焦る長丁場のデュエル
「キングス・カップ」準決勝、桜木花道VS河田雅史。
デュエル開始前、桜木はいつものように河田を挑発していた。
「おい、丸ゴリ! NBAをクビになって、今度はカードで飯食うのか? バスケもできねぇ、デュエルも雑魚の二流選手だな、ふん!」
河田は表情一つ変えず、静かにデュエルディスクを装着する。
「お前も、引退した元プロだろ。」とだけ呟いた。
その冷静な態度に、桜木は少し拍子抜けしたが、内心では「まあ、どうせオレの圧勝だ!」と高を括っていた。
しかし、デュエルが始まると、桜木の予想は大きく裏切られることになる。
予想外の「しぶとさ」。
河田のプレイングは、桜木の想像を遥かに超えていた。
彼のデッキは、一見すると派手さはないものの、どんな状況にも対応できるような、隙のない構成だった。
桜木の得意な速攻を、河田は堅実なモンスターとトラップカードでいなし、じわじわとライフポイントを削ってくる。
「ちっ、しぶといぜ、丸ゴリ!」
桜木は舌打ちをした。
普段ならあっという間に相手を圧倒する彼が、なかなか決定打を与えられない。
河田は常に冷静で、桜木の行動の裏をかくようなプレイを続けてくる。
「そのモンスターを出すと、次のターン、こちらの動きを封じられる…読みが深すぎる!」
桜木は焦り始めた。彼の強みである「天才的なひらめき」も、河田の計算し尽くされたデッキとプレイングの前では、なかなか通用しない。
バスケの試合で、何度となく河田に阻まれた記憶が蘇る。
あの時も、彼の予測不能な動きと、全てを支配するような存在感に、桜木は苦しめられた。
デュエルでも、同じ状況に陥っている。
デュエルは、あっという間に中盤に差し掛かった。
互いのライフポイントは、まだ大きくは減っていない。
大会会場では、長引くデュエルに、観客たちの興奮が高まっていた。
「こんなに接戦になるなんて…河田選手のデュエル、まるで壁のようだ!」
解説者がそう呟くほど、河田の防御は鉄壁だった。
桜木は、何度も攻め手を繰り出すが、その度に河田の巧妙な反撃に遭い、ライフポイントを少しずつ削られていく。
「くそっ、あと一歩が届かねぇ…!」
焦りが募る桜木は、ついにミスを犯してしまう。
不用意に繰り出したモンスターが、河田の罠カードによって破壊され、手札を消耗してしまったのだ。
「…無駄な動きだ、桜木。」
河田は淡々と言い放つ。
その言葉が、桜木のプライドをさらに刺激した。
「うるせぇ! オレは天才だ! こんなところで負けてたまるか!!」
桜木は、呼吸を整え、再び盤面を見つめ直す。このデュエルは、かつての山王戦のように、彼が自分の限界を超えなければならない状況に追い込まれていた。
長丁場のデュエルは、体力だけでなく、精神力も削っていく。
しかし、桜木は諦めなかった。
彼の瞳には、かつて「リバウンド王」としてコートを支配した時と同じ、獰猛な光が宿っていた。
「丸ゴリ…てめぇがどれだけしぶとくても、オレは必ず勝ち越す! これが、天才のやり方だ!」
果たして、桜木は河田の鉄壁の守りを打ち破り、勝利を掴むことができるのか。
そして、河田は、NBAを引退し、デュエル界に身を置くことになったその真意を明かす日は来るのだろうか。
二人の宿命の対決は、まだ終わらない。