番外編 湘北モーターズ
水戸洋平は高宮望、大楠雄二、野間忠一郎と4人で立ち上げたバイク修理業者、「湘北モーターズ」に心血を注いでいた。
湘北高校のOBである彼らが、かつての自分たちのようにバイクを愛する若者たちの力になりたいと始めた事業だ。
彼らの高い技術力と、何よりも顧客への丁寧な対応が評判を呼び、湘北モーターズは地域で一目置かれる存在となっていた。
そんな湘北モーターズの顧客の中には、三井寿の姿もあった。
現役引退後もバスケに携わりながら、趣味として大型バイクに乗っている三井は、エンジンの不調を感じるたびに湘北モーターズを訪れていた。
「よう、ミッチー。今日も絶好調ですね!」
洋平は慣れた様子で三井に声をかけると三井も「おう、洋平。いつも助かってるぜ!」と、信頼を寄せる笑顔で答える。
そして、三井の親友である堀田徳男と鉄男らも、もちろん湘北モーターズの常連だった。
彼らは三井とは異なるタイプの、昔ながらの改造バイクを愛用しており、エンジンの調整からカスタムまで、すべて湘北モーターズに任せていた。
「洋平、この前のパーツ、最高だったぜ! 音が全然違う!」
鉄男が興奮気味に話しかければ、洋平はニヤリと笑い、「ありがとうございます、鉄男さん。光栄です!」と、丁寧な言葉で応える。
プロバスケ選手を引退した桜木に新たな道を示した洋平は、彼ら自身の得意分野で、それぞれの形で社会に貢献していた。
山王戦の古傷は、確かに桜木からバスケ選手としての未来を奪った。しかし、それは同時に、彼に新たな「才能」と「情熱」を見出す機会を与えたのだった。
桜木花道は、プロデュエリストとして、再び輝かしいキャリアを築き始める。
その瞳には、バスケ選手だった頃と同じ、勝利への強い輝きが宿っていた。
そして、彼の周りには、それぞれの場所で輝き続ける親友たちの姿があった。