733 魔法の大切さ 下
「やはりチェレミー嬢のところの料理は美味いな」
「ありがとうございます。料理人たちに伝えておきますわ」
料理人たちも喜ぶでしょうよ。館ではもういつもの味となっている。料理人たちにしたら外の情報を得て嬉しいはずだわ。
「ここは簡単に氷が出て来るのだな」
「厨房に製氷箱を置いてありますので」
「それもチェレミー嬢の天能なのか?」
「はい。付与魔法です」
誰でも知っていることなので素直に肯定する。
「付与魔法とはこんなに凄かったのだな」
「別に付与魔法が凄いわけではありません。魔法を使えることが奇跡であると認識しなければなりません。本来、人は魔法がなくても生きられる存在です。現にルゼット様も毎日魔法を使っているわけではないでしょう?」
「まあ、そうだな」
「魔法があるのにも関わらずコルディーの魔法技術はお粗末なものです。極めればたくさんの奇跡が起こせるのにそれを放棄している。言葉を変えれば儲ける手段があるのに使おうとはしない。まるで手間をかけることが選ばれた者の特権とばかりに、ね」
それが悪いと言わないわ。手間隙を惜しまないことがよいものを生むこともあるからね。
ただ、それと同じくらい効率も考えないとダメなのよ。あれもこれも手間をかけていたら物事は動かない。動かないならまだしも停滞させ、後退なんてさせたら本末転倒。人類はどこに向かってんだよ、って話だ。
「メイドにあれこれやってもらうのもいいでしょう。仕事が増えればメイドを増やす。雇用が生まれますからね。しかし、何事にも限界はあります。限度があります。適切があるのです。必要だからと、この食堂にメイドを百人も於けるわけではありませんよね?」
「ま、まあ、そうだな。邪魔というか異様でしかない」
「そうです。適切を考えたら人数は決まってくる。他の仕事にメイドを振り分けすることができます。当たり前のことを当たり前と考えられない状態に陥ってあるのです。コルディーという国は」
王国批判ではありません。警告を発しているだけでやんす。
「人は火を得ることで灯りを得た。肉を焼くことを覚えた。火を使い鉄を打ち、土を焼き、生活を変化させて来た。では、魔法を得た人はなにを変化させて来ましたか? なにを得て来ましたか?」
「…………」
「強いて言うのであれば、魔力を持つ者が優れている王国を創ったことくらいですね」
「か、過激ではないか?」
「そうですか? ご先祖様が必死に勝ち取ったものをわたしは享受してますよ。ルゼット様も。貴族と名のつく者はすべて。で、今を生きるわたしたちは、なにを勝ち取りましたか? 子孫になにを残せてあげますか? 子孫に誇るようなことをなにかしましたか?」
わたしたちはただ、ご先祖様が残してくれたものを食い潰しているだけだ。




