811 会談 下
「……案外、弱気なのね……」
「弱気に見えましたか?」
ベールの下で笑ってみせた。この距離なら辛うじて広角が上がいるのが見えるはずだ。
「強気には見えなかったわね」
正直なお方だ。
「わたしは家が潰れるのを黙って見ているほどお人好しではありませんし、それで潰れるような貴族ならとっとと潰れるべきです。力もない貴族に貴族たる資格なし。弱い貴族など王国にとって害でしかありません」
力のない正義が罪なのと同じで力のない貴族に貴族と名乗るなど罪でしかない。貴族が弱いことは領民にとっても不幸でしかないのよ。
「だからと言って強さをひけらかすような貴族にも貴族たる資格はありません。無駄に敵を作るような者に味方は作れませんからね」
上位下位に関係なく仲間が多いほうが強い。ここにいる貴族はそれがわかっているから派閥を作るのよ。
「……前言撤回するわ。あなたは強気だわ……」
「わかっていただき嬉しいです。敵対するより仲良く。意地悪するより優しく。お互い、得になるようになりたいものですわ」
ただ、相手を過小評価しない。全幅の信頼はしない。肝心なものは渡さない。見せたりしない。この世で信じられるのはおっぱいだけよ。
「……そうね。マーレがあなたに会いに行った意味がよくわかったわ……」
王妃まで登り詰め、こうして自分の派閥を築いただけはある。周りの者たちのことを把握しているわ。名ばかりの王妃ではないわね。
ただ、それでも限界はある。王妃として限界。人としての限界。自由に動けないのが足を引っ張っている。仲間を増やすことでしか生き残れないのよね。
「小娘が言うのもおこがましいですけど、遠くに友達を作ることもまた自分を守る手となり、助けとなります。身内だけで固まるのではなく、もっと遠くの方々と好を結ぶことをお勧め致します。いつか、カルディムにお越しいただける日を夢に見ております。きっと新しい友と出会えるでしょう」
それができるかはお妃様の働き次第であり決断次第だ。
「……先見かしら?」
「さて。わたしには先を見る天能はありません。いくつもある選択肢を想像しているにすぎません。そもそも先がわかったところでそこに辿り着ける選択ができるとも限りません。一つ間違えば一つズレる。間違い続ければどんどん正解から外れて行きます。よりよい選択を選ぶというのは難しいものです。だから正解を得るためには情報が必要になるのです。正確な情報を得なければならないのです。ときには自分の目で見なければならないこともあります」
わたしがここに来た一番の目的はお妃様を知ること。この方を知らずコルディーで動くことは難しい。
「お妃様と出会えて本当に光栄ですわ」
冷や汗をかくお妃様にまた笑ってみせた。




