949 どったの? 上
お風呂から上がったら騎士団のところに行ってみる。
屋敷はそれなりでも敷地は広く、騎士団が野営しても問題ない広場があった。
「ラインフォード様」
団長自らテントの設営をする。こういうところが団員から敬愛されるんでしょうね。
「あぁ、チェレ……」
急にそっぽを向くラインフォード様。どったの?
「どうかないさましたか?」
「あ、いや、なんでもない。変わった髪型だな」
あ、お団子ヘアーのまま来ちゃった──って、胸、スッカスカでしたわ。
「失礼しました。つまらないものを」
コルディーの男性は巨乳好みが多い。貧乳など見てもおもしろくもなかったわね。
宝珠に合わせて服も変えたから胸元がガバガバ。お風呂上がりで下着もつけてなかったよ。
「胸のない人生でしたので油断してました」
とりあえずテントを借り、アイテムボックスワールドからブラジャーを出して頭につけていた魔力宝珠とガラスの珠をブラジャーに詰めて胸に装着した。
「──チェレミー様!」
と、ランが入って来た。どったの?
「なにをしているんですか!?」
「ブラジャーをつけているのだけど……」
あなたはなにをそんなに怒っているのよ?
「殿方の前で恥ずかしいと思わないのですか!」
「確かに恥ずかしい胸ではあるけど、そこまで卑下してないわよ」
貧乳には貧乳の素晴らしさがある。自分の胸にもそれなりの愛着は持っている。恥ずかしいなんて思わないわ。
「そうではありません! そんな薄着で殿方の前に出てはなりませんと言っているんです! よくジーヌ家の侍女が許しましたね!」
あーなんか言いたそうにはしていたわね。オロオロしていたから構わず出て来たわ。
「館ではいつもこの格好だったじゃない」
体の線は出るけど、ぽっちちゃんがコンニチワするのは避けている。まあ、今回は違うところからコンニチワしてたけどさ。
「ここは他家です! 殿方の前です! 気にしてください!」
「騎士団の方々はこんな貧弱な体、気にしたりしないわよ」
ボインでバインなら違ったでしょうけど。
「気にする気にしないではありません! 淑女の嗜みです! さらにいうなら幼い体でも女性は女性。禁欲に近い騎士団の前では毒でしかありません!」
騎士団って禁欲生活なの? 発散とかしないのかしら? さすがに王都にも春を売る商売はあるでしょうに。高級を売りにするところだってあるはずだ。あ、わたしも利用……はできないか。さすがに止められるわ。
「騎士団も大変ね。ジーヌ公爵領も利用できるお店ってあるのかしら?」
あの町の規模ならあっても不思議じゃないと思うのだけれど。
「チェレミー様が気にすることではありません! ラグラナ様にも叱ってもらいますからね!」
それは嫌だわ。ラグラナの説教、長いし……。




