913 種に優劣なし 上
世界を知ることは大切だ。
あ、世界と書いておっぱいと読むではありませんからね。文字どおり世界を知ることで価値観が広がるからよ。
わたしも前世で富士山を見たとき、自然の大きさを知り、知らない世界を知れたものよ。もっと旅をすればよかったと後悔したものだわ。
妃候補者たちはわたしが記憶させたゴズメ王国の景色に目を奪われている。それだけで狭い世界しか知らないのがよくわかった。
「皆様方。少し、魔力をいただきますね」
最高位貴族だけあって魔力は銀級以上。ほとんどは金級じゃないかしらね? 強い魔力を感じるわ。
皆様から三割くらいいただき、部屋全体に付与魔法を施した。
「これから見せるのはわたしが見た景色であり、感じた空気や匂いです。まずはわたしがお世話になった湖の館から経験してもらいますね」
辺境暮らしの方なら森の中を歩いたこともあるでしょうけど、場所が違えば感じる空気も違うものだ。
と言ってもわたしが感じた空気や匂いなので、多少なりともわたしの感覚寄りになってしまうのはごめんあそばせ。それでも感じたことのない空気であり匂いでしょうよ。
「空気がまるで違いますね」
「木も見たことがないものが多いわ」
辺境伯と辺境公のご令嬢はわかるようだ。
「この方は?」
「ゴズメ王国の王妃様であり、ルーセル様のお母様です」
「エルフ種は美しいと聞いたことありますけど、こんなにとは思いませんでした」
「ルーセル様も何年先にはこうなってしまうのですね……」
今のルーセル様は美少女なら王妃様は絶世の美女ね。
「エルフ種は長命です。ルーセル様も十六、七に見えますけど、人間の年齢で言えば二十五歳くらいですかね? わたしたちより年上です」
「そうなのですか!?」
「とてもそんな風には見えません!」
でしょうね。エルフは長命なせいか成長もゆっくりだ。まあ、中身は見た目に比例したりするけどね。
「長命には長命なりの利点もあれば欠点もあります。それは、わたしたち人間にも言えます。その違いを是非とも皆様方に知って欲しいのです」
ルーセル様にはなぜを教えた。種の違いを知らないから誤解を生む。理解ができないから争いになる。種族に関係なくおっぱいは素敵と……ゴホン。すみません。また欲望に溺れました。
「人間とエルフ。どちらが優れているかなど考えるだけ愚か。種というものは環境に適した生き物でしかありません。どこかが優れたらどこかが劣るもの。暑さに強くても寒さに弱いくらいなものです。自分たちが優良種族だと勘違いしたとき、その種族は滅びに向かうことをお忘れなく」
って、また説教してるわ、わたしったら。




