728 ディスられてる? 上
「は、初めまして。ロッカルと申します」
緊張しながらロッカルがルゼット様に挨拶をする。
ロッカルにしたら急転直下な状況でしょう。それを起こしているヤツが言うなってお叱りは甘んじて遠くに放り投げてやるわ。望むと望まないに関わらず貴族になるとこんなことがよく起こるものなのよ。乗り越えろ。それだけだ。
「ルゼット・マルビルだ。君は、本当に孤児だったのか?」
「は、はい。つい最近まで孤児だったはずです……」
「アハハ。確かに今の状況は理解できんよな。わたしも今の状況を理解するのに時間を要したものだ。とんでもない相手に見つかってしまったのだから無理もない」
なに? わたし、ディスられている?
「なるほど。チェレミー嬢が気に入るのもよくわかった。歳に見合わず賢そうだ。孤児だったとは思えない度胸だ」
さすがルゼット様。ロッカルのよさをよくわかっていらっしゃる。度胸がいいのよ、ロッカルって。
この世界で貴族に特攻できる孤児なんていない。なにも考えないバカはできるかもしれないけど、それなりの地位にいるなら護衛はいる。ルゼット様だって護衛を連れて来て、扉のところで置物になっているわ。
その威圧だけで孤児なら失禁してしまうのに、ロッカルは緊張しながらもまっすぐ立っている。今、自分が見定められていると理解しているからだ。
わかる者が見ればロッカルの異常性がわかる。この子は天才だ。度胸もある。野望もある。実にいい人材だわ。
「だがまあ、その才能を見せるべき相手を間違えたな。メイベルくらいに目的を定めれば順調よく出世できただろうに。よりにもよってチェレミー嬢に目的を定めるのは哀れとしか言いようがない」
わたし、ディスられている?
「いいか。世の中には正真正銘、バケモノがいることを忘れるな。挑むなら相手をよく調べろ。そうでないと食われるぞ」
うん。やっぱりわたしをディスってますよね。
「と、まあ、今さらか。チェレミー嬢にはそれすら想定内のことだろうからな」
「高く買っていただいて申し訳ありませんけど、わたしもそこまで見えているわけではありません」
「先見の魔女がなにをいう。チェレミー嬢が選んだという時点でロッカルの価値は最上級まで上がったも同じだ。並大抵の者のところには養子に出せん。チェレミー嬢はいくつかある選択肢を見て、わたしに接触したのだろう? つまり、数年前からわたしは狙われていたということだ」
ほんと、賢い方だわ。よくお父様と親友をやっているわよね。不思議で堪らないわ。
「ロッカル。よく心しておけ。この世にバケモノはいるということをな」
ルゼット様の鋭い視線をわたしはにこやかと受け止めた。




