないだろう」
「わかりました」
話が纏まったので、俺はカナン男爵と共にカローナさんの治療へと向かう。
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