976 展望台で昼食を 下
「少し、歩いて来ますわ」
高原、とまではいかないけど、風がとても気持ちいい。牛でも見に行きますか。
「皆様方は残ってて構いませんよ」
わたしが席を立ったら皆様方も立ち上がってしまった。
「いえ、チェレミー嬢に付き添うために来ましたから」
そこまでしなくとも、と思いはしたけど、皆様方で歩くとする。てか、騎士様方までついて来るから牛が逃げてしまったわ。
「塩の塊」
「牛が舐めるものです。牛は塩を舐めないと脱水状態になるので」
あー。そんな話聞いたことあるわ。ファンタジーな世界でも牛の生態はそう変わらないみたいね。
「ここに木を打ち込んでもよろしいでしょうか?」
「え? ええ、構わないわ」
許可をいただいたのでアイテムボックスワールドから丸太を出し、グリムワールで穴を開けた。
「騎士様。この棒を立ててもらえますか?」
見せ場だとばかりに騎士様方にお願いした。
二人がかりで棒を穴に刺し、隙間に土を埋めて魔法で硬化させた。
「この紐を棒に巻いてください。キツく」
不思議そうな顔をしながらもわたしのお願いに従ってくれ、紐を棒に巻いてくれた。
「下がりましょうか」
牛が怖がらない距離を取った。
「なにをしているのですか?」
「書物に書いてあったことが本当か試したくなったまでですわ」
前世で見たことが蘇り、ちょっと試したくなったのよ。
しばらくして牛が棒に興味を持ったのか、集まり出して来た。
本能が理解したかのように牛が縄に体を擦りつけた。
「おー。本当だったのね」
一頭がやると他の牛も縄に体を擦り始め、我先に争っていた。
「もうちょっと改良が必要ね」
ブラシにしたらいいのかしら? それとも凹凸をつけた縛りのほうがいい? ローラーにしてもいいかもね。
「うん。満足しました。戻りましょうか」
牛たちも気に入っているようなのでそのままで構わないでしょう。どうぜ朽ちるでしょうからね。
「チェレミー様は物知りなのですね?」
「本で知ったまでですわ。それが本当かはやってみないとわかりません。こういう経験ができるから旅はいいものです」
ほんと、体を焼いた意味があるってものだわ。
「そろそろお昼ですね。昼食の準備でもしましょうか」
景色のよいところで食べるお肉は格別でしょうよ。早くお酒を飲める年齢になりたいものだわ。
「ナディア。コンロはどうかしら?」
馬車にアイテムボックスワールドを接続し、アメリカンなバーベキューグリルが展開できるようになっている。これがあればいつでもバーベキューよ。
「はい。とても使いやすいです。いい焼き加減ですよ」
それはなにより。早く食べたいわ~。




