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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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84 ひでぶ

 マランダ村での夜はなにもなく過ぎていった。


 わたしはトラブルメーカーではないと言ういい証拠ね。


 赤猪の丸焼きはとても美味しく、持ってきた清酒は喜ばれ、村の者にも飲ませたいと声が上がり、じゃあ、きたい人はどうぞな感じで村の人を招き入れたらお祭り騒ぎとなってしまった。


「マリアナ。カエラ。コノメノウ様をよろしくね」


 コノメノウ様は幼女の姿をしており、髪や肌もこの辺の者にはいない色をしている。しかも服もふんわりとした民族衣装的なものだ。


 大人はなにかあると察して近づいてこないでしょうが、そんなことわからない子供は寄ってくる。多少のことなら流してくださるでしょうけど、加減の知らない子供とかになにかされたらわたしも村も困る。そうならないためにも二人にはコノメノウ様の側にいて欲しいのよ。


「畏まりました」


 本当なら接待される立場なのに、なぜかナジェスやコノメノウ様のフォローに回っている。いや、村長にやれと言うほうが酷でしょう。領主代理の息子であり、守護聖獣様なんだからね。


「嫌な臭いがするの」


 奥様方の間をいったりきたりしていると、コノメノウ様の声が届いた。


 え? なに? 気のせい? 


 振り返ればコノメノウ様はいない。探すと先ほどの位置にいた。


 わたしの視線に気づいているでしょうに、まるで知らない風にお酒を飲んでいた。


 ハァー。トラブルなく終わると思ったのに。変な方向に流れないで欲しいものだわ……。


 とりあえず、優先させるのはナジェス。次にコノメノウ様。マーグ兄様は……大丈夫でしょう。それなりのものは身につけさせているからね。


 ナジェスにはルーアとマーナをつけて、コノメノウ様はジェン、マリアナ、カエラをつける。わたしはランだけでいいでしょう。


 夕食も終わり、ナジェスはお寝むになったので部屋に連れていき、コノメノウ様はお父様とお母様が使う部屋に。マーグ兄様は村長宅へ。わたしは客室を借りた。


「ラン。なにか気づいている?」


 この子は王宮から派遣された影の者。わたしに見えないものが見えていることでしょうよ。


「村長の家で働く下女の動きが奇妙でした」


「どんな風に?」


「慣れてない感じでした」

 

 誰かが入れ代わった、って感じかしら? そんなことできるものかな? 仮にできたとしたら結構な組織ってことじゃない。暗殺者とかは止めてよね。


 今から人を増やすこともできない。今いる者でなんとかしなくちゃならないか。なにが目的かわからないと本当に対処しようもないわ。


 まあ、それなりの用意はしてある。現れるのを待つしかないわね。

 

 ランに体を拭いてもらい、寝巻きに着替えてベッドに入る。


 こんな状況で眠れないわね、とか思っていたけど、疲れていたようで知らぬ間に眠ってしまった。


 深夜になり、窓から誰かが入ってきた。


 全身黒ずくめながら体の線から女だ。胸はささやかながら動きは熟練者だとわかる。足音がまったくしないわ。


 侵入者は懐から五センチくらいの針を出した。


 迷いのない動きから目標はわたしで間違いないようね。わたし、なにか恨まれるようなことしたかしら? 清く正しく生きているってのにね。


 針をわたしのおでこに刺した。そこになにか経絡秘孔的なものでもあるのかしら? さすがにひでぶ! とは仕込んでないわ。


 けど、侵入者は気にしない。どうやら抵抗されないための処置らしいわ。プロの犯行ね。


 なにか経過を見ているのか、侵入者はわたしの顔を覗き込んでいる。どんな表情させればいいのかしら? まあ、今さら表情は変えられないから様子を見るしかないわね。


 しばらくすると、ドアが開いて三十歳くらいの女性が入ってきた。どうやら下女のようだ。


 侵入者の横に立つと、わたしの顔を覗き込んだ。なんだというの?


 十分くらい覗き込み、なにか変だと感じてきたのか、ちょっと戸惑いをみせてきた。


「どういうこと?」


「わからない。なぜ反応が出ないんだ?」


 なにか精神支配系のものかしら? こういうときは説明するのがセオリーよ。不親切な侵入者さんたちね。


 そして、悟ったかのように振り返り、辺りを見回す侵入者さん。


「逃げろ。罠に嵌められた」


 即座に逃げる下女。でも残念。この部屋に入った時点であなたたちの負けなのよ。


 部屋を出ること叶わず。下女と侵入者は力なく崩れてしまった。


「お嬢様。殺したのですか?」


「そんなことしないわよ。ただ、眠らせただけよ」


 お世話になっているところで迷惑はかけられないし、死人が出たところに泊まりたくないわ。


「ラン。この指輪を二人に嵌めて」


 それは傀儡の指輪。わたしの言いなりになるよう施したものよ。


「どこの手の者かわかる?」


「おそらく帝国の者かと思います。この国の影ではありません」


 影には影のことがわかるのでしょう。


「やはり、わたしのことがバレているみたいね」


 なんとも優秀じゃないの。


「恐らく、かなりの数の影に侵入されているわね。王宮は把握しているの?」


「数まではわかりませんが、その形跡はつかんでいます」


「自害はできないようにしてあるけど、念のため調べてちょうだい」


 見張っている者はいるはず。ちょっかいかけられる前に排除しておきましょうか。


「歯に毒薬が仕込んでありました」


 随分と古典的な方法を仕込んでいること。とりあえず、裸にして念入りに調べましょう。


 べ、別におっぱいを見るためにやるんじゃないんだからね! 勘違いしないでよね! ふん!

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― 新着の感想 ―
[一言] 命を狙われたのにオッパイとは流石オッパイ星人ですね(笑)
[良い点] こうやって下から洗脳……ゴホンゴホン、説得していき上へと順に辿って帝国と平和裏にお話を指定期魔性(誤変換 していきましょう。
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