990 想定外 下
ハァー。己の不運を呪うよりまずはこの状況をなんとかしましょうか。解決しなければおっぱいリゾートが台無しになるんだからね。
「チェレミー嬢。いったいなにが?」
ジーヌ家の方がいたのは幸運よね。わたし一人ならいろいろ面倒になっていたわ。
「ランジニーラ様。タリール様に働いてもらいます」
「タ、タリールにですか?」
「はい。ジーヌ公爵領の民を救うためにタリール様に立ってもらいます」
ジーヌ家のこと。わたしが目立ってはいけないし、民を救うのはジーヌ家でなくてはならない。他家の者が活躍したらジーヌ家の恥となってしまうわ。
民の前に面子など気にしてられない。なんて言う者は貴族失格。面子のためなら民を見捨てるのが貴族という生き物なのよ。
けど、だからと言って民を見捨てても面子は潰れる。民と貴族の面子を守ってこそ貴族である。
「ラグラナ。タリール様に聖衣を着させて」
渦浄化儀式服だけど、それっぽくデザインはされている。見た目を整え、ロリっ娘に目を向かわせるとしましょうか。
「ラインフォード様。誰一人ここから離れさせないでください。あと、グリムワールを騎士様方に持たせてください。あれは魔力回路を形成できる付与を施してあります。大規模魔法を行います」
いざってときまで黙っているつもりだったけど、事これに至っては仕方がないわ。奥の手だったのに。
「そんなに危険なのか?」
「状況からして咳を介する病気でしょう。運ばれて来た者は主に高齢者と子供。大人は少ない。そこから導き出される答えは体力の弱い者にかかるもの。弱い病気ではありますけど、移る病気ではあります。これは周辺にばら撒かれていると見ていいでしょう。なら、この一帯を浄化します」
「燃やすのか?」
「そんな過激なことはしませんよ」
苦笑いをする。ラインフォード様は過激なんだから。
「ゴズメ王国では渦というものが猛威を奮い、人や獣を狂わせました。同じではありませんけど、それに似たことが起こっております。人に害あるものを浄化、滅します。そのためにはたくさんの魔力を使います。騎士様方の魔力を使わせていただきます」
一人に頼るのではなく多くの人で対抗する。ゴズメ王国で得た教訓よ。
「これだけの魔力があるなら一人残らず救えます。ルティンラル騎士団の奮闘を期待します」
ラインフォード様が剣を抜いて捧げ剣をすると、周りにいた騎士様方も捧げ剣で応えた。
それはタリール様にやって欲しかったけど、まあ、それは挽回できる。
「ジーヌの民でありコルディーの民を救います!」
わたしも聖衣に着替えるために馬車へと向かった。




