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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第17章

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977 スキヤキ 上

 ジーヌ公爵領に来て牛肉は食べたけど、やっぱり味は大雑把だ。肉質も硬い。令嬢のアゴにはなかなかキツいわ。


「やはり、育て方が悪いのね」


 いや、悪いは言いすぎか。食べるために品種改良されてなく、エサや環境がまだまだ確立されてないだけだ。


「煮るのが多いのはそのせいか」


 この肉質なら五ミリが精々かしら? 一センチを越えたらアゴが痛いわ。騎士様たちは満足そうだけど……。


「ナディア。熟成中のお肉をもらえる?」


「はい。赤い紐のが熟成中のものです」


 馬車の冷蔵庫から赤い紐で縛られたブロックを取り出した。


 アイテムボックスワールドに放り込み、錬金の壺でさらに柔らかく、より熟成させた。


 取り出したら魔法でスライス。硬いのならすき焼きにしちゃいましょうだ。


 薄鍋を使って肉を焼き、すき焼きのタレをかけて食べてみる。


「まあ、悪くないわね」


 上質な肉ではないので口の中では溶けたりしないけど、まあ、安い肉くらいにはなったんじゃないかしら? 


 白菜のない世界なので、茹でたら食べられる葉野菜と臭み取り用の若ネギ、ニンジン、豆腐を入れて作ってみた。


 十分くらい煮込んでから食べてみる。染み込みがいまいちだけど、まあまあいいんじゃないかしら? 


「ナディア。味見してちょうだい」


 お菓子作りが得意なだけで料理も普通にこなすナディアに味見してもらった。


「美味しいです。やっぱり薄くして煮たほうがいいですね」


 ナディアもそう思っていたようだ。


「いいお肉にするには子牛の頃から肉を柔らかくするよう育てないとダメね」


 そこからならまだ美味しく食べれるお肉になるはずだわ。


「ハリーヌ様も味見していただけますか?」


 牛肉は小さい頃から食べているでしょうから忌憚ない意見を聞きたいわ。


「わ、わかりました」


 お皿に盛ってハリーヌ様に渡した。


 お肉を口に入れて少し噛むと、目を大きくさせた。


「……これ、本当に牛の肉なんですか? 臭みが一切ありませんけど……」


「処理をしっかりして、熟成させたら臭みは消せます。まあ、これが限界でしょうけどね」


「……これより先があるのですか?」


「わたしはまだまだ先はあると見ていますわ。理想は口の中に入れたら溶けてしまうくらいのお肉にしたいですね。そこを十としたらこのお肉は二か三くらいでしょう」


 この時代なら最高級でも前世では外国産の安い肉でしかない。とろけるようなお肉を知っているだけにこれじゃ満足できないわ。


「他の方々も味見していただけますか? 皆様方の意見を聞かせてくださいませ」


 いろんな方々の意見を元によりよいお肉にしていきたいわ。美味しいは幸せだからね。

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