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〜第五楽章〜 魔法の宝石

第5話です。

もともと地図の挿絵を入れるはずだったのが、しくみとかわからんすぎて入れられませんでした。なので超わかりにくいです。すみません。

 おおかみ男のルイとつくも神のバリオスは、夜の森を歩いていました。

 ゴブリンのおばあさんの家を離れ、モンステラ王国へと向かっている途中です。

 二人で歩きながら、バリオスはルイの話を聞いていました。

「……へえ、人間の王女さまを救いに、か。おれを一番最初に使ったひとも、そんなこと言ってたなあ」

「そうなんだ」

 ルイはバリオスのきれいな顔を見上げます。彼は一体、どれだけの冒険をしてきたのでしょう?

 そう考えていると、ふいにバリオスがにやりといたずらっぽく笑いました。

「そうだ。もしかしてそれ、初恋ってやつ?」

「初恋!?」

 ルイは思わず目を瞠りました。

 初恋って、恋のこと。

 恋の話は、フェリネから聞いたことがあります。いちごみたいにあまずっぱい気持ちのことで、会えないとさみしかったり、些細なことでどうしようもないほどドキドキしたり、なんてそんなことがあるようです。

『わたし、どこか東のほうのひと……モリ・オウガイ……だったかしら?とにかくそのひとが昔書いたやつが大好きで!“舞姫”っていうんだけど、外国まで勉強しに行ったお医者さんがその外国のひとと恋に落ちる話なの!もうほんとに大人の恋って感じでドキドキしちゃって────』

 なんて、フェリネが雄弁に語っていた気がします。

 まあ、この内容を覚えていたのが奇跡なくらい、その話はよくわからなかったけれど。ただ楽しそうだからうんうんと相槌を打っていただけだったような。


 フェリネを助けに行きたいのは、彼女に恋をしているから、なのでしょうか……?


 少し考えて、ルイは首を振りました。

「……ううん。たぶん、違うと思う。たしかにフェリネのことは好きだけど、ドキドキはしない。会えなくてさみしいけど、それは友達だからなんじゃないかな。あまずっぱい気持ちもよくわかんないし」

 フェリネが言うには、恋をしていると笑顔を思い浮かべただけで心臓がばくばくしてくるようです。ルイはフェリネの輝くような笑顔をあざやかに頭に思い浮かべることができるけれど、じゃあドキドキするのかって言われると、しません。全くと言っていいほど。

 そう言うと、バリオスは「ふーん。つまんねえの」と尻尾を揺らしました。

「まあ、坊っちゃんはまだお子ちゃまだからな。わかる日はまだ先か」

「なんだと!」

「はいはい、もう夜だ。さわぐと魔獣が出るぞ」

「だれのせいだと……!」

 両手をぎゅっと握って憤慨するルイをちらりと見て、バリオスはくるりと宙返りをしました。

 一瞬で真っ白い毛の美しい馬が現れます。ルイのコートにつけられた刺繍の馬と全く同じ姿です。

 バリオスはいつもは人間────というか馬の魔物────の姿ですが、こうしてただの馬になることもできるのでした。

「ほら、背中に乗せてやっから。もう遅いぞ、寝ろ」

 わずらわしそうに、バリオスが片耳を揺らしました。


 ◇◇◇


 そうして、ときには眠ったり食事をとったりもしながら森の中を歩き。

 二人はついに、国境にたどりつきました。

「長かったあ……」

 ルイはしみじみとつぶやきました。

 別に、前フェリネとの待ち合わせ場所にしていたユキノヒ森を通って行くこともできたのです。あの森も、モンステラ王国につながっているから。あの方が近道だし、よく見知った道だから変なひととか────そう、あのゴブリンのおばあさんのようなひともでくわずに済んだのです。

 しかしそれは『行くことができる』だけで、『安全に行くことができる』とは言いがたい考えでした。

 モンステラ王国側も、あの森の近くで自国の王女が魔物と仲良くしていたことを知っています。当然、また現れると予想してわなを張るわけです。人間よりも複雑で強い魔法を使う魔物のルイであろうとも、その道を通るのはあまりに危険すぎました。

 だからルイは、わざわざ遠回りをして森を歩き、やっと国の境へとたどりついたのです。

 国境には、魔法でつくられた鳥がとまっていました。門番です。

 ぐるりと大きな瞳でこちらを見た鳥は、ばさばさとつばさをはためかせて聞きました。

「パスポートヲオ見セクダサイ」

 まるでロボットのような口調です。

(パスポート)

 じいちゃんに持っていけって言われたんだった。忘れてたら国に入ることもできずに追い返されてたよ。危ない危ない。

 ルイはポケットから小さな紙切れを取り出しました。バリオスはただの馬としてルイのすぐとなりに立っています。

 馬にパスポートはさすがにいらないので、鳥はルイのパスポートだけを見ました。大きな瞳をぐるぐる動かして、にせものかどうかを見きわめて────

 そして、鳥は片方のつばさを持ちあげました。


「ドウゾ」


 その言葉を合図に、見えない結界が解けて道が示されました。

「ありがとう」

 ルイは感謝の代わりにパンを一切れ鳥にあげて、バリオスにまたがりました。

 一歩、国境を越えて。モンステラ王国に入ります。


 もう、引き返せません。


「オ気ヲツケテ!ヨイ旅ヲ!」

 パンをあげたのがよかったのか、鳥が元気にそうさえずりました。





 いよいよ二人は、モンステラ帝国に入りました。

 二人の立つ町は、ヴェリア王国とモンステラ帝国の境目の町アークノース。そこの商人から地図を買って、レンガの道を二人で歩きます。

「いやあ、それにしても、けっこうきちんと手順ふんでから国に入るんだな。お前のじいちゃんはあんなとこすっ飛ばして、思いっきり不法侵入してたぞ」

 バリオスが黒い瞳をこちらに向けます。ルイはあきれて耳を揺らしました。

「当たり前でしょ。ただでさえ、ぼくは魔物でここには来ちゃいけないんだから。これ以上危ないことできないよ」

 不法侵入なんてとんでもありません。これ以上後ろめたいことは増やせないルイでした。

 しかしバリオスはどうやらスリルを求めたいようです。軽く鼻を鳴らしました。

「ふーん。びびりなお子ちゃまだ」

「きみは黙ってて」

 びびりで何が悪い。冒険者みんなが向こう見ずだと思うなよ。

 そうルイはぴしゃりと言いました。

 気を取り直して、これからの話にうつります。

「それよりも。これから、どうやってパルゲリア島まで行くか決めなくちゃ。せっかく地図も買ったんだし」

 ルイは手元の地図を見下ろしました。羊皮紙でできた地図は、茶色い字でモンステラ帝国のおおまかな様子が描かれています。

 真ん中にある大きな都市が、王さまのいる王都シュトルゲル。それを囲むようにして大小さまざまな町が配置してあります。

 バリオスも馬から人間の姿になり、耳と尻尾を消してから地図をのぞき込みました。

「ほう。パルゲリア島ってのはほんとにはじっこだな。……ちょっとそこで、作戦会議するか」

 バリオスは少しうなって、すぐそばのベンチを指さしました。ルイも頷き、地図をくしゃくしゃにしてしまわないよう優しく抱えなおしました。

 二人でベンチにこしかけ、地図を広げます。

「そうだな……まず一番は、この王都は通らないほうがいい。危険だ」

 バリオスは王都シュトルゲルを指さしました。ルイも頷きます。

「うん。でも、遠回りもしたくないな。なるべく早く、助けに行きたいんだ」

 ルイはそううったえます。フェリネはみんなから嫌われる恐ろしい魔物と仲良くしてしまった人物。今に、痛い思いや苦しい思いをさせられているかもしれません。

 それを知っているバリオスは頷いて、どこからか赤いペンを取り出しました。

「そうか。……じゃあ、こんな感じで行くか」

 ぴっと勢いよく、線を引きます。

 まずこのアースノークから、となりの町ルーネンへ。ルーネンは、野生動物の町。町のほとんどがサバンナでひともあまりいないこの町は、モンステラ帝国の中でも特に魔獣の多い町です。雷獣グンバや毒蛇アスプなどがたくさんいるんだとか。

 それから進んで辿り着くシュウチュンは、紅に染まる(はな)の町。スパイスの聞いた鶏肉やひき肉をもちもちの皮に包んだおまんじゅうなどが有名な食べ物の町です。魔獣は少ないですが、ルイたちの敵は魔獣だけではありません。

 そこを抜ければ、和の町コトブキ。どことなく派手な他の町とは少し違う、それそのものの雅さを大事にする町です。大人しくも礼儀正しいひとが多く、魔獣も少ないようです。ここは休憩地点にしてよいでしょう。

 その次は娯楽の町アルレイト。サーカス団や移動遊園地などが集まる、にぎやかな町です。ここはお金をたくさん使ってしまいそう。気をつけなくてはいけません。

 それから、この町の真北は王都です。あまりにはしゃげば、王家の誰かに気づかれてしまうかもしれません。なるべく早く去るのが吉でしょう。

 そのあとに続く、不思議の町ハルリダ。町全体に不思議な魔法がかかっていて、旅行に行ったひとは思わぬ目にあうそうです。まあ、それが面白いと人気の場所ではありますが。ちなみにその魔法、町民には効かないようです。

 そして陸地は最後、一番北の町シルタンです。その寒さと言ったら、この町のさらに北のほうでは夏でも常に雪が降っているほど。住むひとも少なく、ワイバーンやキマイラが暮らしているといいます。

「これでスピカ海をわたれば、やっとパルゲリア島……か。長いなあ」

 ルイは赤い線をたどり、小さくため息をつきました。

「しゃーねえだろ、この国でけえんだから……ヴェリア王国もでけえけどな」

 バリオスががりがりと頭をかきました。

(でも)

 ルイは赤い線の引かれた地図を見つめます。どの町もそれぞれ違って、どの町もとっても楽しそうです。

(わくわく……)

 口に出すのは恥ずかしくて、心の中でそっとつぶやきました。




 地図も手に入れたところで、さっそく最初の町ハプトへ向かうべく二人はアークノースの出口まで歩き出しました。

 と、一人の商人が声をかけてきました。

「おや、少年。りっぱなお馬さんまで連れて、冒険かい?」

 優しそうなおばさんです。冒険に出てから初めて人間に話しかけられた、とどきどきしながら、ルイは頷きました。

 とたん、そのまんまるい顔がにこっ、と笑顔に変わりました。

「そうかい!じゃあ、うちのお守りを買っていかないかい?」

「お守り?」

 ルイは少し目を丸くして、その屋台に並ぶ商品を見つめました。

 並んでいるのは、色とりどりの石。魔力を感じるあたり、ただのきれいな石というわけではなさそうです。

 おばさんはにこにこと説明してくれました。

「これは『けもの石』。世界でもこのあたりでしか採れない、貴重な魔法石さ。一つにつき3回だけ、この石を空に投げると魔獣が現れて自分を守ってくれる」

「へえ」

 だから、お守りなのか。動物が出てきて守ってくれるから。

 ルイはおばさんを見上げます。

「出てくる生き物は決まりがあるんですか?」

「いや、人それぞれさ。人間が加工してるわけじゃないからね。でもこっちにおそいかかってくることはないから、それは安心しとくれよ」

 おばさんはそう答えました。

 ルイは少し考えて、買うことに決めました。少しお高いものの、お守りはあって困るものではありません。あんまりたくさんあると、神さまがけんかしてしまうなんて聞くときもあるけれど、まあ大丈夫でしょう。そう思ったのです。

「……おれだって、つくも神だ。神さまじゃないか。おれじゃ不満なのか」

 バリオスはそう言って少しすねていたけれど。

 ルイは屋台に並ぶ宝石を眺め、自分の瞳のあざやかな青とフェリネの瞳のおだやかな緑が混ざったような美しい石を選びました。

「まいどあり。あんまりむやみに使うんじゃないよ」

 金貨を渡すと、おばさんはそう言って豪快に笑いました。




 さあ、お守りを手に、二人はアークノースを後にしました。

 平和な町はもうおしまい。


 魔獣のいる草原の町へと、二人は飛び込みます。

わかりにくかったでしょ?

これだと作者も書くのむずいんで、ルイたちのルートをここに示しておこうと思います。ネタバレはないです。忘れたら見返して。


最西端の町・アークノース(出発!)

 ↓

野生の町・ルーネン

 ↓

中華の町・ショウチュン

 ↓

侘び寂びの町・コトブキ

 ↓

娯楽の町・アルレイト(この真北に王都シュトルゲル)

 ↓

不思議の町・ハルリダ

 ↓

最北端の町・シルタン

 ↓(スピカ海をまたぐ)

牢獄の孤島・パルゲリア(到着!)


参考にしてください。わたしもしますんで。

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