914 種に優劣なし 下
映像は暗転。王都へ向かう馬車から見た景色となる。
懐かしいわね。去年のことなのに。あのときはまさか妃候補者とお泊まり会になるなんて想像もしなかったわ。先見などおこがましい限りだわ。
「……エルフの国なのね……」
当たり前と笑い飛ばすことはできない。この方々の世界はとても世界なのだからね。
でも、こうしてエルフの国があるということは知れた。その知るを理解のが第一歩だとわたしは思うわ。
「なぜチェレミー様は、王妃様と一緒の馬車に乗っているのですか?」
「チェレミー様がお母様を救っていたからです」
「チェレミー様がですか? 万能薬があるのですからそれを使えばよかったのでは?」
「もちろん、飲ませました。しかし、病状が悪化してしまいました」
「万能薬など人がつけた名でしかありませんし、総合薬ではありません。一つを治すために他を活性化させて病状を進めることもあります。薬というものは病状症状により使い分けなくてはいけないものです。痩せたいからと言って食事を抜けば不健康になるのと同じ原理です。簡単に治せるなら魔法医などいりません」
万能薬に興味がなかったので調べることはしなかったけど、あんなものは腹痛のときに飲めばいいものだ。わたしは万能薬に価値を見いだしていないわ。
「皆様方も若いからと言って油断してはなりませんよ。日頃の食事、日々の運動、規則正しい生活を心がけてください。若いうちの不摂生は将来のためにはなりませんから」
前世はメタボで苦しんだもの。今生は健康的に生きると決めたのだ。
「この花びらは、梅の花びらですか?」
場面は変わっており、花びらを撒くところになっていた。
「はい。カルディムにたくさん植えられたものです。もし、領地で生っているのなら買わせていただきます。現在、梅の実が不足しておりまして、集めるのに苦労しているもので」
梅の花びらと知っているなら梅が植えられているってこと。供給が追いついていない今はどこからでも買わせてもらうわ。
「それなら話を通しておきますわ。産業になるならありがたい限りですので」
へー。辺境公領で梅が植えられているのか。
「ありがとうございます、サーリス様。梅の需要は多くなります。お妃様たちも気に入っているので、広まるのも時間の問題でしょう。今のうちに確保しておかなければいけなかったのです。そうだ。夕食の席にお出ししますね。そう強いものではないので一杯なら大丈夫でしょう」
もう学園を卒業したらお酒を飲んでも大丈夫なはず。アルコール度数、三パーセントなら大丈夫でしょうよ。
 




