972 ジーヌ家の人々 下
湖に到着すると、なにやら人がたくさんいた。どったの?
「近くの者が集まったようです」
騎士様が駆け寄って来て説明してくれた。なにかやっていると、興味を持った者たちが集まって来たそうだ。
……メイベルのところでも似たようなことがあったような……?
「まあ、今日は使わないから好きにさせてください。そちらはどうです? 材料は集められましたか?」
「はい。明日には揃うかと思います」
「では、職人たちにこれを見せて作ってもらってください」
アスレチック遊具の絵を渡した。
「距離とかは大体で構いません。調整は魔法でやるので」
「なにか、訓練用具のようなものですな」
「似たようなものですね。体を動かすためのものですから。わたしも体を鍛えたいので障害物を避けたり乗り越えたりするものです」
試しと丸太を地面に埋めてタイヤ飛びならぬ丸太飛びを作ってみた。
「こうして丸太の上を飛んで行くものですね。わたしの体だと騎士様たちには物足りないでしょうけど」
子供のような体なので四十センチがいいところかしら? 滑ったら頭から落ちちゃいそうね。ギザギザを入れておきましょう。
「とまあ、こんな感じのものですね。あとはよろしくお願い致します」
わたしたちは朝食を作らせていただきますので。
「申し訳ありません。朝食の用意を致しましょうか」
「なにを作るのですか?」
「パンケーキにしましょうか」
「パンケーキ、ですか?」
百聞は一見に如かずと、パンケーキを作ってみせた。
「こんなものがあったのですね」
「最初は難しいですけど、極めたらふわふわのが作れますよ。わたしはまだ薄いのが精一杯ですね」
そこまで極めようとも思わないしね。
「ナディア。見本をお願い」
村娘でしかなかったナディアには居心地悪いでしょうけど、この中で一番の腕を持っている。見本としては最高の人物だわ。
「か、畏まりました」
「大丈夫よ。ジーヌ家の方々は料理ができる人ばかりだから」
「チェレミー嬢に言われると心苦しいですわ。わたしたちもできるというだけで、得意と言える者は少ないですから」
「ええ。毎日作っているわけではないので」
そうなんだ。教養の一つとしてやっている感じなのかしら?
「ほどよくできればいいと思いますよ。やりすぎると料理人の仕事を奪ってしまいますからね」
料理人より腕がいいというのもプレッシャーでしょうしね。ほどほどで構わないわ。わたしだってそこまで腕がいいってわけでもないしね。
「ナディア、お願いね。わたしは飲み物を用意するから」
牛乳は用意してもらったので、加工して飲みやすくしている。これがなかなか美味しいのよね。
料理ができる人ばかりだから三十分もしないて朝食が完成した。




