979 ラーレシム 上
ハイ、お風呂が完成。魔力をたくさん使っちゃったわ。
だが、後悔はない。むしろよくやったと自分を褒めたい。チェレミー、あなたはよくやったわ!
「お嬢様。夜もすき焼きにして欲しいと言われているのですけど、どうしましょうか?」
「それならすき焼きで構わないわよ。残りも熟成肉にしちゃいましょうか」
そう魔力は使わないはず。使い切ってしまいましょうか。
魔力を馬車に送り、冷蔵庫にあるブロック肉を熟成させた。
「補給をお願いしないといけないわね。ラグラナ。お願い」
すっかりロリっ娘のお付きとなっているラグラナ。そんなに気に入ったのかしら?
「畏まりました。タリール様。遠くに行ってはダメですよ」
なんだかんだと小さい子の扱いが上手なのよね。まあ、あの目から逃れずるのに苦労したものだけど。
「チェ、チェレミー様。チェレミー様の属性はなんなのですか?」
おずおずとラーレシム様が声をかけてきた。
「水ですよ。ラーレシム様はやはり風ですか?」
ジーヌ家の血筋は風の魔法に長けているっぽい。他家から嫁いで来たら属性も変わるのかしら?
「わかりません。わたしはなにも反応しなかったので……」
なるほど。一縷の希望でわたしのところに来たわけか。なぜかと思っていたらそういうことなのね。
グリムワールを出して握ってもらった。
「魔力保持等級はなんでしょうか?」
「……二級です……」
「エレアシム様は確か、侯爵家でしたよね?」
ミシエリル様がそうならエレアシム様も同じってことだ。
「ええ。ルクセング侯爵家よ。四姉妹で、姉とわたしがジーヌ家に嫁いで来たの」
四姉妹だったんだ。珍しいわね。
「ルクセング侯爵家の血を継いだのでは?」
なんの属性かは尋ねないでおく。他家のことに踏み込んでいいことでもないからね。ジーヌ家は公爵家なので周知の事実っけだけ。
「いえ、そうではないみたいなの」
いろいろ調べたけど、わからなかったってことか。
「風の属性ではないのですね?」
「ええ。まったく発動しなかったわ」
「ラーレシム様。グリムワールに魔力を送ってください」
「わ、わかりました」
魔力は出せている。
「確かに風属性の魔力ではないですね。火や水でもなく土でもない。ただ、属性を持たないだけですね」
男爵家によくある無味無臭の魔力だ。ただ、練習すれば火も出せれば水も出せる。風や土を動かしたりもできるわ。
「エレアシム様。ラーレシム様に付与を施してもよろしいでしょうか? 能力開放か上昇を施すと大抵わかるものなのです。ただ、あくまでも能力があれば、ですけどね」
属性がなくても二級保持者なら立派なものだ。いい家に嫁げるでしょうよ。
「お願いするわ」
きっぱり言っちゃうわね。そんなに重要だったの?
「わかりました」
まあ、許可をいただいたのだからやってみますか。ふん!
 




