第28話 回復方法
「悪魔のお前がエリクサーと同じような能力を持ってる?そりゃなんの冗談だ?」
悪魔とか、癒しや回復からもっとも縁遠い存在だ。
そいつにエリクサー並みの回復能力があると言われれば、訝しまないわけがない。
なので俺はスキル【ズル】を発動させる。
ペシアスが嘘を吐けない様に。
「自然や世界の調和を尊ぶ神と違って、我ら悪魔は目的のためなら何でもするからな」
「その口ぶりだと、神がいる様に聞こえるんだが?」
宗教はあるし、その中では神が降臨した云々の伝承もあると聞く。
だが、今の世にそれを実際に目をした人間はいない。
神の奇跡なんて遠い昔の話で、少なくとも俺の耳には入って来ていない。
ので、俺は神の存在何てものを信じてはいなかった。
ひょっとしたらかつてはいたかも?
ぐらいだ。
「いるさ。もっとも、神は人の前に顕現する様な真似はしないがな。神が降臨するという事は世界の在り様や運命を歪める事になる。だから、よっぽどの事が無い限り奴らは世界に干渉しない」
スキルを使っているので、嘘ではない筈だ。
つまり、神は本当にいるって事になる。
まあ、勘違いや思い込みってものもあるので、嘘じゃないだけで、ペシアスが神はいると思っているだけの可能性もあるが。
「まあ神の事はどうでもいいだろう。我の目的は人間から生命力を頂く事だ。その目的の為なら、神様変わりだってなんだってしてやろうというのだ」
人様の生命力を手に入れる為なら何でもする……ね。
まあ悪魔らしいっちゃ、悪魔らしいのか。
「ふむ……そうとう重い病気だけど、本当に治せるのか?」
貴族が手を尽くして駄目なレベルだ。
簡単に治せるものじゃない。
なので、意気込みさえあればどうとなるものではないのだ。
「安心しろ。死んでさえいなければ、どんな病気でも治してやる。なにせ我煉獄13柱が1柱、ペシアス様なのだからな」
【ズル】を使っているので嘘は吐けない。
なので、本当にどんな病気でも治せるのだろう。
それは朗報なのだが……
「お前に頼んだ場合、どれだけの対価が必要になるんだ?」
そう、問題は対価だ。
奴が求めてるのは生命力だろうが、どの程度取られるかで話は変わって来る。
「そうだな……10年分の命を頂くとしようか」
「却下」
ペシアスの要求に、俺は光の速さでノーを突き付ける。
「救いたいんじゃないのか?」
「もちろん、救える者なら救いたいさ」
「なら、なぜ断る」
「そんなに親しい相手じゃないからな。流石に、自分の寿命を10年削ってまで助ける気にはならないさ」
助けたいとは思う。
だが、10年は流石に支払えない。
親しい間柄でも迷うレベルなのに、初対面の相手に誰が寿命10年も捧げるというのか?
まあ奇特な善人ならそれでもと思うのかもしれないが、俺は残念ながら聖人君子じゃないからな。
10年は絶対無理。
「病気を治せば、相手が余程高齢でない限り10年以上は生きる。十分お得な取引だと思うがな」
「単純な計算で言うならそうだな。けど、通常、自分の命と他人の命は等価じゃない。悪魔ならその辺り、良く分かってるんじゃないのか?」
「くくく。人間の中には飛んでもないお人よしがいるが、どうやらお前はその類ではない様だな」
「俺が善人なら、さっさとお前の事を処分してるさ」
「確かにそうだな……まあいい。お前の命を使って病気の回復が嫌なら、別の方法があるぞ」
「別の方法?」
「そうだ。お前の命には何の影響もない方法だ」
俺の寿命を取らずに、悪魔がボランティア宜しく病気を治すってのか?
果てしなく胡散臭い言葉だが、スキルを発動しているので嘘はないはず。
「言ってみろ」
「くくく……なに、簡単な事だ。その病人に、我の力を使わせればいい」
病人にペシアスを使わせる。
奴は楽し気に俺にそう告げた。
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