727 形 下
「……チェレミー嬢の言いたいことはわかるようで理解し難いものがあるな……」
「それはわたしとルゼット様では貴族という在り方の理解度が違うからです」
「……在り方の理解度……?」
怪訝な顔を見せた。案外、顔に出るタイプよね、ルゼット様って。
「ルゼット様が考える貴族とはどんなものですか?」
「そう、はっきり問われると返答に困るな。わたしは家を守ることを命題としてきたからな」
命題か。哲学的な考えをしているのね。
「あるていどの家とすればそれが当然の考え方でしょう。ですけど、わたしは家を継いでいるわけでもなければ家を継ぐお兄様と領地を守る従弟がおります。ルゼット様とは立場が違います。立場が違えば考え方も変わるということです」
ルゼット様は当主だ。それもかなり有力な伯爵家。可もなく不可もない伯爵家とは抱えるもの、背負うものが段違いだ。その心労はいくばくなものか。当事者でなければわからないこともあるでしょうよ。
「ルゼット様は貴族らしい貴族です。尊敬に値すべき貴族でしょう。ですけど、貴族だからこそ貴族以外の考えができないし、行動できないのです」
だからこそルゼット様はわたしのお願いを拒否することはできないのよ。拒否すればこれまでの在り方を否定することになるからね。
「わたしの行動が理解できずともわたしの願いを叶える利は理解できる。わたしとルゼット様の差がそこにあります」
わたしの行動原理がおっぱいだと見抜ける人はまずいないでしょう。いたら理解し合える友となるでしょうよ。
「……そうだな。いくら考えてもチェレミー嬢がなにを考えてあるか理解できない。貴族らしい行動をしたかと思うと、貴族らしからぬ行動をする。得にもならんことをやったと思ったらなぜか特大の成果を叩き出す。まったくもって意味がわからんよ」
「でしょうね。わたしの考えは商人に近いでしょうから。貴族には理解するのは難しいでしょう」
貴族も金儲けの大切さは知っている。けど、それは税として儲けるってことだ。損して得取れって概念すらないでしょうよ。
「考えが違うのなら統治の仕方も違ってくる。得るものも違ってくる。でも、目指すところはルゼット様と同じところにあるんですよ」
家を守る。豊かにする。よりよい地位を築く。貴族とはそういう生き物。ただ、アプローチの仕方が違うってだけだ。
「ルゼット様はルゼット様のやり方でマルビオ家のために動けばよろしいのです。わたしはわたしのやり方でカルディム家のために動くので。一緒に利を得ましょう」
ルゼット様ににっこり笑ってみせた。




