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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん
第16章

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877 カスまっしぐら 上

「お嬢様。ジーヌ公爵夫人からお手紙です」


 昼食が終わり、食後のお茶をしてお妃様とミシエリル様が帰った──と思ったら、ミシエリル様から手紙が届いた。早っ!


 中身を見たら清酒が欲しいとのことだった。こんな手紙、いつ書く時間があったのかしら? 少なくとも十分くらいは必要でしょうに。


「清酒を屋敷に送って欲しいか」

 

 よっぽど清酒を気に入ったようね。まあ、清酒は料理にも使えると悟ったのでしょうよ。あの料理の腕を持っているのならね。


「あー甘いものが食べたいな~。そうだ、バームクーヘンがあったわね」


 あらやだ。バームクーヘンでは現れなくなったわ。菓子カスのクセに贅沢になっちゃって。まだまだ甘い菓子カスだこと。


「ラグラナ。たくさんあるから侍女たちに配ってあげなさい。生地にイチゴや紅茶を練り込んだものよ」


 試しにとラグラナに出してあげ──ようとしたら菓子カスが滑り込むように現れてバームクーヘンにかぶりついた。


 今さら威厳とか神聖とか出せとは言わない。求めてもいない。けど、せめて繕うことはやって欲しいものだ。やっていることが猫まっしぐらだわ……。


「タルル様。屋敷までお願いします」


「わたしを馬車扱いする──」


 バームクーヘンの穴にクリームとイチゴを乗せたものを出した。


「任せろ! どこにでも送るぞ!」 

 

 その変わり身、尊敬に値しますよ。真似はしませんけど。


「ラグラナ。少し屋敷に行って来るわ。なにかあれば呼び鈴を鳴らしてちょうだい」


「……お気をつけて」


 タルル様に屋敷へと転移してもらい、机の上に置いた呼び鈴を鳴らすと、すぐにルージュンがやってきた。


「お帰りなさいませ」


 わたしが突然帰って来てもまったく驚かない。わたしがいて当たり前のような振る舞いだ。案外、肝が座っているじゃない。


「ジーヌ公爵夫人からの要請で清酒を用意してちょうだい。あと、ジーヌ公爵家と商売をしている商人を探して。屋敷に運んでもらうから」


 わたしの名で手紙を書き、ゴズメ王国印を捺させてもらった。ちゃんとゴズメ王国の王妃様から許可はいただいておりますから。


「一応、荷馬車五台分は用意しててちょうだい。もしかすると増えるかもしれないから倉庫に出しておくわ。追いつかない場合は、わたしに許可をもらわないとできないと断りなさい。無理を言ってきたらお妃様に渡す分なのでと言って構わないわ」


 ウソは言ってない。きっとお妃様も欲しいと言ってくるでしょうからね。


「畏まりました。こちらで進めておきます」


「ローエング公爵家にもわたしの名で贈っておいて。商人たちの後ろ盾となってもらいましょう」


 ご隠居様もお酒(弾)は必要でしょうからね。

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