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7 こんな日もくるだろと

「いや、美味かった美味かった。つい食べすぎてしまったよ」


「それはなにより。ガイルも喜ぶでしょう」


 わたしはその巨乳の一部となることが嬉しいわ。ちょっと揉ませてくれないかしら?


「毎日食べれたらいいんだがな」


「旅先で美味しいものは食べられないの?」


 そう言えば、食べ物のことは聞いたことなかったわね。食べ歩きとかしてみたいわ。


「まったくないとは言わないが、ここほど美味いものを食ったことはないよ。ここのは三段階上をいっているよ」


 なんだかそれは聞きたくなかったわね。食べ歩きの夢が崩れちゃったじゃない。


「夢も希望もないわね」


 マゴットの胸にはわたしの夢と希望が詰まってそうだけどね。開けてみたいパンドラの巨乳。なんつって。


「チェレミー様みたいな美食家にはそうだろうな。わたしにはここには夢と希望が詰まっているけど」


「上手くいかないものね」


 伯爵令嬢に生まれて勝ち組人生じゃー! と思っていた頃の自分を殴ってやりたいわ。さっさと家を飛び出しなさいってね。


「ラティア。コーヒーを」


「コーヒーもいいよな。最初は苦かったが、慣れたらクセになる」


 残念ながらコーヒー豆は高額で、カルディムにはなかなか流れてこない。これはタンポポ(みたいなもの)から創ったものなのよね。風味がいまいちだわ。


「こんなモドキでよければ好きなだけ持ってっていいわよ。好きに使いなさい」


 コーヒーが飲みたくてたくさん創ったけど、毎日飲みたい味ではないのよね。食後に飲むくらいだわ。


「それはありがたいが、なんだかもらってばかりだな」


「いいのよ。あなたの商売の一つを奪っちゃいそうだからね。そのお詫びだと思って」


指輪ライターかい?」


「ええ。わたしの失態ね。まさか指輪ライターがあんなに人気になるとは予想できなかったわ」


 お父様の手紙では指輪ライターは紳士のお洒落になったみたい。格好よく火をつけるのが流行っているそうよ。


「それは仕方がないさ。男の趣味嗜好を理解できる女なんて希だよ」


 元男でも理解できませんでした。ごめんなさい。

 

「まだ正式には言われてはないけど、指輪ライターの販売権はカルディム家、お父様が管理することになるでしょう」


「まあ、仕方がないさ。売れるとわかれば早々に娘から取り上げて管理しないと他に奪われてしまうからな」


 理解が早くて助かるわ。


「わたしとしては密かに儲けたかったんだけどね。もっと売れないものを選べばよかったわ」


「チェレミー様が売るものは大体はバカ売れしそうだと思うがな」


 それもそうね。便利なものを売るんだから。


「だから作戦を変えたわ。マゴット。バナリアッテは知っている?」


「ああ。貿易港だろう?」


「そうよ。そこで米と言う穀物を仕入れてきて欲しいの」


「コメ?」


「ええ。コーデリアン帝国で栽培しているもので、バナリアッテで食べられているそうなの。わたし、その米でお酒を創ろうと思っているの」


 米を食べたいってのもあるけど、前世のわたしは日本酒好きだった。純米吟醸酒を飲みたいのよ。


 作り方なんて知らないけど、わたしにはチートな付与魔法があり、材料を使えば魔力は節約される。試行錯誤をすれば自分が楽しむくらいはすぐ創れるわ。


「まあ、チェレミー様が言うんなら美味い酒なんだろうが、儲けられるのかい?」


「それはマゴット次第ね。続きはわたしの部屋で話しましょう。今日の予定は?」


「すべて片付けてきたよ」


 なにかあると察していたようね。まあ、大事な話があると手紙に書いたんだけどね。


 コーヒーを飲んだら部屋に移り、メイドたちは下がらせた。ここからは秘密だからね。


「話を進める前に、その子を紹介してくれる?」


 机につき、マゴットの背後に控えている少女に目を向けた。


「新しく弟子にしたロッコだ」


「名前の響きから身内かしら?」


「ああ。兄の娘だ。チェレミー様の前に出すとなると男を雇うわけにはいかんしな。商売に興味があったロッコを弟子にしたのさ」


 別に商売をするなら男も女もないのだけれど、どうせ視界に入れるなら女の子のほうがいいわね。まだ発展途上だけど、いいおっぱいをお持ちだ。育っていくのを愛でるのも一興だわ。


「ロッコ。これからよろしくね」


「は、はい! よろしくお願い致します!」


 緊張した面持ちで一礼するロッコ。重力で下がるおっぱいもいいものね。マゴットもやってくれないかしら?


「まあ、座って。なにか飲む?」


「いや、さすがに今はなにも入らないよ」 


 そう言うので、机の引き出しから肩かけ鞄を出した。


「これをあなたにあげるわ」


「……なにか仕掛けがあるのかい……?」


 ふふ。すっかりわたしの行動を見透かされちゃってるわね。


「これには馬車三台分の荷物を入れられる容量があるわ。ただ、鞄の口に入るものに限られてしまうけど、入れたものは時間が停止する。熱いお茶も入れたら出すまでは熱いままってこと。あと、認識阻害も付与したから見ている者には鞄に品を入れているようにしか見えないわ」


 ファンタジーによくある魔法の鞄を創ってみました。一年かけてね。まったく、固定化させるの大変だったんだから。


「……またとんでもないものを。流通革命でもしようってのかい……?」


「革命できるほど簡単に創れないわ。こんな日もくるだろと、前々から創っていたのよ。これをどう使うかはマゴットに任せるわ。賢く使って賢く儲けてちょうだい」


 これをもって指輪ライターの損失を補填させてもらうわ。


「これ、護衛を雇わないとダメなヤツだな」


「そこはマゴットの判断に任せるわ。信用のおける護衛を雇いなさいね」


 あなたにはまだまだ働いてもらわないといけないんだから。

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