920 自分らしく 下
次にサーリス様がやって来た。ここは相談室ではないんですけどね。
「少しよろしいかしら?」
その言葉でサーリス様の性格や辺境公の立場がよくわかるというものだわ。
……まあ、態度からもわかってはいたけどね……。
「構いませんよ。ただ、仕事は続けさせてくださいませ」
「器用なのね?」
「致し方なくです。仕事は溜まる一方なので。サーリス様も妃になればわかりますよ。自分の時間などなくなりますからね」
妃に自由時間はないに等しい。時間は作るしかないを一番理解している存在だと思うわ。
「それは嫌だわ。わたし、妃になれそうもないわね」
本当に嫌そうな声音だ。地位があるって大変ね。
「それもよろしいかと。嫌々やるようなものではありませんからね。野望がない方は早々に病床に伏せることになるでしょう」
妖狐の方々はそこら辺ドライだ。意に沿わない者は排除するでしょうよ。
「わたしもあなたほどの覚悟が欲しかったわ」
「ないほうがよろしいですよ。下手に覚悟と能力があると仕事を押しつけられますからね。無能を演じるほうがよろしいでしょう」
「それはそれでいいように使われそうね」
確かに。無能を演じるほうが大変そうだわ。
「やはり自分らしく生きるのがよろしいですね。仕事は増えますけど」
こうしてお風呂前に胸がときめいていられる。これを感じられるなら仕事も苦ではないわ。
「自分らしく、か。それもそれで難しいわね」
「生きること自体、難しいものですよ。でも、知恵や知識、社会を知れば多少なりとも自分の意思を貫けるものです。さらに人脈も大切にするとよいですよ。人脈は力となりますから」
地位があるからと言ってなんでもでくるわけでもない。なにをするにも人脈は必要となるものだわ。
「もし、その一つとなれば幸いですね。恥ずかしながら辺境公というものがあるのを今回知りました。是非とも辺境公のことが聞きたいものですわ」
本当、辺境公ってなんやねん? 辺境伯なら理解できるけど、公にする理由がまったくわからない。王族の血筋ってことなの?
「あなたは本当に変わっているのね」
「ええ。殴ったていどでは元に戻らないくらい性根が曲がっておりますわ」
死んでも治らなかったおっぱい愛。巨大ハンマーで叩かれたって直りはしないわ。筋金入りってことよ。
「ふふ。確かにそうね。この短い間でよくわかったわ。またお話しに来ていいかしら?」
「もちろんです。妃に選ばれなかった辺境公領に招待してくださいませ」
「いいわよ。領地を案内してあげるわ」
なかなかEおっぱいを持った方。楽しみで仕方がないわ。グヘヘ。




