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令嬢ではあるけれど、悪役でもなくヒロインでもない、モブなTSお嬢様のスローライフストーリー(建前)  作者: タカハシあん


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68 あらよっと

 ポカンダ村。それがこの村の名前だ。


 どこにでもある中規模ていどの村であり、二百人から三百人が住んでいる。


 狼や熊、野生動物はよく出るけど、村や町を襲うようなバケモノはいないので、柵や壁で囲うことはない。猪対策で堀が作られているくらいかしらね。


 そんな村だから村長もそこまで裕福でなく、村で一番の大きな家、ってくらいなもの。大きな街からきたら古い家としか思わないでしょうよ。


 わたしもここが村長の家としては古いわね~とか思っちゃったしね。


「古びたところで申し訳ありません」


 あ、村長も古びたとは思ってたのね。


「構わないわ。趣があっていいと思うわよ」


 王都生まれ王都暮らしで、前世は政令指定都市に住んでいて、海外旅行なんてしたこともない。ヨーロッパの田舎に旅行にきたみたいでおもしろいわ。


「何年くらい前から建っているの?」


「曾じい様の頃に建って替えたとは聞いております」


 村長が六十歳くらいだから軽く百年は過ぎている感じか。この古びた感じから日本家屋のように三百年とかは持ちそうはないみたいね。


「じゃあ、そろそろ建て替える時期かしら?」


「はい。来年にはやろうかと思っております」


 やはり今の技術では百年も保てないのね。


「そうなのね。この村にはなにかと世話になっているし、これで村の人を使ってあげて」


 金貨を五枚、村長に渡した。


「こ、こんなにはいただけません!」


「村への還元よ。家を解体するのに村の人たちを使うのでしょう? そのときの酒代や食事代に使ったりしてちょうだい」


 この村はわたしの地盤だ。ラティアやナディアもこの村の出身であり、ラティアは村長の親族なのだから優遇しておくに越したことはない。他からの圧があるとしたらまずこの村から行われるのだからね。


「遠慮にしないで。いつもお世話になっている礼なんだから」


「は、はい。では、ありがたくいただきます」


 断るのも失礼と思ったようで、金貨を受け取ってくれた。


「お嬢様。お茶をどうぞ」


 村長の息子のお嫁さんがお茶を出してくれた。


「ありがとう。確か、ナディアの姉、だったかしら?」


 顔立ちがよく似ていること。五人姉妹って凄いわよね。 


「はい。一番上の姉です。ナディアはちゃんとやっていますでしょうか?」


「今では館に欠かせない存在よ。ただ、嫁ぐのが遅れそうで申し訳ないけどね」


 ナディアはうちのお菓子担当。元々才能があったのか、今では数種類のお菓子を作れるようになった。今ナディアに抜けられたら館で暴動が起こるでしょうよ。


「あの子は昔っから色恋に興味のない子でしたから気にしないでください」


 あら、そうなの? まあ、ちょっと拘りの強い子だったし、興味があること以外はどうでもいいタイプなのかもしれないわね。


「村長。この雪で困っていることはある?」


 滅多に降らない雪だし、数十年振りの大雪だ。冬の仕事はできてないでしょうよ。


「古い物置が潰れたていどで、穏やかな冬でございます。お嬢様のお陰で小遣い稼ぎができた者も多く、冬越えの支度も過分にできました。いつもは一人二人は寒さで死んでるんですが、今年はまだ誰も死んでおりません」


 今の段階で一人二人は死ぬんだ。まったく、厳しい時代よね。貴族に生まれてよかったわ~。


 お茶を飲みながら村の様子を聞き、十時くらいにお暇させてもらった。


「すっかり天気がよくなっちゃったわね」


 今日中に解けそうな日差しだわ。


「帰ったらリンクを作りましょうか」


 寒い中は嫌だな~とか思ってまだスケートリンク作りを開始してないのよね。


「リンクって?」


 あ、マーグ兄様には言ってなかったわね。


「氷を張って滑って遊ぶ場所のことですよ」


 帰りながらスケートのことを話すけど、上手く想像ができないようで首を傾げていたわ。


 まあ、わからないのならできてからのお楽しみ。


 館に帰って昼を挟んでスケートリンク予定地にゴー。グリムワールであらよっと。縦三十メートル。横二十メートル。深さ三十センチのスケートリンクの枠を作った。


 そこに川から水を移して水を張ったら凍らせる。一日放置すればさらに固まるでしょう。


 次の日、ウォーキングついでに様子見。いい感じに固まってくれていたわ。


「でも、凹凸が激しいわね」


 なんだっけ? リンクを平らにする乗り物って? まあ、そんなもの用意できないんだから魔法であらよっと。


 いい感じに平らにはなったけど、不純物が混ざっているわね。スケートリンク、難しいわ~。


「ここで滑るのか?」


「ええ。朝食をいただいたら遊びましょう」


 スケート靴は錬金箱(新しく創りました。魔力があり余っているのでね)で創ってある。


 朝食が終わって外に出ると、ちょっと風が出ていたけど、問題ナッシング。グリムワールで風を纏えばオールオッケーよ。


「まずわたしが手本を見せますね」


 これでも前世ではスケートボーイと知られた身──ではないけど、滑れるていどの技術は持っている。時と世界を超えて刮目せよ。我が滑りを!


 スケート靴を履き、スケートリンクに滑り出した。


 あ、すってんころりってオチはないのであしからず。

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