955 親類縁者 上
夜になり、ジーヌ家の皆様方との夕食となる。
公爵なだけに親類縁者はかなりのものになり、五十人以上は集まっている感じだ。
集まりはよくあるのか、それ専用の離れもあり、二階には泊まるところもあった。
「公爵家ともなると、集まることが多いのですか?」
わたしの世話係と、ミシエリル様の従妹、十九歳のハリーヌ様がついてくれた。
産まれたばかりのお子様がいるそうで、今日は辞退しようかと思っていたそうだけど、旦那様がまさかのルティンラル騎士団に所属しているそうだ。
独身者ばかりと思っていたら、妻帯者もそれなりいるそうだ。まったく知らなかったわ。ちょっと考えないといけないわね。
「はい。年に四、五回は集まります。今回は一族縁者、八割は揃っているかと思います」
縁者ってことは準貴族や剥離(貴族籍から外れることね。無尽蔵に貴族にはできないからね。当主から離れすぎると貴族籍は剥がれてしまうそうよ)した者もいそうね。
「それはまた、時期を合わせるのも大変でしょう」
「そこまで厳しいものではありません。用事があったり、体調不良なら無理をしてまで出席しなくてもよいものですから。公爵夫人でもあるミシエリル様も参加してませんからね」
確かに公爵夫人が参加しないものなら一族からなにを言われるかわかったものじゃない。そこまで重要ではないってことか。
「一族の繋がりを強くするためにも役に立っておりますね。公爵家ともなると付け込まれたりすることもあります。一族の様子を確認するためにも必要なもののようです」
一族縁者が多いというのも大変なものなのね。伯爵家に生まれてよかった。
「チェレミー様。ご当主様がいらっしゃいました。あちらへ」
アルジオン様が広間に現れ、わたしもその横に立つことになった。きっとミシエリル様から重要人物だから蔑ろにするなと言われているんでしょうね。ジーヌ家ではミシエリル様が最重要役職についているお方。当主であるアルジオン様より発言権が強いでしょうよ。
アルジオン様の横に立つと挨拶が始まった。
長い演説を覚悟していたら、三十秒もしないで終了。主要な面々は中央の長テーブルにつく。わたしはアルジオン様の横。ミシエリル様かお子様が座る場所だった。ええんか?
「チェレミー嬢。肩苦しいのはなしだ。好きなものを食べてくれ。ここの料理は一族の女たちが作ったものだ。コルディーで一番の料理が揃っているぞ」
「見たこともない料理ばかりですね。さすが次期お妃を教育する一族ですね。いくつか習いたい料理がありますわ」
「ああ。いつでも厨房に行くといい。チェレミー嬢も料理が得意とか。皆に教えてやってくれ」
「はい。楽しみにしておりますわ」
コルディーで使われている食材を知るいい機会だわ。




