第四話 緒戦
第四話 緒戦
一回戦東1局 ドラ七万 親 小野寺(守一)
背中越しでも分かる。生身の体で感じる牌の感触を味わう守一の喜びが。頼む、どうにか勝ちきってくれ。先ずは配牌だ。
一一ニ伍1589③④⑦⑨東中
(なかなかの悪配牌か??ドラも赤もない。字牌から払っていってテンパイできれば上出来といったところ。第一打は中かな?)
薫の予想とは裏腹に守一の第一打は8ソー。
(分からない。字牌は絞るってことなのか? それともテンパイは諦めて配牌オリ?)
九巡目、ツモに恵まれあの手牌がテンパイする。
一一ニ三伍345③④⑤中中 ツモ一
(なんてこった。俺じゃ絶対テンパイできてない。中も見えてないしサンメンチャンでリーチだ!)
「リーチ」
守一の発声と共に打牌の音がし、リーチ棒が放たれた。しかし河を見て薫は愕然とする。それは河で曲げられたのは二マンだったからだ。
(そんな! 親なんだからアガリ辛いカンチャンなんかよりサンメンチャンで確実にアガリ取りに行かなきゃ! 雀歴60年だかなんだか知らねえけど話にならないよ!)
「おい守一!ふざけてんのか!?真面目にやれよ!後がねえんだぞ!俺たち!」
守一は後ろをチラッと向いて苦笑いするとセブンスターに火をつけた。するとトイメンの石塚から中がトイツで払われる。
(あーあ、言わんこっちゃない。サシウマ相手からデバサイ打ち取れてるよ。もう我慢できない)
「守一。交代しよう。トイレ代走頼め」
守一は首を振る。そのまあ見とけって言ってるような背中のオーラだけは一流だ。
流局間際。守一のラスヅモ。
「カン!」
「一マンのアンカン、新ドラは...一マン......」
トイメンの石塚の顔が引きつった。
(おいおい。まさか!?)
「バッチーン! ツモ!」
20年分の思いと四マンがアルティマの縁枠にぶつけられる。
「リーヅモ リンシャン ハイテイ
三色 表4 裏1.....12000オールの500円です。」
守一の点数申告が何故か腹立つ。
点棒、祝儀の受け渡しが済むと紺野が語りかけてくる。
「すごいねー でも引きヅモはダメだよー 6万点行ったんじゃない?場代と祝儀で赤字だけど助かったよー いやリー棒出さなくてよかったー」
そうだ。ここ新世界では持ち点が6万点に到達するとコールドゲームで終了する。席順3着の石塚は無言で顔を真っ赤にしながら負け分を払ってきた。サシウマ分の1万は後で受け渡すという合図で守一は人差し指を立てる。石塚さんはそれに気付き、首を2回縦に振った。ラスの星野からも勝ち分を受け取り、一回戦終了。サシウマ合わせて2万ほどの金が入ってきた。
守一の「お前なら何点であがれてたのかな?」っていう顔も気にならなくなってきた。
(行けるかも知れない。少なくとも今日は風が吹いてる。このまま突っ走ってくれ!)
気づいたら俺の頭から交代の2文字は消えていた。