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勝負の行方と新たな抱負

デュエルは、まさに息をのむ展開となっていた。

桜木は、河田の鉄壁の守りを前に苦戦を強いられながらも、持ち前の「諦めない心」で突破口を探し続けていた。彼の脳裏には、バスケで培った経験と、何よりも「天才」としてのプライドが燃え盛っていた。

「くそっ、あと一枚、あと一枚だけ、突破口となるカードが引ければ…!」

桜木のデュエル盤を睨む目は、まるで獲物を狙う猛獣のようだった。

その時、彼の指が、まるで意思を持つかのようにデッキの一番上のカードに触れる。

「ドロー!…来たぜ、とっておきの一枚が!」

桜木が引いたのは、まさしく彼が待ち望んでいたカード、『炎星侯-ホウシン』だった。

「天才は、ピンチの時こそ本領を発揮するんだよ、丸ゴリ! 『炎星侯-ホウシン』を特殊召喚! そして、その効果でデッキから『炎舞-「天枢」』を手札に加える!」

河田の顔に、わずかな動揺の色が浮かんだ。

しかし、彼はすぐに冷静さを取り戻し、盤面を分析する。

「うはは…面白い。だが、その程度の展開で、この鉄壁を崩せると思うのか?」

河田の言葉に、桜木はニヤリと笑った。

「舐めんじゃねぇぞ、丸ゴリ! これが天才の連携プレイだ! 『炎舞-「天枢」』を発動! さらに手札から『炎星師-チョウテン』を特殊召喚!」

連続するモンスターの展開に、会場のボルテージは最高潮に達する。

実花は目を輝かせ、「パパ、すごい!」と叫び、智晴と正晴も「やるじゃん!」「すげー!」と珍しく素直な言葉を漏らした。

「さぁ、ここからが本番だ! 『炎星師-チョウテン』と『炎星侯-ホウシン』をチューニング! 天才の閃きが生み出す新たな力、シンクロ召喚! 現れろ、『灼熱の炎星士-セキト!』」

桜木のフィールドに、攻撃力3000を誇る新たなエースモンスターが降臨した。

「『灼熱の炎星士-セキト』の効果発動! 手札の『炎星』モンスターを墓地へ送って、相手フィールドの魔法・罠カードを全て破壊する! 行くぜ、『魔封じの芳香』、そして『スキル・ドレイン』も、まとめて吹き飛べ!」

桜木の切り札が放たれた瞬間、河田のフィールドを覆っていた堅固な防御網が、一瞬にして崩壊した。

河田は顔色一つ変えず、しかしその目には、わずかな驚きの色が宿っていた。

「ふむ…見事な一手だ、花道。だが、これで終わりではないだろう?」

「当たり前だろ! 天才のデュエルは、こんなもんじゃねぇ! 『灼熱の炎星士-セキト』でダイレクトアタック! そして、墓地に送られた『炎星』モンスターの効果で、さらに追撃だ!」

桜木の猛攻は止まらない。

河田のライフポイントは瞬く間に削られ、ついにゼロとなった。

「デュエル、エンド! 勝者、桜木花道!」

審判の声が響き渡ると同時に、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれた。

桜木は、勝利の雄叫びを上げ、両腕を天に突き上げた。

「やったぜ、オレは天才だぁぁぁーっ!!」

桜木応援団も大興奮だ。

実花はぴょんぴょん跳ね上がり、智晴と正晴はガッツポーズを連発していた。

河田は、静かにデュエル盤から手を離し、桜木の方へ歩み寄った。

そして、その表情には、敗者とは思えない穏やかな笑みが浮かんでいた。

「…やるでねか、桜木。お前の瞬発力と、土壇場でのひらめきには、いつも驚かされる。」

河田の言葉に、桜木は照れくさそうに頭を掻いた。「へっ、まあな! オレは天才だからな!」

河田は小さく笑い、「しかし、お前のデュエルは、バスケと何ら変わらないな。泥臭く、しかし最後には必ず勝利を掴む…それがお前の強さだな。」と続けた。

桜木は、河田の言葉に真剣な眼差しを向けた。

「丸ゴリもな。お前の『クリフォート』デッキ、まるで鉄壁のディフェンスだ。バスケやってた頃のてめぇを見てるみたいだったぜ!」

二人は、がっちりと握手を交わした。

そこには、かつてのライバルとしての敬意と、新たな舞台で互いの力を認め合う、清々しい空気が満ちていた。

その時、二人のもとへ、一人の男が駆け寄ってきた。大会運営のスタッフジャンパーを脱ぎ捨てた相田彦一だった。彼は、高校時代と変わらない、あの独特の関西弁で捲し立てる。

「桜木さん! 河田さん! いやー、すごかったっすわ! まさに山王戦の再来! 最後の桜木さんは、あの海南戦での逆転シュートを彷彿とさせる、まさしく奇跡の一手でしたで!」

彦一は、興奮冷めやらぬ様子で、二人を見上げていた。

桜木は、彦一の顔を見て懐かしそうに笑った。

「おう、彦一! てめぇ、今日は大会の解説だったのかよ!」

「そうなんですよ、桜木さん! でも、このデュエルだけは、解説なんてしてる場合ちゃいましたわ! 思わず声が出そうになって、周りに止められましたもん!」

河田も、彦一の登場に驚いた顔をしながらも、柔らかな表情で言った。

「相田君か。まさか、君がこの大会の運営にいるとはな」

「河田さん! お久しぶりですわ! いやー、お二人のデュエル、ホンマに感動しました! 昔、海南の牧さんとウチの仙道さんが『天才』って言うてたけど、桜木さんのデュエルはまさにそれでしたわ!」

彦一は、まくしたてるように話し続ける。

「河田さんも相変わらずのクレバーさで、どんな状況でも冷静に判断する。まるでバスケでパスをさばく時と一緒ですわ! でも、桜木さんは、あの天性の嗅覚と爆発力で、まさかそこをこじ開けるとは! やっぱり『天才』は、常識を打ち破るんですねぇ!」

桜木は、得意げに胸を張った。

「当然だろ! オレは天才だからな!」

彦一は、両手を広げて言った。

「ホンマに、お二人のデュエルを見て、わいもまた熱いもんが込み上げてきましたわ! バスケットボールは引退しても、こうやってまた新しい舞台で輝いてる。これこそ、スポーツマンシップの真髄ですわ!」

河田は、彦一の熱い言葉に深く頷いた。

「確かに。デュエルはバスケとは違うが、勝負に挑む心構えや、相手を読み、最善の一手を打つという点では、共通するものがある。そして、何より…楽しかった」

桜木も、河田の言葉に同意するように言った。

「ああ、そうだな。最初は遊びのつもりで始めたが、ここまで熱くなれるとは思わなかったぜ。てめぇとデュエルできて、最高だったぜ、丸ゴリ!」

彦一は、二人の言葉を聞いて、さらに目を輝かせた。

「お二人とも、まだまだ高みを目指せる! わいは、これからもお二人の活躍を応援してますわ! そして、いつかまた、こうやって新しい場所で、お二人が頂点を極める姿を見られることを、心から楽しみにしてます!」

彦一の言葉に、桜木と河田は顔を見合わせ、そして同時に力強く頷いた。

「おう、見てろよ彦一! オレはこれからも、どんどん強くなって、誰も寄せ付けねぇ真の天才になってやる!」

「ああ。俺も、デュエリストとして、さらなる高みを目指していこう。そして、いつかまた、桜木にリベンジをしてやるさ。」

三人の男たちは、それぞれ異なる道を歩みながらも、互いの情熱と向上心を再確認し、熱い友情を胸に、それぞれの「高み」へと向かっていくことを誓い合った。

彼らの物語は、まだ始まったばかりだ。


しかし、今回は桜木が大会を制することはなかった。

河田との死闘に全てを出し尽くした桜木は、続く決勝戦、ウソのようにボロ負けした。

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